異世界に転移させられた俺は、手始めに最速で『魔王』を目指す
成瀬くま
第一章 地界転移編
プロローグ 「世の中の誰もが納得するような、常識的な考え方をしていたのでは、新しいものなど作り出せはしない。-トーマス・エジソン-」
時は西暦2100年12月31日、21世紀の終わりと共に、世界が終焉を迎える『アポカリプス』が起こると占星術師である「インデックス・ウィリアム」により予言されていた。しかし、人々は信じなかった。『ノストラダムスの大予言』が実際に起こらなかった様に、この予言もきっと外れると、人類はそう考えていたからである。
人々が新年を迎えるカウントダウンをしている声が響き渡る。
「ハッピーニューイヤー!」
人類は2101年、21世紀の終わり。そして、22世紀の始まりを迎えた。
ハッピーニューイヤーという声が世界中に響いた。2083年に、日本は『どこでもドア』や『タイムマシン』を開発することに成功した。それによって、日本は世界最大の先進国となった。さらに、グローバル化が極限まで進行したことにより、世界の共通用語は日本語となった。その為、世界中の人々と安易にコミュニケーションを取れるようになった。
「やっぱり何も起こんねぇじゃねぇか!」
「あんな予言信じてたの?バカじゃん」
「ガセに決まってるじゃんあんなの」
そんな予言に対する話が世界中で聞こえて来る中。刹那、空から地上に無数の光が差し込んだ。人々が空を見上げると、謎の存在が現れていた。
「私が見ていたのは西暦1900年までだったが、科学の力だけでここまで文明が発展しているとは。地界では99%あり得ないことだが。それが上に、残念だ...」
謎の存在は人々に聞こえるか聞こえないかくらいの声でボソボソと喋っていた。
「お、お前は誰だ!」
世界中の人々が謎の存在に問いかける。
すると、
「私は『神』だ」
謎の存在はそう答えた。
「神だって?そんなのいるわけな———」
人々がそう、謎の存在『神』に言おうとしたその時、
「ノストラダムスの大予言は外れたのではない。時間がズレただけだ。手っ取り早く終わらせるために、君達地球人全員を殺させてもらう」
謎の存在『神』は言い、謎の力を使って人々を殺し始めた。
◇◆◇
『神』が既に世界中の人口の約2割を殺害していたとき、突如として一人の男性の声が響き渡った。
「おい、『神』とかいう奴!」
一人の男性は『神』に聞こえるように叫ぶ。
「あ、あれは...天才物理学者、成瀬栄慈だ!」
まだ生き残っていた人々が声の主を言い当てる。
「俺と勝負しろ。俺が勝ったら人を殺すのをやめろ」
「ほう、威勢のいい人間だ。いいだろうかかってこい」
『神』は栄慈からの勝負を受けた。そして、戦いは瞬時に始まる。
「無重力機構起動!相手を宙に浮かせ、動きを封じた所に大砲で反作用を反射する球を時速10万8000kmで放ち、あいつを人工太陽にぶつける!」
22世紀ともなれば、無重力機構、反作用を反射し、作用・反作用の法則により火力を2倍に増幅させることができる球や、光速と同じ速さで球を飛ばすことの出来る大砲、核融合を利用した人工太陽を作ることができていた。
完璧なプランだと思っていた。しかし、大きな誤算があった。『神』には———
「良い方法だと思うぞ。相手が私ではなく、地球外生命体とかならな。私に対してなら意味がない。何故なら私には実態が無く、物理攻撃だろうがなんだろうが体を透過するようになっているからな」
「な...」
プランが失敗した理由は、栄慈が『神』に実態があると仮定、否、実態の無い生物など存在しないと考えていなかったからである。
「考え自体は悪くは無かったが、これで終わりだ」
『神』がそう話した後、栄慈に直接光が差し込み、天才物理学者「成瀬栄慈」は死亡した。
◇◆◇
俺は死んだと思っていたが、この空間は何だ?真っ白で何も無い空間?物理的時間はどう流れているんだ?
