Markdown-Babel

 そもそも、 Markdownを布教しようというのになぜ最初のページでネガティブな事を言ったのかと疑問に思われる方もいるかも知れません。


 しかし、これから言う事はMarkdownを扱ったことがある方ならば投げたものが地面に落ちるのと同じぐらい確実に同意していただけることでしょう(投げたものが光子かエキゾチック物質でなければ)。


 Markdown の重大な問題、それは方言が多すぎることです。


 より正確に言えば、オリジナルのMarkdownの仕様がしっかり定まっていなかったことです。


 Gruberが提唱したオリジナルのMarkdown[5]を見ればわかることですが、インデント(字下げ)の仕様や空行の扱いといった細かいルールがほとんど決められていませんでした。


 ふんわりと、なんとなく、いいかんじで書くためならばそれで良かったのですが、大勢の人間が使うとなると細かいところまで仕様を詰めなくてはいけません(ネジの寸法をメートル法とヤード・ポンド法で間違えてしまうと大変なことになりますよね)。


 Markdownはこの標準化(仕様を決めること)が曖昧なまま広く使われるようになったため、数多くの方言が乱立することになりました。その結果どうなったかと言うと、使う処理系(MarkdownをHTMLに翻訳する方法)によって表示が変わってしまう可能性がでてきたのです。


 しかし、このままではバベルのMarkdownが稲妻に打たれることを危惧した人々が標準化に乗り出しました。


 それがCommonMarkです[6] 。当然CommonMarkも方言なのですが、よく使われる方言達をある程度まとめ、共通の仕様として定義を試みるものでした。


 このプロジェクトはかなり成功したのですが、表をサポートしないなど、一部には不満が残るものでした。


 その一部を拡張したMarkdownファミリーが GFM(GitHub Flavored Markdown)[7] です。


 このGFMは今ではほとんどの処理系が何らかの形で採用しており、実際使いやすい仕様だったのですが、仕様書にいくらかの問題があり[8] 再びバベル化しないことが祈られています[要出典] 。


 他の仕様で有名なものといえば、 Pandocという文書変換の強力なライブラリ(ツール)がある(HTMLやLaTeXはもちろん、MS-Wordファイルのdocxにすら相互変換できる!)のですが、いくつか非スタンダードな記法に対応しています[9, 10] (オプションでGFMなどに従わせることも可能なので、互換性のためというのがしっくりきますが。そもそも、PandocとCommonMarkは同じ作者から生まれた兄弟ですので)。


 また、情報共有コミュニティ(日本で言えば Hatena, Quiita, Zenn, ...)のそれぞれでも独自記法を導入し、それが原因で一部互換性がなくなり…… ということも再発しています。


 これらの危惧からか、 CommonMarkの生みの親が新しいMarkup言語として Djot[11, 12]というものを提唱したりしていますが、 2022年生まれの新顔なので、ここではMarkdownについて紹介します。

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