第7話 特訓
「強くならなきゃっていったけどさぁ……これはひどくないですかぁ、ヒルダ姉さん!!」
「大丈夫です。あなたならばゴブリンごとき敵ではないでしょう? 私の弟なのですから」
「いや、本当は姉弟じゃないですけどね!!」
「ゴブゴブぅぅぅ!!」
ビキニアーマーの女性……ヒルダ姉さんの弟子になって一日目、いきなりダンジョンに放り込まれた。しかも、魔物の巣に……
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
気づいたらダンジョンにいた!!
な…何を言っているのかわからねーと思うが おれも何を受けたのかわからなかった…」
今ならポルナレフの気持ちがわかるぜ。などと心の中で言っている場合ではない。あれは今朝の話だった……
☆☆☆
「なるほど、ある程度の基礎はできるみたいですね」
「はい、ありがとうございます」
朝早くに訓練場に呼び出されたので、なぜか特訓をみてくれると言ってくれたビキニアーマーの女性……ヒルダさんに素振りを見せる。
そして、頷いた後に、いきなりこちらに一撃をふるってきた。
「あぶなっ!! 何をするんですか、ヒルダさん!!」
「今のも防ぎますか……ふふ、面白いですね。やっぱりあなたの気持ちは常に戦場なのですね……それでこそ鍛え愛する甲斐があるというもの」
なぜか愛おしいものを見るような目で見つめてくるヒルダさんにちょっと恐怖を感じる。
てか、なんでこの人、攻撃してきてわらってんの? ドSかな?
「じゃあ、行きましょうか?」
「行くってどこにですか……?」
「基礎ができているならば決まっているでしょう? 実戦をつめるところですよ」
そうにやりと笑った彼女に連れられてきたのがダンジョンである。ちなみにダンジョンというのは魔物たちの巣であり、奥底には彼らの集めた宝物や、貴重な鉱石や薬草があることも多いため、冒険者たちや兵士が徒党を組んでいくところだ。命を失う可能性が高いため、貴族の子供が特訓だからといっていくような場所ではない。
現に入ってすぐのくぼみではゴブリンたちが宴会をやっているのかさわがしい。こんなところに一人で入ったらリンチされてしまうだろう。
「え、ヒルダさん……どうしてこんなところに?」
「あなたへの特別なトレーニングです。それとこれ以降は私のことはお姉ちゃんと呼ぶように!! わかりましたね」
「はい、わかりましたって、え、お姉ちゃん!?」
この人何言ってんだ? それともこの世界では師匠を姉と呼ぶのだろうか?
「はい、よく言えました。聞き分けが良い子は好きですよ」
姉という言葉に嬉しそうにうなづく。こわい、こわい、こわい。姉って呼ばせるものじゃなくない? 姉を名乗る不審者かな?
「では、さっそく……あなたの戦いを見てきづいたことがありました。それは、実戦でしか養えないことなのです。人を殺したことはないでしょう?」
「それは……まあ……」
その言葉で理解する。基礎ができているくせに彼女の部下でも一番弱い人に倒された俺をおもって特別な訓練方法を考えてくれたのだろう。
自分では自覚がなかったが、前世のこともあるからか、人を思いっきり傷つけるのには抵抗があったかもしれない。無意識にセーブしていたのだろう。
「では、頑張ってくださいね。命が危なくなったら助けてあげますからご安心を」
「へ? にぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!」
その一言とともに背中に衝撃をうけると俺はくぼみに落下していく。とっさに着地には成功したが、すさまじい音がする。
「ヒルダさん、何を考えているんですか?」
「……」
あれ、一切返事してくれないんだけど……まさか……
「ヒルダ姉さんなにをするの!!」
「うふふ、力が欲しければやはり実践ですからね。大丈夫、死にそうになったらお姉ちゃんがたすけてあげますよ。ほら、さっそく愚かな獲物がやってきましたよ」
「ごぶごぶ?」
「いやぁ……こんにちわ……」
なんだこいつ? って顔で警戒しまくっているゴブリンに愛想笑いをする俺。そして……
「ごぶぅぅぅ!!」
当然のように戦闘になるのだった。そして、冒頭に戻る。
ゴブリン……それは人型のガリガリの体系の魔物であり、そのサイズは中学生くらいである。オスとメス両方共いるがそれほど強くない…というのが俺のゲームやラノベで得た知識だがこの世界ではどうなのだろうか?
