第12話【最後の砦】

〖最恐クラスの終焉〗

その後、再び全員へ指令が渡る。その内容は残りのscp『049 ペスト医師』

『106 オールドマン』

『939 数多の声で』

『953 妖狐変化』

『2704 ビートルロワイヤル』

『073 カイン』の計6体が何者かの手によって回収されたと言うことだ。安心出来るような出来ないようなそんな気持ちだったが、突如再び、腕時計式通信機(スマートウォッチ)がアラームを鳴らす。嫌な予感がした全員は皆、集合するために渋谷駅付近に集合とたくとの声が耳についた通信機から聞こえる。その後、そこら辺のシャドウを狩り終わり、皆が渋谷駅付近に集合した。

「えっ?何かアベル居ない?」

「え?何でscp連れて来てんだよボルト…」

「俺の友達☆」

などとけいぶんとたくとの質問にアベルと肩組して答えるボルト。他の皆も様々な話をしていたが、遂に皆を驚愕させる通知が通信機に入った。

《scp-1055が解き放たれました》

「「「「「「「「「「は?」」」」」」」」」」

『scp-1055』その名は『バグジー』。オブジェクトクラスはケテルで、バグジーと呼ぶテディベアを肌身離さず抱える、 マイケル・シュローダーという名前の29歳の自閉症の男性。バグジーを常にきつく掴む習性があり、 職員は食事中も入浴中もこの行いを 許可かつ奨励しなければならない。SCP-1055(テディベア)はハイイログマに似た実体で、 周囲の人間の恐怖や敵意に反応して 力を増す能力と全てを無力化する性質を備えていました。と説明書に書いてあり、そんな奴を誰かが解き放ったのだ。

「ちっ!またか…!?」

「しかも今回はかなり面倒そうだ」

ベッドロックとはむが嫌味を吐き出し、全員はそれぞれ武器を再び構え、周りを見渡す。

「どっからでもかかって来いよ…」

「面白い、このオレを楽しませてくれ!」

ボルトとアベルはお互い背を向けてまるで相棒のような立ち振舞いをしていた。その瞬間だった。

「何だコイツ!?」

「や、辞めろ!く、来るなァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!」

何処からか爆発音と自衛隊や警察の叫び声が聞こえ、共に目の前からテディベアを抱え持った男が現れた。

「アイツがバグジー?ただの男性じゃねぇの?」

けいぶんの問いにたくとは首を動かし、あえて口では言わないことを理解した上で全員は戦闘体勢に入る。

「0000000000…」

ノイズのような声がけいぶん達の耳に入り、その声は聞き取れずただの雑音だと感じたボルトとアベルは走り、空を飛んで互いの拳は同時にバグジーへと攻撃が入るはずだった…

「『魂魄』!!」

「ッ!」

バキィ!!!

感触はあったが、それはただの人体に拳が当たっただけでボルトの魂魄も、アベルの打撃さえかき消されていた。

「何だよ…」

「マジか…」

そして、男が小さな声で何かを口遊むと片手で抱き締めていたテディベアの首がゴリッ!っと鈍い音と共にボルトとアベルへと視界を移し、目が合った瞬間に二人は見えない何かに弾き飛ばされる。その後にるるは時の軸で時間を止め、ブラパとベッドロックが前線に走り出して後ろから食料組が追撃を飛ばす。

パリィィィィン!!!

しかし、時間が止まっていた空間が破れて時は進みだし、食料組の追撃は途中で又もやかき消されてブラパとベッドロックは能力を発動する前に無力化され、近くの瓦礫へと弾き飛ばされた。

「無理ゲー過ぎんだろ。こんなの…」

けいぶんは確かな絶望を感じたが、此処で逃げるのは東京を救えないことだと思い、刀に全神力を込めて走り出し、稲妻を纏って空に軌道を描いて雷を複数飛ばす。勿論それすら当たる前にかき消されるがそれはあくまでもおとりに過ぎない。けいぶんは透かさず刀を振るった。

「雷撃!!」

バリィィィィィィ!!!

そして、雷が降り注いで男は普通に考えて死ぬはずだがそれすら当たっていたのに無効化され、けいぶんは更に強く弾き飛ばされる。

「ぐっ!!」

「けいぶん!大丈夫か?」

「あぁ…」

(アイツ…攻撃を受けていくごとに強くなってる…)

たくとは倒れたけいぶんに歩み寄り、手を差し伸べる。そしてたくとの手を借りて立ち上がった時、ふと思い付いたことをたくとに話し、グータッチをするとたくとはスナイパーライフルをしまい、アサルトライフルを通信機のインベントリから取り出し、それを男に向かって撃ち続けた。やはり、その攻撃も無効化され、テディベアの視界にたくとが映った時にけいぶんが前に出て壁役を果たした。

「後は頼んだぞっ!!」

「任せろ!」

パァン!

