第2話 始まりの惑星

 ひゅーん。と宇宙船はものすごい速度で落下し続けていた。


 高度がどんどん低下し、地面が近づいてくる。


 どうやら、この惑星は地球のような星と比べ、大気の密度が低いようで、大気圏突入の衝撃は比較的軽度であった。


 しかし、その分空気抵抗がなく、速度があまり低下することなく落下をしていた。


 恐らく地球ほどの重力はないと予想されるが、そのまま地面に到着した場合にはただではすまないだろう。


「うぉぉぉぉぉおお!!」


 コクピットでレバーを握りながら絶叫するノヴァ。

 明らかに命の危機だというのに、頭の中で考えたのは最後の晩餐が牛乳になるなんて。ということだった。


 地面に激突する寸前。

 宇宙船腹部から逆噴射を行い、衝突の衝撃緩和を試みる。


 ボンッ。ボンッ。ボンッ。ズザザザァーー。


 何度かバウンドしたのち、地面を滑り、大きな轍を作りながらなんとか停止する宇宙船。


 不時着したのは、一面に荒涼とした大地が広がる惑星であった。



 しばらくして、カシャンと宇宙船の側面につけられているドアがスライドして開く。


「ふぅ。危機一髪」


 ドアの奥から姿を現したノヴァは、船外活動用のスーツを身に着けていた。



 船内では比較的動きやすい恰好をしていたが、今は地球外活動用のスーツをに包まれている。このスーツは、地球外探査活動を行うための様々な機能を備えるようノヴァが自ら手掛けた完全オリジナルのスーツである。

 ただし、ノヴァが最もこだわったのはそのデザインであった。

 スーツはホワイトとゴールドのメタリックなカラースキームにブルーのアクセントが特徴的だった。



 本来ならば自動でタラップが展開されるはずだが、損傷の影響かうまく機能しない。仕方がないので、宇宙船のドアから飛び降りる形で星へ降り立つ。

 この惑星は地球より重力が小さいようで、ふわっと地面に着地した。


 宇宙船を外側から眺めた後、ゆっくりと宇宙船の周りを回りつつ、損傷箇所を確かめながら

「イブ。損害のチェックをお願いできるか?」


 と腕のガジェットに語りかけるノヴァ。

 腕のガジェットは様々な機能を備えたマルチデバイスである。

 機能の一つとして宇宙船との通信が可能であり、宇宙船に搭載されているコンピュータシステムとやり取りができるようになっている。


「主に推進機器関連にダメージあり。宇宙航行を再開するには修理が必要です。

コンピュータおよびシステム維持関連機能には大きな損害はありません。」


 と腕のガジェットを通して返答する汎用型超性能人工知能『イブ』


「よかった。それなら、なんとか生き延びられそうだな」


「よくありません。宇宙一の美しさを誇る私のボディに傷がつきました」


「・・・・・・・。」

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