第13話4月5日

 昨日あの後、ローナ先生に報告をし部屋に戻った。雪女なんて珍しい種族だね!何てことを言っていたが、俺も初めて聞いた種族だ。スイセンに詳しく聞いてみると、妖怪と呼ばれるものの一種らしい。


 その流れでスイセンの常識の擦り合わせをしようとしたのだが……。なんというか、スイセンには常識というものはないようだ。それも無理はない、生まれてから今までずっと吹雪が吹き荒ぶ雪山で一人で居たのだ。最低限の知識はもともと持っていたとのこと。


 聞いていいのか分からなかったが、親は居なかったのかとも聞いてみたのだが。答えは居ない、気付いたら一人で生きていたとのことだった。詳しく聞いてみるとどうやらある日突然、世界に存在していたらしい。カトレアによると妖怪の生態はそういうものなのかもしれないとの回答をもらった。

 種族によって本当に色々なことが変わるのだなと実感する出来事だった。


 そうして迎えた今日だが。特になにもない平和な1日になった。

 リコリスの作る料理は、俺の舌に合わせたものですっかり胃袋を掴まれてしまった。実は、濃い味の料理が苦手で素朴な味のする料理を好むのだがそれを伝える前にリコリスは合わせてきてしまった。なにせ初日の夕食。つまり、初めて一緒に食べた食事中には見抜いてみせたのだ。


 苦手なだけで食べられないわけではない。特に顔にも出していなかったのだが、なぜ分かったのだろう?

 そういうわけで聞いてみたところ、真名が教えてくれたとのこと。恐らくは仕えるものとして、見極められないといけないということなのだろう。


 そんな美味しい料理を食べながらふと、明日は6日で休日だと話題にしてみた。一時はデートをしようかという案も出たのだが、それもしたいところではあるが出会って1週間のお祝いをしたいという。


 そういうわけで明日は食堂にない食材を買うために、一人で外出する許可がほしいと申し出を受けた。女の子が一人では危ないのではないかとも言ったのだが、無機物を魅了できるのに怖がる相手は居ないと返されてしまった。それもそうだと納得したので、明日は送り出すことに決めた。


 リコリスが外出している間によければ二人にも、俺の過去を話しておいてほしいとお願いされてしまった。面白い話だとは思わなかったが、お願いされてしまった以上は受けようと思う。

 明日は、リコリスが帰ってくるのを楽しみに待っていよう。

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