第2話 プロローグ

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セルトス伝記



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 早朝の澄み切った空気の中、浜辺を走る女性がいた。彼女は美月麗羽(みつき れいは)艶のある長い黒髪をなびかせる彼女は才色兼備を兼ね備えた優等生だ。


 走る姿は凛々しく、メガネがズレる事はない。


 早朝のマラソンは彼女の日課であったが、今日はいつもと違う事が一つだけあった。


 美月麗羽が波打ち際に目をやると1つの漂流物に気が付いた。彼女は走るのを止め波打ち際に歩み寄る。


 漂流物はガラス製のボトルだった。


 よくもまぁ割れずに流れ着いたものだと、彼女がボトルを拾い上げると、中には包められた紙が入っており、紙にはどうやら文字らしきものが透けて見える。

 気が付いてしまえば気になってしまうのが人の性だろう。


 美月麗羽はボトルのコルクを外して中の手紙を取り出して広げた。


 しかし、彼女はそれをするべきではなかった。

 何気ないその行為が彼女を平和な日常から突き落とす。


 包められた手紙を開いて中を覗き込んだ、その瞬間。彼女の姿は忽然と姿を消した。


 美月麗羽が手に持っていた手紙は空中をひらひらと舞い、砂浜に落ちた。





 手紙にはこう書かれていた―――。




“神様お願いがあります。中世ファンタジーな世界観で、黒髪美人系の眼鏡のお姉さんが全身黒いボディスーツを着て冒険をしてほしいです。

 それから、お尻は大きく、必殺技はオナラにしてください。できますか?”



 ―――酷すぎである。彼女は何も悪くない。ただの被害者だ。

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