第三章『週刊誌は真実を夢に見るか』

第21話

 また、悪夢を見た。

 僕は、狭い部屋の中にいた。

 床は、トイレの便器みたいに白くて、壁は線香の灰みたいな色をしている。汚れは何一つとしてないのに、見ているだけで、なんだか吐き気がこみ上げた。

 目の前には銀色の台があった。その上に白い布が乗っている。何かを覆い隠しているようで、若干膨らんでいる。

 そこが霊安室であると気づくのに、時間はかからなかった。

 なんだこれ…。

 疑問に思った僕は、右脚を踏み出して、銀色の台に近づいた。

 周りの目を気にすることなく、白い布に触れる。

 一瞬迷ったが、これは夢だから…と割り切って、布をはぐった。

「……………」

 そこにあったのは、四肢と首を切断された、人間の胴体だった。

 もう随分と時間が経っているようで、皮膚は土のような色をしている。切断面の血は乾いて、肉はスポンジみたいになっていた。突き出た白っぽいものは骨だろうか? 胸と陰部には、女性の特徴が顕れていた。

 誰の、死体だ?

「…………」

 困惑した時、背後で、誰かの泣き声が聞こえた。

 はっとして振り返ると、そこには、セーラー服を身に纏った女の子が、顔を手で覆い、爆発するような泣き声をあげていた。

「あ…」

 反射的に、女の子に声をかけようとする。

 その女の子に見覚えがあって、僕は固まった。

 よく見ると、その子は静江さんだった。若き日の静江さんだった。

「…静江」

 そのタイミングで、目が覚めた。

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