「うおおおお、死んでたまるかぁ!!」
斬りかかって来るゴブリンたちは単体ではあまり強くはない。それこそ、俺が戦った最弱の兵士であるケルベーよりもずっと弱い。
だけど、複数人いるとなると話は別である。
「ごぶごぶ!!」
「くっそ、数だけ多いな!!」
キュアーで回復しつつやばいときはアクセラレーションで体を加速させてゴブリンを切り刻む。なるほど……人型の魔物と戦わせ攻撃することの忌避間をなくし、アクセラレーションを使うタイミングも見極めさせようってことか……
さすがは師匠を名乗るだけはある。俺の弱点を一気になくす戦い方を学ばせてくれるんだ。良い師匠に出会ったと思わず笑みがでる。
「ごぶごぶーー!!」
「セイン、魔法が飛んできますよ!!」
周囲のゴブリンがぱっと引いたかと思うと、後方に待機していたちょっと小柄なゴブリンが詠唱をし、火の玉を放とうとしてくる。
「うおおおおお!!」
師匠のおかげでわかっていた俺はそのまま足にアクセラレーションをかけて加速する。そして、勝利の笑みを浮かべて魔法を放ってきた躊躇なくゴブリンを斬った。
「よくやりましたね。ですが、まだ本命が残っていますよ」
「……てか、つよ!!」
いつの間にか着地した師匠が残りのゴブリンを全員を一瞬で倒していた。そして、俺は彼女が指さす方向を見て驚愕の声をあげるのだった。
★★
「ふふふ、これは本当に逸材ですね……」
ヒルダはゴブリンを次から次へと倒していくセインを見て興奮を隠せない。そもそもだ。貴族の少年がいきなり魔物……しかも、集団戦で敵を切り刻む姿ははっきりいって異常の一言である。
なぜならば男性の戦いと言えば誰かを守ることを目的としている。ヒルダが助けると言った以上普通の男ならば、ゴブリンの攻撃を凌ぐことを中心に考えるのだが……彼は違った。ひたすら倒すことを考えているのだ。
「ふむ……本来の予定では、ピンチになったところを助けて、あなたには味方が……お姉ちゃんがはいますよとアピールする予定でしたが話が変わってきましたね」
魔法を使うゴブリン……の首をかっきってにやりと笑ったセインを見て、ヒルダは全身がたぎって来るのと同時に危うさを感じた。
「初めての実戦で、ゴブリンメイジを躊躇なく殺した上に勝利の笑みを浮かべるとは……あなたは本当に戦いがお好きなのですね……そして、女性には興味を持てないのでしょう?」
ゴブリンメイジ……ゴブリンのメスであり小柄で華奢な体におうとつの少ないその魔物は一部の男性には大人気である。しかもそれが上半身裸なのだ。男性的に言えば顔はあれだが体つきは理想的なのである。冒険者や変態の中にはゴブリンを買って性奴隷にするものいるくらいなのだ。
「なのに、彼は一瞬の躊躇もなく殺し、挙句の果てに笑っている。危うい強さですね……」
ヒルダはかつて見た戦闘狂と化していた自分と重なるセインを見て複雑な表情を浮かべる。彼は強くなるだろう……だが、その先にあるのは悲しみだ。
だからこそ、自分は彼の元にいて愛を……人の気持ちを教えてあげなければと思った。
そして……彼の心がどこまで閉ざされているかを見極める。
「あなたがこの奥にいる魔物の魅了にすら打ち勝ってしまうのならば戦いの才能があるということでしょう……私は自分の人生をかけてあなたに力と人としての心を与えましょう」
これが自己満足だということはわかっている。だけど、もう、自分のような人間にはなってはほしくないとヒルダは思う。
「よくやりましたね。ですが、まだ本命が残っていますよ」
着地と同時に魔法剣という彼女が編み出した剣技によって風の刃によって、切り刻まれて絶命していく。
「師匠……てか、つよ!!」
ヒルダが指をさした方向にそれはいた。ゴブリンたちを使役し、何人もの冒険者たちを殺した理想の女性の姿をした魔物……サキュバスを……
異世界ではゴブリンもエッチらしい……
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