【母仔猫画像あり】猛猫リンネの物語

BIRD

第1話:シャーパン三毛猫の出産

 2024年4月15日午前4時。

 1匹の老猫が、東京のボランティア宅で命を終えた。

 釣り針を飲み込んで喉が裂けてしまった地域猫「マイクル」。

 島内の病院では対処できないと言われて、東京へ送った猫。

 除去手術・裂けた喉の修復手術は成功だった。

 しかし、高齢のため術後の回復が進まず、4月15日未明に永眠。

 マイクルはスリゴロだったので、回復したら里親探しをしたいねとボラと話していたけれど、願い叶わず。

 マイクル、どうぞ安らかに。


 釣り針を捨てた釣り人に言いたい。

 地面に投げ捨てたその針は、捨てるために持ってきたのか? と。

 その釣り針は、大事な道具ではないのか? と。

 マイクルは無責任な釣り人に殺されたのだ。



 同じ頃、我が家では新たな命が生まれていた。

 母猫は、キレのいいパンチを放つ三毛猫。

 石垣島の緑地公園に棄てられた猫が、公園から逸走して繁殖している群れの1匹。

 何世代目かは分からないけれど、人間に飼われた経験の無い、小さな猛獣みたいな猫。

 姉妹と思われる猫と共に捕獲され、避妊手術を予定している地域猫候補だった。


 姿を見れば「シャーッ」と威嚇。

 そこから更に近付くと、「カッ!」という短い威嚇と共にパンチを飛ばす。

 気を抜けば怪我をする、緊張感漂う預かり期間中のこと。


 猫を落ち着かせるためケージに被せている箱をどかして、ゴハンをあげようとしたら、増えていたものがある。


「あ、いらっしゃいませ」


 思わず呟いてしまった。


 シャーパン三毛が1匹だけ入っていた筈のSケージに、ちんまいのが3つ増えている。


「お疲れ様でした」


 と言って、箱を被せてしまったよ。


 去年のレミ(仔猫が仔猫を産んだ)よりは、驚きが少ないな。

 そうか産んだか、なら育てて頂こう。


 そう思いつつ、ボランティア仲間たちに出産報告LINEをしていたら、東京のしゃーねこ家さんから訃報が届いた。


『午前4時、亡くなりました』


 誰のことかはすぐに分った。

 亡くなった老猫マイクルを思ってしばし黙祷。


 その後、再びシャーパン三毛の様子を見に行くと、なんかさっきより増えている。

 3匹だった仔猫が、5匹に。

 最初に見た時は、産んでいる真っ最中だったんだろう。

 さっきはまだ身体が濡れていた仔猫たちが、フワフワ綺麗になっていた。


 増えた子猫の1匹が、マイクルに似た茶トラだった。

 マイクル、生まれ変わったのかな?


『ワシ転生するから、よろしくニャ』


 マイクルの霊に、そう言われた気がした。


 名前をつけよう。

 転生者(と思っておく)の茶トラ仔猫は「マイクル」。

 産んだ母猫は「リンネ」。


 あと4匹は、まだ考え中。


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