子供の時に結婚の約束をしたクールな幼馴染の心を覗いてみたらヤンデレである事が判明した

カラスバ

第1話

 ヘンテコな生物が目の前にいた。


「いやまて、ヘンテコな生物とは何て言い草じゃあ」


 人の心を読むな、ヘンセイ。


「平成みたいに呼ぶのはやめるのじゃ、無礼者め」


 そんな事言われても。


「ていうかなんでこんな状況に陥ってるんだよ、小鳥遊潤」


 そもそもの発端は、そう日曜日。

 やる事は山積みだったがどうもやる気が起きなかった時に有りがちな、唐突に謎の行動をしたくなるという衝動。

 それに身を任せていつもは足を運ぶ事のない道を歩いてみた結果、なんか謎の神社へと足を踏み入れる事になってしまった。

 その時点で「あ、なんかマズイ」と察していたのですぐ踵を返して帰ろうと思っていたのだが、多分俺がこの場所にやってきてしまった時点でもう遅かったのだろう。


「ようこそ、なのじゃ!」


 なんか金髪金眼のロリケモ耳が現れた。

 いかにも「この神社で祀ってたけど力を失った結果ロリ化しました」とでも言いたげなロリっ子だった。

 ……そのロリっ子は自らの事を「恋愛の神様」と言い、そして。


「どうじゃあ? 幼馴染の心を覗いてみたいとは思ったりせんかの?」

「いや、ないが」


 即答だった。


「何故じゃ!?」

「いや、だってどんな人間だって内心の自由は認められるべきだろうし……」

「な、なんて真っ当な。貴様それでも年頃の男か?」

「失礼だな、最近の男子はエロ猿ばかりじゃねえんだよ」

「エロい事やって暴力震わせる系男子はいなくなったのか?」

「何時の時代にもそんなセクハラ野郎は粛清されるべきだろ」


 こほん、と奴は咳払いする。


「もとい、おぬしだって何考えているのか分からない無表情系クール幼馴染の事をもっと知りたいとは思うじゃろう?」

「……いやまあ、それはそうだけどさ」


 氷室鈴奈。

 幼馴染でなんだかんだ長い時間を同じ空間で過ごしてきた訳だったが。

 こういう言い方をすると年寄りっぽいかもしれないが、昔は良かった。

 良かったって言うか、分かりやすかった。

 楽しければ笑い、悲しければ泣くような女の子が氷室鈴奈だったのだ。


「将来、潤君のお嫁さんになってあげるねっ」


 そんな嬉しい事も言ってくれたし、俺もそれがいずれやって来ると結構本気で信じていた。

 しかし今の彼女は、目の前の奴の言葉を借りるのならば「無表情」で「クール」だった。

 だから、ぶっちゃけ何を考えているのか分からない。

 

「まあ、ちょろっと見てみて嫌ならすぐ返せば良いぞ?」

「……それで、お前に何のメリットがあるんだ?」

「恋愛の神様なんじゃ、おぬしの恋が実るだけでわしは嬉しい」

「いや、別にあいつの事なんか好きじゃないが?」

「それも含めて、じゃよ」

「……」

「あと、暇があればマグドのビッグマッグ買ってきてくれると嬉しい」

「そこはおいなりさんじゃないんかい」


 そして何気にマグド派だった。


「――で、今に至る訳だが」

「……何言っているのですか?」


 で、だ。

 

 目の前にいるのは、その幼馴染の氷室鈴奈。

 たまたま……もしかするとあの恋愛の神様が何かをしたのかもしれないけど、相変わらず無表情で家から出て来た彼女と遭遇した俺は、早速「幼馴染限定読心術」を使ってみる事にした。

 

「いや、何をそんなに目を細めているの? 視力が落ちたのならば眼鏡を買いに行くべきだと思うのですけど」

「ん、うん。ちょっと待ってて」

「待つ?」


 きょとんとする鈴奈。

 そして、時間差で心の声が聞こえてくる。
















【潤君、目を細める姿も素敵っ。格好良い、イケメンだぁ♡】


 ん?


【あはっ。私の幼馴染はなんでこんなに素敵なんだろ……いろいろな女の子にモテちゃいそうで……そんなのユルセナイ】


 おっと?


【潤君は私が守らなきゃ、私が潤君のお嫁さん。潤君のお嫁さんなんだから潤君のすべてを守るべきなの】


 なんかきな臭くなってきたな。

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