そんな事を考えていた刹那、栄慈の目の前に光が現れ、謎の生物が出現する。
「やあ!びっくりした?」
甲高い声で謎の生物が栄慈に話しかける。
「誰だ?」
「僕は、ポセ。君が地界『アンダーヘブン』に行く手続きをするよ!」
栄慈の問いかけに謎の生物、ポセが答える。
「地界?そんなの存在するのか?」
「天国とか地獄ってあるでしょ?その天国と地獄は天界っていう場所の一部であって、その天界の下層部に行ってもらうよ」
「俺以外の人間はどうなっているんだ?」
「栄慈さん以外の人間も、悪人を除いてみんな行ってもらいますよ。因みに君達はさっき死んだんじゃなくて、ポセイドン様がこの異空間にワープさせてただけです。ポセイドン様っていうのは、さっきまで栄慈さんが戦っていた『神』の名前で、ポセイドン様は毎回手っ取り早く仕事を終わらせる為に『殺す』って言ってワープさせるんですよ」
どうやら、地界とやらに転移されるには俺だけではないらしい。
「きっとポセイドン様は照れ屋何だろうな」
「そうなんですかね?僕はポセイドン様の眷属何ですけどそういうことは分かりませんね」
いや、眷属になったからといって相手の性格がわかるわけないだろうと俺は思った。
「それでは、能力と地界での名前を決めてもらいます」
「能力?」
「はい!君達が生身の状態では地界ですぐに死んでしまうかもしれませんから何か一つ能力を与えるんです。但し、『最強』みたいな抽象的な能力は無理です。そして能力を応用して複数の技を使うのは出来ますが、能力自体を複数所持することはできません。ここまでの情報しっかり入ってますか?」
「大丈夫だ、一語一句覚えてる」
「それはそれで怖いですが流石、天才物理学者様ですね」
「あまり天才と言われるのは好きじゃない。天才でも努力はしているのに、全て才能だと思われるのが嫌だからな」
栄慈は天才と呼ばれるのがあまり好きじゃないと告げる。
「そこんとこは苦労してるんですね」
「ポセも苦労してそうだけどな。地球の人類ほぼ全員に話しかけてるんだろ?」
「いえ、僕は分身できるんで地球の人類の数に分身すれば仕事はすぐ終わるんでそこまでですよ」
「そうなのか。つまり、ポセの能力は『分身』か」
「そうです!そんな感じの能力を選んで下さい」
そんな感じの能力といっても何にしようかな?『重力操作』とかか?いや、もっと応用の効く能力がいいな。そうだ、あの能力にしよう。
悩んだ結果、栄慈が決めた能力は———
「俺の欲しい能力は『引力操作』だ!」
「成程!物理学者らしい能力ですね!それで、名前の方はどうしますか?」
「名前か。自分で自分の名前を考えるのってなんか恥ずかしいからな。好きな素粒子からとるとしよう。俺の新しい名前は———」
「ミューだ」
俺は悩んだ結果、ミューという名前にすることにした。μをマイクロにするかを少し迷ったが、名前を変えずにそのままとることにした。
◇◆◇
「能力と新しい名前が決まりましたね。それでは、アポカリプスサイドを出してみましょう」
「アポカリプスサイド?」
「アポカリプスサイドというのは、アポカリプスの被害者が属する種族みたいなものです。そもそも、アポカリプスというのは星の寿命が尽きて星が爆発するということです。そのアポカリプスから人類を守るために、ポセイドン様はこの異空間にアポカリプスの被害者をワープさせて、そこから地界に転移させてるんです」
「成程な。アポカリプスサイドってどんな感じのがあるんだ?」
「例えば、『農家サイド』『建築サイド』『科学サイド』『運動サイド』『勉強サイド』など、他にもたくさんあります。なんならまだ見つかっていないものもあります」
「すでに結構多いけどまだまだあるのか」
「はい!僕の『分身』は『運動サイド』になります」
俺の『引力操作』は恐らく『科学サイド』になるだろう。
「では、出してみますね。少し時間がかかりますので、縛りについて話しましょう」
「縛り?」
「能力に縛りを付けることによって、能力を強化することが出来ます。僕は分身の数に応じで力が弱くなるという縛りで、無限に分身することができます。その代わり、縛りを一度付けると、解除することは出来ません。縛りは今つけることしかできませんが、いくつでも付けれます」
「じゃあ俺も付けてみるか...」
殆どデメリットがないこと何かないかな。物理法則を無視した動きはしないという縛りはどうだろうか?そもそも地界に物理法則はあるのか?
