突然決められた生命の時間、貴方は何をする。

猫田 大和

分山 有莉(ぶやま ゆうり)と崩壊していく世界。

 その一 終わりからの始まり

 午後9時半頃、彼女はとあるアパートの小さな部屋で

パソコンをカタカタと操作している。

横にはエナジードリンクのゴミの集合体のようなものが……

そんな時、彼女はパソコンのキーボードから指を離して――。


 「やっと最後の話……かけたぁおわぁぁぁ!!」


 分山ぶやま 有莉ゆうりは腕を伸ばして、椅子にもたれる。

かと思えば、椅子の背もたれの方向から

「ドン。」と大きな音を立てて倒れる。


「イテテ……でもまあ、良かった。

あとは、投稿…はまた今度でいいや。疲れた。」


椅子が倒れたまま、ゆっくりと目を瞑る。

疲れが溜まっていたからか、すぐに寝ることが出来た気がした。

一人暮らししてから、誰にも邪魔されない。自由なのだ。

だから、こんな寝方しても全く怒られもしないのだ。


「有莉、起きなさい!」


 そんな夢の母親の言葉で目が覚める。

椅子が倒れていた状態で寝ていたからか、とても背中が痛い。


椅子と体を起き上がらせて、パソコンにある時計を見る。


「やっぱり7時……。」


もうわかっていた。いつも目覚まし時計かのように

母親が夢で起こしてくれる。そして、彼女が制服に着替える

前に必ずすることがある……それは――。


「やっぱり何も変わってない……。

なんで!?ちゃんと食べてるのに!!」


 そう。彼女は"アレ"のサイズが気になっているのだ。

理由は簡単。人並みより小さい。

もう高校生を卒業するというのに、全く変わることを

知らない彼女の上半身。


「……もういいや、さっさと学校行かないと。」


――学校にて。


「あ、『ぶーぶー』! おっはよ〜!」


 またこのあだ名。彼女はこのあだ名で呼ばれることを

好いていない。別に太っているわけでもないのに、

名字から勝手に連想してつけられたこのあだ名は、

まるで貶されているかのように感じる。


しかし、そんなことを言葉にすると友達じゃなくなって

しまう不安から、その気持ちは隠している。


「うん。おはよう……」


 彼女は席について窓を見た。

……"アレ"はなんだろう。空にある、緑色で、光っている。


「……ねえ。あれ、なn……!?」


みんなに伝えようとした、その時だった。

 みんなの頭の上に、数字が。

あっちは86、あっちは148……。なんなんだ、これは。

少し向こうには200超えもいる。

何なんだ、この数字は。何なんだ、あの緑色の光は。



 これが"生命の指標"になることを、

         まだ、彼女たちは知らない――。

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