そして、男の懐に触れてスライディングをして男を通り過ぎた。

「00000?」

男はやや歪ませた表情を初めて出す。そして、たくとは再びライフルを男に向ける。全員の視線から思いを受け取ったような感じがしたたくとはそれに応えるように引き金を引いた。

バンッ!!!

ドチュゥッ!!ダラー…

「00000…!!?」

その燃え盛る銃弾は男ではなくテディベアの顔面を貫いた。そして、テディベアの頭は地面へと落ちる。その瞬間に皆は驚いた。何故今まで当たらなかった攻撃が当たったのか…

「どうして攻撃が当たったの?」

まるしぃはふとけいぶんに聞く。けいぶんは下を向きながらフッと笑って答える。

「アイツのもう一つの能力が使えると思ってね」

「もう一つ…あっ!もしかして、物真似"コピー"!」

「正解だ。俺がたくとの受ける衝撃波を盾役として受けて近付けさせ、たくとが奴に触れれば短時間だがそいつの能力をコピー出来るんじゃないかって思ったんだけど予想通りだったぜ」

なんとけいぶんは、たくとのコピー能力を使い、バグジーの『無効化』という能力を上から更に無効化してダメージを通すようにしたのだ。その後、暴れる男を駆けつけた財団職員が拘束し、今回の任務も無事に終了して本部から報酬が貰えた。

 そして、家に皆帰ればやりたいことをバラバラにやり始めてけいぶんは自分の部屋に静かに戻った。空はまだ暗かったが東京の夜景も徐々に戻っていき、少し光の少ない東京の上の星空を窓から見上げた。綺麗な星空を眺めながらポケットから煙草を取り出して火を付けようとしたがまるしぃに煙草を取られてしまった。

「せっかくの星空が煙で見えなくなっちゃうよ~」

「お前…下でアイツらと喋るかと思ったからヤニろうと思ったのに…」

けいぶんは不機嫌そうな顔でまるしぃを見つめたが、デコピンを喰らってけいぶんはでこを擦った。

「いてぇ…」

「そんなことより、あの時のこと覚えてる?」

「あの時って?」

けいぶんの質問にじっと見つめてくるまるしぃが居たから慌てて過去を探り、言いたいことが理解出来たから話を続けた。

「あぁ、覚えてる。忘れないよ…また、お前とこうやって会えたんだから」

ふと星空を再び見上げれば一番に光る星が何かを言いたげそうに強く光っていた。


そして、始まり明かされるけいぶん達の物語。どうしてこの世界へと来たか?なぜ神の器となり、皆が集まったかその謎を解き明かす為に過去へと物語は戻るのだった。

【混沌の朧月編】完

【雷妄滅煉編】開始

〖過去へと戻り、皆が揃うまで〗


(おまけ)

〖強くなりたいから努力する〗

(あの時、私の拳に何か宿った気がした。でも、それが何だかわからなかった…)

まるしぃは、東京でテディベアの戦いでの出来事を思い出していた。ソファに何気無く座り、甘えてくる四人の娘達の頭を優しく撫で回していた。赤髪の娘が『レイア』青髪の娘が『アミ』茶髪の娘が『アース』金髪の娘が『ライナ』と後々名前を聞いていて、全員がまるしぃを気に入り今は、姉(まるしぃ)に甘える妹達のような振る舞いをしていた。

「ねぇねぇ姉さん。何見てるの?」

アミは、不思議そうな目でまるしぃのスマホを見つめる。同時にレイアは寂しそうにまるしぃの膝に横たわる。

「あーね。私は強いのかなって…」

「心配ないよ。姉貴は強い!」

レイアはまるしぃを見上げながら輝く瞳で見つめた。それににっこりと微笑み、レイアの頭を撫でた。

「ありがとね」

「えっへへ~♪」

「ズルいよ。僕も~」

「私もほしいです…」

頬を膨らませてぷんぷん怒るライナと恥ずかしそうにもじもじしながらレイアの撫でられる姿を羨ましそうに見るアース。"人気だな、私は~"と心の中で嬉しく思いながら皆を平等に撫でてあげた。そんな幸せな時間を過ごしているその時だった。

ドガァァァァァン!!!

「えっ!?何々!!?」

びっくりして固まるアミ達。まるしぃは立ち上がって窓の外を見ると広い我が家の道場から煙が立ち上っていた。同時にけいぶんが筋トレを終わらせたのか部屋に入って来た。その姿はなんとも言えず、薄いTシャツは汗によってうっすらと透けて少しある筋肉が見えた。

(あぁ、私が前に"筋肉ないじゃ~んw"って言ったから密かに鍛えてたんだね。可愛い所あるじゃん)