「ポセ!地界に物理法則はあるのか?」
「物理法則はあるものとないものがあります。摩擦や空気抵抗はありますが、作用を加えても反作用が発生しなかったり、力学的エネルギーが運動エネルギーと位置エネルギーの合計にならないことがあります」
なら、物理法則を無視した動きをしないという縛りより、全ての物理法則を自分自身に適応するという縛りにした方が過ごしやすそうだ。
「なら、全ての物理法則を自分自身に適応するという縛りで、『引力操作』の強度を上げるっていうのは出来るか?」
「出来ますよ。頭良いですね!自分の体に縛りをかけることによって、能力自体には縛りをかけずに、むしろ強化して使えることができる。なんなら、物理法則に従った方が慣れているため過ごしやすいからデメリットなしの縛り!」
「そんなに褒めたって、何にも出ねえぞ」
栄慈、否、ミューは照れながら言う。
「あ!ミューさんのアポカリプスサイドが出ましたよ。ミューさんのアポカリプスサイドは——」
「『天才サイド』です」
「『天才サイド』だって?天才って言われるのが好きじゃないって言ったのに『天才サイド』っていうのは少し気持ちが複雑だな...」
「でも、自分の体に縛りをかけるなんてこと普通は思いつきませんよ!しかもデメリット無しで!」
「それはそうかもしれんが...」
「『天才サイド』として現在地界に住んでいるのは6名で、今手続きをしている人の中に何人いるのかは分かりませんが恐らくミューさんを入れて1、2人なので凄く希少なアポカリプスサイドですよ」
「俺以外にも何人かいるのか。それなら良かった」
自分以外にも『天才サイド』の人がいたことを聞き、少し安心した。
「それでは、もう手続きも終わりましたし、地界に出発しますか?」
「最後に、いくつか質問させてくれるか?」
「勿論です!」
「1つ目、もし地界で死んだらどうなるんだ?」
もしもの時のことを考えて、一応聞いておく。
「地界でどれだけ良いことをしたかで変わります。これ以上は話すことができません。すいません」
「謝らなくてもいいよ」
死んだ後の事は分からないか、天国に行くのか地獄に行くのか、はたまた生き返ることが出来るのか。
「2つ目、さっき地界で生身だったらすぐに死んでしまうかもって言ってたけどどういう事だ?」
「地界には、たくさん魔物がいます。その為、もし生身だったら魔物に食べられてしまうんです」
「食べられるって、ちょっと怖いな」
「まあ、能力があればそんなに苦戦するような相手じゃないので、大丈夫でしょうけど」
一応命がかかってるのに、ポセは楽観的に考えてるな。
「じゃあ、最後の質問。地界を支配する魔王的な存在はいるのか?」
「『魔王』は、各サイドで最も強い人のみが得られることのできる称号です。その為、暴れてはいますが、別に支配しているとかはありません。『魔王』になりたい場合は、現在の『魔王』に勝負を挑み、勝利することで入れ替わることができます。まあ、『魔王』は各サイドの最強の称号を持っている存在と思っていてくれればいいです」
じゃあ、俺がもし魔王になりたかったら『天才サイド』の中で一番強くならないといけないのか。難しいかもしれないな。
「色々教えてくれてありがとうな、ポセ」
「いえいえ、それが僕の役目ですから。それでは、地界に行きますか?」
「ああ!『引力操作』を使って最速で『魔王』になってやるよ!」
「いい心意気ですね!それでは...」
ポセが地界に行くためのゲートを作る。
このゲートはポセの能力ではなく、この異空間自体に備えられている効果っぽい。
「地界『アンダーヘブン』行きのゲートが完成しました」
「ありがとう。じゃあ、行ってくる。バイバイ、ポセ!」
俺は、ゲートに向かって進んで行った。
「幸運を祈っていますよ」
ポセは、短い腕を頑張って振って俺を見送った。
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