第19話 助太刀

だが、髭男はそれに構うことなく大金槌を振り上げ、振り下ろす!


風をまとった大金槌が唸りを上げて振り下ろされると、思わず顔をしかめる音とともに金槌は盾ごと悪戯鬼ガテ・ケルツを叩き潰す。


一瞬で黒い霧となって四散する悪戯鬼ガテ・ケルツ


あっけにとられる悪戯鬼ガテ・ケルツとルアンナ。


しかし、髭男は動きを止めない。すぐさま次の標的に向けて駆けより、今度は身をひねり横薙ぎに金槌を振るう!


金槌を振るわれた悪戯鬼ガテ・ケルツは体がありえない形に曲がったまま宙を飛び、近くの木に叩きつけられる。


次々と為す術もないまま仲間が倒されていく様を見せられた悪戯鬼ガテ・ケルツ達は必死の抵抗を試みるが、まるで暴風のような勢いで迫る相手には全くの無力。


風を巻き起こしながら金槌が振り回される。


そのたびに悪戯鬼ガテ・ケルツの断末魔が上がるが、それもやがて森の木々の合間に消えていく。


そんな中、かなわんと悟り、逃げを打つ悪戯鬼ガテ・ケルツもいた。


だが、その進路を阻むものがいた。


体の各所を鈍く光る金属質の表皮に身を包んだ、先端が膨らんた長い尾を持つ、四足の生き物。


だがその体のあちこちには明らかに人工の革紐によっていくつもの袋がくくりつけられている。


その生き物は悪戯鬼ガテ・ケルツを睨みつけると一目散に突進し、近くの木めがけて突き飛ばす。


木に叩きつけられた悪戯鬼ガテ・ケルツはあっけなく崩れ落ち黒い霧となって消える。


それを見た髭男はたしなめる。


「おいおい、お主はそんなに暴れるな。儂の大事な荷物を担いでおるのだから。それに木を傷つけたら後でわしが月女神セレシスに怒られてしまうわい」


そのさまをいつしか地面にへたり込んでいたルアンナは呆然と、手にしていた槍を支えにして眺めていた。


「だいじょうぶかね」


あたりを見渡し、悪戯鬼ガテ・ケルツの姿がないのを確認すると髭男はルアンナのもとに歩み寄ってくると、手を差し出す。


「は、はい……あれ?」

出された手を握り、それを支えに立ち上がろうとしたルアンナだが、体に力が入らず立つことができない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る