第18話 俺、闘技場に行く

 向かった先は闘技場。特徴としては、石畳で作られた舞台にそれを囲むように設けられた観客席は何千人もの観客が観戦できるようになっている。


 大いに盛り上がっている闘技場だが、警備は思った以上にしっかりしていた。赤や青、銀の鎧を着た騎士たちが闘技場周辺を巡回している。

 参加者専用の入口に着くと、奥から一人の赤騎士が姿を現した。


「あなたがネオ殿でお間違いはないだろうか? 学園長殿の方から話は聞いている。さあ通りたまえ」


 言葉と一緒に渡されたのは、今日一日のみ使える闘技場を好きな時に出入りできるカードである。

 試合前にどこか食いに行ったり、物資を調達したりする予定もないからこんなカード貰ってもゴミにしかならない。

 

 そして先に進み、俺の名が書かれたプレートの部屋に入ると、種類豊富な武器にビンに入った緑色の液体――おそらくポーションだ。傷や痛みを治癒する薬の一種が置かれていた。

 これも俺には必要のない物だ。なぜなら傷は一晩すれば治るし、最悪姉ちゃんに頼めば治癒魔法で治してくれる。

 そんな人任せな俺だが、これでもわけのわからん異世界にきて自分なりに頑張ってるつもりだ。


 始まりの合図だろうか?

 大きな鐘の音がゴーンゴーンと響き渡る。

 控室の外ではバタバタしている。

 準備に追われているようだ。


「やばいやばいよ! めっちゃ緊張してきた」

「そうね……お姉ちゃんも少し緊張してきたかも」

「姉ちゃん今のうちに作戦を」

「そうね、ネオ君はずっと走って走って走りまくって。ルールが順守されるなら契約獣が戦闘不能に陥ったとしても、その主が倒れなければ試合は終わらない」

「それってある意味地獄なんじゃ……」

「本当の地獄って知ってる? 死んでも死んでも蘇って苦痛を味わうのよ。それに比べたらネオ君は走るだけなんだから楽でしょ?」

「うん、まあ……」


 妙に説得力がある姉ちゃんの言葉に俺はまた流された。悪魔ってやっぱり話を誘導するのが得意なのかもしれない。

 なぜだかいつも流されてしまうのだ。


「でも姉ちゃんが倒れたら……俺、戦う術がなくなるじゃ」

「いいえ、敗北は決してないから。最低、勝負が長引いて引き分けになるかもね」

「一体、どんな手を」

「ふふっそれは内緒!」


 もう色々と考えるのも面倒になってきた。

 俺は走るだけ、それに専念してあとは姉ちゃんに任せよう。

 変な企みもあるようだし。

 

 ゆっくりと出番になるまでくつろいでいると、床に設置された丸い球体から映像が映し出された。


「はーい! 皆様、世界の強者たちが血肉を争い雄叫びを上げる、そんな魔剣大会にお越し下さり誠にありがとうございま~す! この度、司会を務める元S級冒険者――シエルちゃんとはウチのことだあああ! みんなシエちゃんって呼んでくれて構わないぞ」


 突如として始まった魔剣大会のライブ中継。

 司会の女の子もなかなか個性が強いことで。

 でも元S級冒険者ってことは、戦いに関してはプロ中のプロなのでは?


「ああ、あの子妙に気になるって思ったら悪魔じゃない。人の姿に化けて何をしてるんだか」

「え? あの子悪魔なのか?」

「そうよ、それも【鑑定眼かんていがん】持ちのね」


 【鑑定眼かんていがん】とは標的にした相手の能力を赤裸々に確認できるといった特殊な魔眼の一種だ。膨大な魔力を使うために人では身に余る能力らしい。よっていつしか【鑑定眼かんていがん】を生まれ持つ人間は産まれなくなったとのこと。


 で、現在この力を使えるのは悪魔のみ。

 そう伝えられているが姉ちゃんが言うには、悪魔の中でも膨大な魔力に特殊な力に恵まれた一部の悪魔だけ、とのことだ。

 

「姉ちゃんは使えるの?」

「それも秘密! お婿さんになってくれたら教えてあ・げ・る」

「ああそういうの結構です」

「ほんとネオ君は素直じゃないんだから」


 そうこう話をしていると始まったシエルのアナウンス。

 闘技場は騒がしく熱気に溢れている。

 

「さあ、このたびの参加数……なんと214組! それに舞台を盛り上げるべくルーゼリフ陛下が自ら召喚なされた異世界からの来訪者――勇者ヤクモ・タケバヤシ様を招き、さらには幼少期から魔法の才に恵まれ、今や王国を支える四大貴族しだいきぞくの一柱――オブリージュ家長女、ユリアナ・オブリージュ嬢も参戦。そんな強者揃いの今大会、栄冠を手にするのは誰だ!? だれだあああ! ダレダああああああああ!!」


 こうして魔剣大会は幕を開けた。


――――――――

とうとう魔剣大会が幕を開けました。

次からバトルメインの話となりますので、お楽しみに!!!


モチベーションアップにもなりますので、

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