第6話『魔王軍入軍試験②』

 正直に話すなら私はこの戦いを楽勝で終えられると思っていた。負けることなんて微塵も考えていなかった。


 800対1。12人づつしか出せなくても、私が仮に猫サイズでも負けることはない数学の問題。そう思っていた。


 結論から話そう。私が出した12人の分身は――


「くだらない。こんな程度なら、スカウトをする必要はなかったのではないか?」

 目の前にいる煙託さんが生み出した、


「なあ、噴火鰻」


 沸騰する溶岩を身に纏う、おぞましくも美しい巨大な龍によってすべて消し炭にされた。

「次は貴様の番だ」

「本当はゆっくりとその龍を見とれていたいところなんですが――拒否権を行使します。6人」

 自分の分身をとりあえず出し、分身と息を合わせアクロバッティックシャッフル。からの全力ダッシュで逃走。


 分身は全て焼き尽くされてしまったが、私は岩陰に隠れられたのでした。

 めでたし、めでたし

 とはいかない。起承転結のまだ承ほどまでしかきていない。


「いやーまさかあんなの出てくるとはまさに青天の霹靂。なんて、意味も知らないような言葉を使ってみちゃうほど恐怖しちゃうっスね――っスなんて使うキャラでもないのに語尾が変になるッス」

 チラッと岩陰から顔をのぞかせる。


 龍と煙託さんは私を探しているようだ。

 男性の影の上にとぐろをほどけば30mはある龍が悠然と漂っている。

「出てこい。この噴火鰻の六千度の炎で消してやる!」

 叫んだ瞬間、龍の体の火の勢いが強くなったのを、私は見逃さなかった。


 自分の手元を見る。あるのは一丁の金槌だけ。

「金槌じゃなくてもう少しいい武器持ってくればな・・・・・・特殊能力も何もない、硬いだけの金槌って」


 仮に特殊ギミックがあったところで、あの龍の前に何かができるとは思えない。対戦車砲も効くとは思えない見た目をしているし。

「いやー。火炎を纏った巨大な龍って。私の分身程度でどうすればいいっていうんでしょうね・・・・・・」

 800人で相手を囲んで数の差でタコ殴り。するだけでは戦力外という事か。厳しい話だ。


「冷静に考えれば自分の能力は単純に運用するだけなら普通に兵士を使ったほうがいいし、つまり大事なのは工夫って事だよね。工夫・・・・・・」

 目をつぶり脳内で思い出せる限りの情報を組み合わせる。

 ――分身、私――金槌―中二病、仮面――炎、飛ぶ龍―浮遊・・・・・・

 

 見えた。

 この戦略を軸に、脳内で様々なパターンを組み合わせる。

 そのほとんどのパターンで私はなんか無残な感じに死んだ。

 そのパターンの内、私が生き残れたパターンは3つ。確実に成功しそうな2つのパターンは煙託さんが死んだ。よって、私のするべき行動は1つだけ。

「覚悟は完了。天気は良好。格好をつけて――やってみよう」

 手を鳴らし唱える。

「12人」

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