第3話 サカナ
我は川で泳いでいたはずだが、ここはどこだ?このような場所は知らん、聞いたこともない。だが我の知識から推測するに、ヒトガタの住む街というやつであろう。しかし、このままではそう持たん、諦めるのも嫌であるが八方塞がりである。使えそうな手が無い、いや、我には元々手などという器官は無いが。思考しつつもどうしようもなく、意識は薄れた。
この部屋の中央に、水槽のような箱が置いてある。中には魚……いや、サカナ型のイキモノが居た。取り敢えず回収と保護はしたものの、知的生命体か判断が出来ていない。知的生命体であった場合は支援が必要なのだ、こういう種族も存在するだけに判断が難しい。取り敢えず、今回は死ぬ前に保護出来ただけましと思うしかない。
しかし毎回思うのだが、どういう理屈で転移してくるのだろうか。病原菌やら寄生虫やら考えると、そのうち外出禁止に……ならないか。家の中に転移してくることすらある、という事を考えるに無意味なことだろう。これだけ科学が発達していても、まだまだ分からない事だらけだ。過去にチキュウというところから来たイキモノからの情報に依ると、そこも科学は発達しているが、この世界よりかなり遅れているようだった。
イキモノに動きがあった、どうやら意識が戻ったようだ。窓から部屋を覗き込むと、目が合った気がした。嫌な予感がしてしゃがんだ直後、窓を貫通したらしい水が降ってきた。こういう事もあるんだよなぁ、それが知的生命体かどうかに関わらず、保護より安全が優先される。急いでその場を離れた。
む、我はどうしたのだ? ここは……捕らえられた? ふと気配を感じ、そちらに目を向けた。こやつかっ! 我は思わず水砲の術を使ったが、鉄粉混じりの水流は、虚しく窓を撃ち抜いただけであった。あやつの気配が遠退いていく。
私は水を抜く命令を口にした。あとは放置しておくだけで死ぬと思われるが、暫くは近付くのも止めておこう。窓の修理もしないとならない。しかしあのガラスを貫通するとかおかしいだろ、鉄より固いんだぞ、あれ。
水が抜かれ、暫くしてサカナのようなイキモノは、動かなくなった。
ー了ー
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