第2話 オランダの没落

2.オランダの没落



 かつて、アジアの航路はオランダが支配していた時代があった。

 ポルトガル、スペインが没落するとオランダの時代が来た。

 まだ、イギリスは力不足だったこの時代はオランダがアジア航路を支配していた。


 台湾島を植民地にし、ヤーパンとの航路は独占だった。

 長崎の出島には、ヨーロッパではオランダしか入れない。

 イギリスは上から目線でものを言ったので、早々に排除された。

 彼らは、カルバリン砲を幕府に売ることに成功したので、高を括っていたのだろう。


 だが、このヤーパン航路は、オランダにとって重要な航路になる。何故なら、長崎で買った釜茶がヨーロッパで大ヒット商品となるからだ。


 ヤーパン航路を独占するメリットが大きかった。

 だが、やがてイギリスの時代が来る。


 アヘン戦争で勝利したイギリスは、安い清国の茶を大量に運び込んでいる。


 そして、その年の新茶を競わせて運ばせているのだ。しかも、賭けの対象にまでしているのだから言葉もない。


 そのイギリスも、一度、ピンチに陥っている。

 それは、アメリカが香港からロンドンまで、新茶を運んだ際に起こった。


 それまでは、大型船で遅いが大量に運ぶか、小型船で早いが少量を運ぶかを二者選択する必要があったのだ。


 ところがである!


 改良を重ねたクリッパー船が信じられない早さで1500トンの新茶をイギリスまで運んでみせたのだ。

 そのクリッパー船はオリエンタル号。


 それまで、18ヶ月から24ヶ月掛けて渡ったアジア航路を97日で航行したのだ。

 だから、イギリス人は叫んだ。

「あの船は、何故、あんなにも速いのだ」と。


 そして、自分たちも、あの帆船を真似て作ろうと。

 そして、出来たクリッパー船は、“ティー・クリッパー”と呼ばれるようになった。

 またの名を“快速帆船”とも……


***


 数年前のこと。


 アムステルダムを一隻の船が出港し、ロッテルダムを通過していた。


「あぁ、あの船は誰が買うんです? 支店長」

「ヤーパンだ」

「ヤパーニッシュはもの好きですね。汽船なんて6ノットしか出ませんよ。帆船の半分の早さの6ノットですよ」

「そうなんだが、「開国せよと!」アメリカに脅されたみたいでな。外輪式とスクリュー式を一隻ずつ買うみたいだ」

「そりゃ結構で」

「最後に出港するスクリュー式のコルベットは、咸臨丸とかいうらしいな」

「あんな遅いと、いつ、ヤーパンに着くのやら……」

「まあ、売れたから良いじゃないか」


 しかし、ヤーパンが開国すると、ヤーパン航路はオランダだけのものではなくなった。

 そして、益々、オランダはヨーロッパでの立場を悪くするのであった。



 さて、話しは戻り、船長達が開放され、ロッテルダムに戻ってきた。

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