第20話 いきなり大ピンチ!
島民たちが恐れていたのは妖狐のアカツキではなかった――いや、厳密にいえばたぶんアカツキなんだろうけど、農作物などを食い漁って被害を出していたのはあの巨大猪だ。
それにあいつは……普通の猪じゃない。
恐らくは猪型のモンスター。
口から伸びる鋭い牙。
鋭利な刃に匹敵する硬さと切れ味を持っていそうな体毛。
そして何より頑丈そうなボディ。
どこをとっても、俺が単独で戦うには危険すぎる相手だ。
一応、小屋の中に捨てられていた銛を強化し、護身用の武器として携帯しているが、あの猪型モンスターにはあまり効果がないだろう。まさかここまで厄介な敵が潜んでいるなんて想定外の事態だ。
緊迫した空気が流れる中、
「手を貸そうか?」
おもむろにアカツキがそう口にする。
「手を貸すって……助けてくれるのか!?」
「おまえは島民たちと違って恐れずに話を聞いてくれた。……俺としても、現状を打開したいと考えていたからな。おまえならきっといい橋渡し役になってくれると期待したんだ」
「っ! もちろんだ! ここから生きて帰れたら、島民たちにアカツキのことがすべて誤解だったと伝える! 神に誓うよ!」
「なら――交渉成立だ」
さっきまで寝転んでいたアカツキが静かにその大きな体を起こす。
「俺の生まれた国ではヤツの肉を野菜と一緒に鍋で煮て食うんだ。クセはあるが、なかなかうまいと評判だぞ」
「牡丹鍋か……確かにうまそうだ」
「ぼたんなべ? こっちではそう呼ぶのか?」
「あっ、いや、その……俺の故郷での話だ。この島の人たちはたぶんあれを食べたことはないと思うぞ」
あくまでも前世の世界での呼び名だったな、それ。
まあ、俺も知識だけで食ったことはないから楽しみだ。
「ぶおおおおおおおおおおおっ!」
俺とアカツキが手を組んだと理解した猪型モンスターは、巨体を揺らしながら突っ込んでくる。
その姿はまさに猪突猛進。
こちらが回避するかもしれないという先読みなど一切無視して力任せに突進してきた。
「避けろ!」
「あいよ!」
アカツキの指示が飛ぶ前に、俺はヤツの突撃を回避する。
猪型モンスターは勢い余って大木に頭から激突――が、まったくノーダメージのようですぐに復活し、狙いを定めて再び突撃してくる。
「タフすぎるだろ!」
「嫌だねぇ、頑丈さだけが売りのヤツって」
呆れたようにそう語るアカツキだが、その頑丈さが一番厄介なんだよな。あっちの一撃は当たると即終了となるので、避ける方も全力を出さなければならない。しかしそうなると、オフェンスがどうしても後手に回ってしまう。
「どうすれば……」
「こちらは数で勝っているんだ。連携してかく乱しながら戦おう」
「で、できるのか!?」
「やらなければここでおしまいだぞ?」
「うっ……」
その通りだ。
ここはひとつ――覚悟を決めて大勝負に出るか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます