フラミンゴ

屋瀬頼三

第1話 生まれつき?


「それにしてもさー。美和子って、全然太らないよね。生まれつきなの?」 


 中学のとき、特に言われた言葉がこれ。


 友達の言葉に、わたしはどう答えたらよかったんだろう。今でもそう考えたりする。


 「痩せてる」ってのは普通にいいこと。「痩せたい」「太りたくない」って、ほとんどの子がそう思っていたから。


 でもわたしは、ちっとも良い気分じゃなかった。


 まわりの子たちの胸はどんどん大きくなって、丸みを帯びた身体になっていく。そんな中で、わたしだけガリガリで全然太れなかった。


 今でこそ、時に落ち込みつつも「わたしはわたし!」と言える。


 色々な仕事を経験したし、褒められたこともあった。同時に色々な陰口も浴びてきて、それでも自分がどう生きるかを決めることは出来た。


 でも、そこに至るまで、昭和、平成という時代で……今ほど自分の個性を尊重しようなんて、スローガンはなく、出る杭は打たれる時代。

わたしじゃなくてもいろんな人が、色んなことで苦労したと思う。


 その中で悩みがあっても、「そんなの別に気にしすぎよ」「羨ましい悩みだわ!」と、『共感されない』苦しみを味わった人もいるはずだ。


 わたしの悩みはズバリ痩せていること。痩せすぎなこと。太れないこと。そして、胸がない事。


 友だちからは「太らないならいいじゃん」「努力して頑張って痩せて、いいよねって言われるなら、怒っても良いと思うけど、努力しなくても痩せてるんでしょ?」みたいな言葉をもらう。まるで、太っている悩みと、痩せている悩みは全然違うみたいに扱われる。


 でもそれは間違い。そうじゃないんだ。悩みの内容や質は人それぞれだけど、悩んでいること自体を否定されたくはなかった。それは多かれ少なかれ誰にでもあることだと思う。


 「大したことないよ」なんて言わないで欲しい。


 「気にしなくていいよ」なんて言わないで欲しい。


 そう思ったことってないですか?


 わたしは、たくさんあります。だから、これからわたしのことを少しお話させてください。


 ――――このエッセイでは、物心ついた頃からの心の葛藤や苦しさを乗りこえてきた自分のことをあれこれ綴っています。

 『共感されにくい』悩みを持っていて、どうやってこれまで生きてきたか。今何を考えているか。「自分の生き方を見つけて、晴れ晴れと生きてます」なんて話じゃなくて、歳を取ってもまだ悩んでいるわたしがここにはいます。


 数々の実際のエピソードが、この本を読んでくださった誰かに届けばいいな、と思ってます。長めですが、どうぞお付き合いください。

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