異世界転生百合ヘアースタイリスト~フラれて死んでからが本当の愛を知れる~

群青 塩湖

第1話 アプローチは大切に

 予行練習に私はまずハグをした。

 何となく脇元が寂しげな私の最初にすべき愛情表現練習はそれだった。

 多分、告ってok貰うのは余裕を感じていて、そのくらいの容姿は持ち合わせていた。


 ただ、何か私には足りなさの不安がつきまとう。

 可愛い子とは旅をしろと言う諺があるように、

 私は女の子とデートしてきた。


本命の子以外と。


 では何がサブキャラは余裕ですが、メインキャラには敷居が高い。

 かなり無理なコーデして目線を引いて奇抜な言動でその子からの印象を差別化しないといけない。

 それには多大な労力が必要であって、気疲れが空を通り越して宇宙街道を暴走族が走り抜けている。

 相手のその子は普通ではなかった。


変わった人が好きらしい。


 これには多大なサーチングが我ながら必要だと思った。

 その前にはコーチングが欲しいくらいの後押しがいるくらいだ。


人の愛好を探るにはステルスさがいる。


 それを直に聞いてしまうとサプライズが起きず、思わずドキドキして惚れてしまうといった、受動的な恋愛現象が起きない。

 それでは聞き出すことの意味がない。

 その子の愛好を探るには、慎重を喫した。


近くに座ってみた。


 サーチするにはまず。

 その子に近づくこと。

 話しを聞いてみること、

 話題に注意を持つこと。

 そう何処かの図書館にあった難しい本に書いてあった。

 後で読み返したい。

 そうやって私は彼女に初のアプローチを試みた。


「髪は長い方が良いよね」


 私はメモに取った、

 彼女と背中合わせに、私は背を少し丸めてペンを走らせた。

 どんな長い髪だろうと、ふと軽く横目で振り向く。

 隣りに座る別の女の子が雑誌を乱雑に何冊か置いていた。

 めくるスピードが遅かった。


ペラッ、ペラッ


 開くページ開くページ、私には眩しすぎた。

 整った目が大きく丸く輝いて見える女の子ばかり写っていた。

 奇抜な格好をしていて、露出も高く扇情的なスポーティさがあった。


「こんな髪型がいい」

「それはなくない?」

「えー良かったのに」


 私にはベストだと思った。

 今の返答が私ならすぐに肯定ができた。

 前髪姫カットセミロング、サイドとバックの毛先をソバージュ。

 この子に似合うのは必然であって、比べものにならないくらいの美人さんの完成。

 ヘアモデルにしてしまったらそれだけで美容師さんが受賞してしまうだろう。

 頭の形まで整っている所を見ると神様が私のためにおモデリングしてしまったのか、こんなこと言っても気が気でない。

 私は生まれ変わるなら美容師のハサミになりたい。

 この子をキレイに整えてやるのだ。


私の好きなように。


 このヘアカタログで頭が一杯であった。

 今日、これを買いに行かないと、マイナー誌だが大型書店なら何処かにあるだろう。

 探し物はなんですか、見つけにくいものほど見つからない価値がある。

 

 そうして数分後、読み終わった雑誌を放置して、お手洗いと向かったのかその子達は教室を出た。

 私は席をおもむろに立ち上がり、当然のように雑誌をひっくり返し表紙を見た。

 その雑誌を私の顔に自ら近づけて、香りをかいだ。


「甘い香り。おなか減りそう。」



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