第4話  ロアと光の神

「えっと……光の神殿て、そんなに大きくないのね。別棟もあるのか……

 って!! 反省室は別棟のほうだったわ~~ や~ね~ エリス師の地図の書き方が間違ってるじゃない!!も~!!毛布が重いのに~!!」


 ブーされて、『神剣の間』を通り過ぎる時に扉が開かれた。

 ロアンは、地図を見るのに夢中で、前方を全く見ていなかったため、扉にオデコを思い切り打ち付けることになった。


『神剣の間』の扉は重厚だ。

 ロアは、大きなたんこぶができた。


 あまりの痛さに蹲って声も出ないでいると、そこに五人の男が現われた。

 その内の三人は、ロアでも知ってる神殿のトップ三賢人だ。

 神官最高位でなければ身につけられない、紫色の腰紐を使っていた。


 あとの二人は……と……もう一人最後に女性が部屋から出て来たのだ。


 銀色の長髪と銀色の瞳の面差しが良く似た二人の男と、赤毛のものすごい美女。


 ロアンは、違う世界に来てしまったのかと思った。が、直ぐに我に返った。ここは、光の神殿の中でエライ神官がいるところだと……。


 光の神がロアンの存在に気がついて言った。


『扉を開けた先に、人がいたのか?』


 光の神の口調が、ロアンを苛立たせた。古代レトア語も気に食わない。


「痛いじゃないの!! 謝りなさいよ!!」


『謝る? 我が? そなたにか?』


 イリアスは、痛みで蹲ってしまったロアンに目線を合わせた。


『大きなたんこぶだ。これが我のせいだというなら、すまぬことをした。治してやるゆえに許してくれぬか?』


 言って、光の神は、ロアンの額に手をかざすと、銀色の光を放った。

 ロアンの額の痛みは次第に消えていった。


「これ、我らの神になんという口の利き方だ! その制服は学び舎の学生だな。何故、学び舎の生徒が銀の森の中枢たる神殿にいるのじゃ」


 (神……? 神と言った? 今?) 


 ロアンは、銀色にほんのり輝く人に、お礼も言わず、差し出される手を取って立ち上がった。


「文句なら、魔石の精製を禁止したセルグ師に、もっと言えば、でたらめな地図を渡したエリス師に行ってくださいよ~」


『そなたの髪……薄茶色はデュール谷に多い色。そなたもデュール谷出身の者か?』


「そうだけど?」


 イリアスは、ニッコリと笑って言った。


『これから起こるそなたの罪をすべて許そう。だからパーシアをそなたに託す。バーシアの良きパートナーとなってくれ』


(????)


 ロアンは、人生で一番訳の分からないことに巻き込まれた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る