第3話

なんやかんやがあったが、俺たちは少女が手配したであろう車に乗り込んだ後、屋敷の決まり事などを聞いていた。


「実際俺は自由らしいがほんとに何もしなくていいのか?」


この少女の家が金持ちなのかは知らないが、人一人を養うのは結構な出費だと思うが.....。


ましてや父親が話を聞いた感じ捕まった感じだし。収入が無いのではないだろうか。


「気にしないでください。お詫びですし、お金に関しても100人なら問題なく養えるほどはありますよ」


それはすごいな......。


「ホントになんもしないぞ?」


実際問題衣食住が提供されるなら俺は俺で自由に動ける。


それこそ俺の記憶について探るのもいいかもしれない。これからの生きる目的を記憶の探求にすることができる。


そのため凄くありがたい謝礼ではある。が、何か裏がありそうな気もする。


「私は平日は学園に行っているのでその間は屋敷の外に出てもらっても構いませんよ。」


学園か.....。俺には無縁のところだろうな。


教育なんて何も受けたことがない。これからも受けることはないだろう。


「わかった。何かしてほしいことがあったら言ってくれ。暇つぶしだ」


「ありがとうございます。もしその時が来たら頼りにするかもしれません。っと、着きましたよ。ここが飛鳥家の屋敷です。」


目の前にはとんでもなく大きい屋敷がそびえたっていた。


下手すりゃ病院くらいあるんじゃねぇの?


「そりゃ100人養えるだろうよ……」


「なにかいいました?」


「いんやなんでも」


「それじゃあ部屋の案内を使用人に任せていますのでゆっくり過ごしていってくださいね。改めて、ようこそ飛鳥家へ」


その一言で俺は新たな物語が始まることを予感した。


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病院の一室でぶつぶつとしゃべる女の姿があった。


「ありえないわ……。だってこれじゃあまるで.....」


カルテらしきものと睨み合い、女がつぶやく。


カルテには患者の状態などが書かれていたが、一か所だけ不可解なところがあった。


傷の治り等が異常に早いのは常時発動型の異能であることは予想がついたが、本来ならば感染症などは異能の対象外のはずである。常時発動型の異能はその制約の緩さゆえ効果自体は控えめなことがほとんどである。しかし青年の身体にはこれまでに受けたであろう拷問などの傷はもちろん感染症などの病気などに感染していた気配がなかった。常時発動型の異能にしてはとてつもない性能である。なんなら薬の成分すら即時に分解している。まるで外部から守るように。


まるで死から遠ざけているような.....。不死性のある異能なんて聞いたことが無い。


「気になることがありすぎるけど......」


しかし女はカルテを暫く眺めたあと捨ててしまう。


「これは上に報告しても信じてもらえなさそうね......」


この女の行動により連理たちの運命が変わったのは神のみぞ知ることであった。

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