第3話 入学式の惨劇

 入学式当日。


 私は、これから始まる新しい生活に胸を馳せ、期待半分、不安半分の気持ちであった。

 もう私も高校生か〜

 上手くやってけるのかなあ。


 学校の門を潜ると、桜が美しく咲き乱れ、花びらがヒラヒラと舞い降りていた。

 私は、しばし見とれてしまった。

 なんだか、入学式の時の桜はどこか特別な感じがする。


 体育館の近くまで歩いていくと、目つきの悪いボサボサの髪の男子生徒が目に入った。

「ぶっ殺wkemwkfmjjj...」

 彼は、ブツくさと何かを怒ったように呟いているようだった。


 何か、気に入らないことでもあったのかなあ?


 私は、少し怖くなり、足早に彼の横を通り過ぎた。そして他の生徒に混ざって、体育館の中に入っていった。


 体育館に入ると、もうすでに何人かの生徒は着席しているようであった。


 私は、邪魔にならないように入り口から少しズレたところで、手元の紙を見て自分の席を確認すると、生徒の間を縫いながら自分の席に向かっていった。


 私は自分の席の近くまでくると、すぐ目の前の席に、とある人物が座っているのが見えた。

 えっ?

 その人物を見た私は、驚きで一瞬その場で、固まる。


 なんとそれは、昨日出会った、金髪少女だったのだ。


 まさか、こんなにも早く再開するなんて思わなかったよ、、、


 てか、同い年だったんだ。

 てっきり、中学生か小学校高学年くらいだと思ったよ。


 私は目の前の少女へ、話しかけようとする。

 しかし、彼女はいびきをかいて眠っているようであった。

 寝不足なのかなあ?


 私は、自分の席に座ると、目の前の少女の髪に触ってみたいという衝動に駆られたが、グッと堪えて我慢した。


 それから、体育館の席が生徒で埋まり、10分くらいが経つと、壇上に校長先生が立った。

 80代後半くらいの、頭のてっぺんの毛がかなり薄くなっている先生である。


「エー、これより夢幻学園入学式を執り行う」

 彼は、今にも死にそうなか細い声で入学式の始まりを告げた。


 あの人?大丈夫なの?

 私は、少しその先生のことが心配になった。


 そして、校長先生が壇上から降りると、体育館に司会の声が響く。


「まずは、新一年生代表の挨拶。

 夢幻鳴子様、お願いいたします」


 司会がそう告げると、美しい黒色の髪に、長めのもみあげを左右バンドで束ねた少女が席をたち、壇上に上がっていった。


 私は、少女を見た瞬間、その美しさに少しの間、見惚れてしまった。


 ただ一つ気になったのは、ほうを怪我したのか、少し大きめのガーゼを当てていたことだ。


 どこかで、打ったのかなあ?


 すると、壇上に上がった黒髪の少女は一瞬だけ、寝ている金髪少女の方を怪訝そうな顔で見つめたような気がした。


 気のせいだろうか?


「麗かな春の訪れと共に、私たちは高校1年生として入学式を迎えることが出来ました。


 門のところに咲き誇っている桜の花がまるで私達を歓迎しているかのようでした。


 そして、学業や運動に全力で取り組み、充実した学校生活が送れるように、日々精進していきたく思います」


 新入生代表の言葉を終えると、黒髪の少女は自分の席へと戻っていった。


 そして、次から次へと偉い人が壇上に上がり、祝辞を述べていく。


 偉い人たちの祝辞が終わると、次は校長先生の話が始まった。

 校長先生の声は、まるで子守唄のようで、私の瞼はだんだんと下がっていき、今にも落ちそうである。

 目の前の金髪少女を含め、数人の生徒は眠りこけているようであった。


 私も寝ちゃいたいなあ、、、


 校長先生の話が中盤に差し掛かった時のことだ。

「で、あるからして、君たちは、夢幻学園高校の生徒として誇りを持っ、、、、」


 そこで、かなり予想外の出来事が起こった。


「ぶっ殺してやるーー!!」

 いきなり私の耳に怒声が飛び込んできたのだ。

 えっ?

 こんな時に、いったい何事!?


 半ば私の意識は強制的に覚醒させられ、怒声がした方へ首を回して目を向けた。


 すると、一人の男子生徒が立ち上がっているのが見えた。なんと、彼の手にはかなり大きめの包丁が握られいた。


 次の瞬間、なんと彼はそれを目の前の女子生徒に向かって振り下ろしたのだ。


 そして、舞い散る鮮血と静寂に包まれる体育館。


「キャァーーー!!」


 数秒後、一人の女子生徒が悲鳴を上げた。


「人殺しだぁーー!!」


「助けてーー!!」

  体育館中の生徒たちはパニックになり、一斉に扉を目指して駆け出した。


 そこから体育館は、阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。


 すると、男子生徒は近くにいた生徒2人を包丁で刺し殺したのだ。


 血を流しながら倒れ伏す、2人の生徒。


「何やってんだテメーーー!?」

 そう叫びながら、男子生徒を取り押さえようと、大柄な先生が特攻を仕掛けた。


 だが、それは無意味だった。

「うざってーんだよーーッ!!」


「グゥッ......!?」

 男子生徒は向かってくる先生の心臓に向かって、そのまま包丁を突き刺したのだ。

 そして、先生はこと切れて動かなくなった。


 私も、体育館の入り口まで逃げようとしたが、足が震えて体がうまく動かない。


 えっ、どうしよう?早く逃げないと、、、


 更に、男子生徒は逃げ惑う、女子生徒のうちの一人を刺し殺す。

「いやぁーーーーッ」

 悲鳴を上げながら、その場に崩れ落ちる女子生徒。


 私は、体育館から逃げるため一歩踏み出そうとしたその時だった。なんと私は、包丁を持った男子生徒と目が合ってしまったのだ。


 すると、男子生徒は包丁から血を滴らせながら私の方に向かって歩いて来た。

 私は、あまりの恐怖に支配され、すぐ近くの椅子とぶつかりながら、その場にへたり込んだ。


 男子生徒は椅子を押しのけながら、だんだんと私に近づいてくる。

 そして、ついに彼は私の目前まで来てしまう。


 男子生徒は、虚な目で私を見下ろしながら、包丁を振り上げる。


 えっ、私の人生ここでおしまい?


 私は死を覚悟し、目を瞑った。

 これまでの人生が走馬灯のように、私の脳裏を駆け巡った。

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