「何ニヤニヤしてんだよ。キモいなぁ」

顔に出てしまっていたのか、冷蔵庫を漁っていたけいぶんがまるしぃに冷たい言葉を送った。それを聞いたアミ達はぷんぷんと怒りだし、けいぶんに飛び付いた。

「姉貴はキモくない!!」

「姉さんを悪く言うなぁ!!」

「むぅ~~!!」

「姉ちゃんよりお前のほうがキモいんだよ~!!」

けいぶんに総攻撃するアミ達を止めようとまるしぃは近付いて皆を説得した。

「こらこら、そんなバカに構わなくていいよ。私を庇ってくれてありがとね。それにそんな言葉を使っちゃお姉ちゃん怒るよ」

「「「「…ごめんなさい」」」」

けいぶんから離れてまるしぃに怒らないでアピールをするアミ達。それに「怒らないよ」と優しく話しかけるまるしぃ。

(ここに長居するのは居心地が悪い…)

飛んで来るハートを弾き、けいぶんは部屋から出ていった。

「あっ!そう言えば忘れてたけど道場見てくるね」

「えっ!?私達も行くよ!」

「いい子に待ってるんだよ」

「「「「はい…(嬉)」」」」

照れ草そうに顔を隠すアミ達を可愛いと思いながら外に出て、道場へと向かって辿り着けば特攻隊の声が聞こえる。中へと入るとベッドロックが壁にめり込んでいて、如何にもボルトがやったかのように拳を前に突き出していた。それを見てたのかブラパは口を抑え、少し笑っていた。

「やっぱり…貴方達だったんだね」

まるしぃは髪をくるくると弄りながらボルトの方を見る。ボルトは拳を引いてそっぽを向いた。それと同時にベッドロックは壁から抜け出し、頭を擦っていた。

「痛ってぇ~、ボルトも少しさ手加減してくんない!?」

「オレ、テカゲンワカンナイ~」

ボルトがそっぽを向きながら馬鹿みたいな顔をして腕を組む。それに呆れた顔をしながら剣を鞘にしまう。

「それにしても、まるしぃは一体何の用だ?」

プロテインを飲む手を止めてブラパはまるしぃへと問いかける。まるしぃは両手を振りながら慌てて言った。

「えっと、私は凄い爆発音がしたから心配になっただけだから、それじゃこれで…」

「本当に何もないのか?」

「えっ?」

まるしぃが背を向け出て行こうとする所をボルトが真面目な顔をして止めた。その顔は凛々しくふざけなど一切ない透き通った目だった。

「俺の戦う姿を見てただろ?その時の顔、憧れの顔だな。自分の強さが心配なんじゃねぇのか?」

ボルトは悩むような顔をしながら数分後、何かを閃いたかのような顔をしてベッドロックを端へと退けてボルトはまるしぃへ手招きをする。

(えっ、まさか…)

「俺の伝え方はただ一つ。身を持って感じて学ぶことだ!」

無理だと考えたまるしぃは道場の外へと逃げようとしたが見えない結界にぶつかり、外には出られなかった。

「壁がある~(泣)」

「男であれ、女であれ逃げる手段も時には必要だ。だけど、いつまでも逃げるのは正しいとは言えない!!」

まるしぃはため息と共に戦闘体勢へと入るとボルトはその姿に強者の笑顔を見せる。

「かかって来い!」

その掛け声と共にまるしぃの拳から葵い氣が炎のように轟々と燃えていた。

「あれがボルトの言ってた"魂魄"!」

「多分、そうだな…」

プロテインを片手に持つブラパと片手にタオルを持ち汗を拭うベッドロックが道場の端でボルトとまるしぃの戦闘を観戦する。

ダッ!!

そして、まるしぃは駆け出して一気に空を舞いながら着地と同時にボルトを殴ったはずだがボルトは片手で簡単に受け止め逆にボルトは紫色に漂うオーラを拳に込めてその手を引く。

(ヤバい…負ける…)

「魂魄!」

「ひっ!うぅ、あれ…?」

殴られると確信して目を閉じていたまるしぃだがボルトは拳を寸止めして、まるしぃから離れた。

「うん!いいと思う。まだ、限界じゃないな!」

「は、はい…」

ボルトは腕を組んで心配なさそうにまるしぃを見た。

「お前はまだ強くなれる!己を信じて前を向くことだな!」

「…か、かっこいい」

「んじゃそろそろブラパ~来いよぉ」

「まだ、プロテイン全部飲んでないよ~」

結界が解けた道場から出ようとまるしぃは後ろを振り返って挨拶をしようとした時だった。

ズダダダダダダダダッッ!!!

ビュォォォ!!

後ろを振り返ればボルトとブラパが目に見えない速度で殴り合っており、相手の拳がぶつかり合った瞬間には突風が発生していた。その姿を見てまるしぃは己の拳を見てふと思った。

(私…まだ、強くなれるよね?)

その心の声はとても不安そうであり、そのまま振り向かずに家に向かうのだった。

「ブラパ遅いぞ。1秒間に数十打撃くらいは撃てないとペースが乱されるぞ!!」

「ハイッ!!」

少しして、けいぶんが見に来れば熱い戦いが道場で繰り広げられていた。ベッドロックの隣に座れば、突風が吹いてきてとても心地よい。

「あぁ、いいねぇ。なんか見てて飽きないわ」

「けいは呑気だね」

「そうか?」


〖秘密の訓練成功?〗

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