第8話 隕石

「よぉ~し! そろそろラストスパートだぁ!」


 ポラリスが帰って1時間、調子を取り戻したヴェラは、徐々に完成に近づけていた。

 それまで襲っていた眠気も吹っ飛び、満開の花畑のように目が冴えていた。


「ここをこうしてこうすれば……」


ヴェラは魔法陣を手早く描いていき……それを模型に適用させた。

 模型は軽快に動き出し……その姿は元気に走り回る子どものようだった。

 その姿を見たヴェラは……感激のあまり、その模型を抱きかかえた。


「うおおおおおおおおお!! できたあああああああああ!! やったああああああああああああああ!!」


 ヴェラは喜びのあまり、模型を赤子のように扱った。

 高く上げ、抱きしめ……高く飛び上がった。

 完成した……ようやく修正作業が終わり、商品が出来上がる、きっと報告を聞いたポラリスも同じように感激し、会長や副会長も喜んでくれる、それに……この機械で人々の生活がより良くなる……ヴェラはそんなこと考えた。

 ……そして、そんな彼女の努力を讃えるように祝砲が上げられた。

 突如として……爆発音と共に、地ならしが起きたのだ。


「うおおおおお!? な、なに!?」


 棚から資料が崩れ落ち、持っていた模型もその場に落としてしまった。

 ヴェラは模型を手に取り、撫でまわした。


「だ、大丈夫!? き、傷とかついてないよね? ごめんねー、よしよし……」


 ヴェラは模型を一通り撫でまわした後……急いで外に出た。

 ……その光景を見て、ヴェラは絶句した。


「なに……これ……」


 満天の星空……その星の一部が落ちて来たかのように、無数の流星が、けたたましい音を鳴らしながら、地表に落ちてきていた。

 辺りには赤い光が立ち述べ、歓声の代わりに、悲鳴が街を響き渡らせていた。

 まるでこの世の終わり……ヴェラはその様子をただ茫然と見つめていた。

 しかし、そんなヴェラの前に、突如として、流星の一部が落ちてきた。


「きゃあ!?」


 流星は砂煙を上げ……辺りをそれで埋め尽くした。

 ヴェラは前を見ることもできず、腕で視界を遮った。

 ……しばらくして、砂煙が治まり、その隕石の正体がはっきりと見えるようになった。


「あれ……なんだろう……なんか……機械のように見えるけど……」


 ヴェラはゆっくりと視界を戻していき、その隕石に近づいていった。

 こんな状況下であるが、ヴェラはそれでも、機械のように見える流星に興味をそそられてしまった。

 その隕石は……乗り物の運転席のように見えた。

 ほぼ球体の形に鋼鉄のボディ、その一部分……前面にはマジックミラーのようなガラスが貼られていた。


「これ……機械? 乗り物? すごい……こんなの……見たことない……」


 ヴェラは、辺りを見渡し、隕石に近づいて……手を触れた。

 すると……ガラスの部分が、垂れ幕のようにゆっくりと開いていった……。


「え!? な、なになに!?」


 ヴェラは急に動かした隕石に、思わず腰を抜かしてしまった。

 困惑するヴェラだったが、周りのただ事ではない惨劇、そしてその原因と思われる機会のような隕石……彼女の技術者としての好奇心が勝り、ゆっくりと立ち上がって、隕石の中を覗き込んだ。

 すると、その中にいたのは……。


「……え? 人?」

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