第15話 大関降臨








  火気厳禁のダンジョンらしく、『No smoking』の表記に思わず喫煙所ぐらい作れと思ったのもつかの間、世界でいちばん綺麗でかわいくて美しくて賢いウィラが、表記がおかしいことに気付いたことで、今回のダンジョンの全貌が明かされた。


 ここに女人禁制の土俵型の魔方陣があり、足を踏み入れることの出来ないウィラは、元智天使らしくホバリングしながら優雅に飛び越えていった。


 クソチビポメ柴は放浪の魔女らしく、どこから調達したのか、トイレの掃除用具入れに必ず備え付けてありそうな、小汚ないモップに跨がって浮遊。


 飛べないナギ姐を後ろに乗せ、身長差50cmのアンバランスなニケツスタイルにより、ヤンキーの蛇行運転夜露死苦、ふらつきながらもなんとか土俵を模した魔方陣を飛び越えて行ったのだ。


 ちなみにナギ姐は、アメリカ出身の日系人であり、家族と共に日本に来てからは、訳あってグレていた時期もあり、元ヤンでもあったからニケツがとても様になり、二つの意味でヤンキー(アメリカ人、不良)でもあった。


 土俵型の魔方陣の向こう側に到着した三人は、早くこっちにこいとばかりに手を振って俺のことを呼ぶものの、元魔王だけど飛べない俺は、土俵を模した魔方陣に足を踏み入れることになるようだ。


 大丈夫、俺は前世で20年以上の戦歴を誇り、エステライヒの建国、国軍の創立から幾多もの戦いをくぐり抜け、先の大戦において大陸の連合軍、そして天界相手に大立ち回りをして生き抜いた訳だ。


 そんな俺が、例え土俵に立つことになってもなんとか出来る自信がある。


 ああ、前世でウィラにプロポーズした時と比べれば屁でもなく、smo KING こと、横綱不在ならば全く問題ない!


 さあ、どこからでもかかってこい!……ところでさ、俺のAKM、なんで没収されるんだい?


 もちろんマカロフ、RPG-7とその他諸々も同じく、服が没収されないだけマシである。


 おもむろにまわしスタイルはちょっと恥ずかしいし、この流れからして、今からステゴロで相撲レスラーと戦わなければいけないのか?


 土俵を模した魔方陣に降り注ぐ清めの塩で邪気は払われ、登場したのは……おい、横綱不在って言うのはわかっていたよ?


 だがよ、大関が降臨するなんて聞いてないぞ!?


 土俵の向こう側にいる美女三人(175cm、191cm+角、144cm)の声援は、とっても嬉しいけれどさ、そもそもこの状況に物言いを入れろよ!?


 クソッタレ、元魔王のニート改めウィラのヒモに過ぎない俺が、意地を見せたところで相手は横綱不在(No smo KING)の大関で実質トップ……見合って見合って……って、あれ、どうした?


 大関がまるで動く気配すらないぞ?


 あれか、土俵を模した魔方陣だけに、何かが足りないのか?……あっ、このフロアの攻略法がわかったぞ?


 よし、それじゃあ早速物言いを入れていくぜ!───。








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