第6話 体調維持

「お前、大魔王退治とかのゲームやりすぎじゃね?」


同期の小林健慈けんじにそう言われてしまった。


「確かに8年前迄はその類いゲーをしてからは、ゲームは一切してないな」


今日もいつも通り仕事をしているが、昼の休憩中にそう言われてしまった。


「良いか?超ハマるゲームってのがお前の脳を刺激し、離れられなくなる。特にオンゲはな。で?どんなゲームなんだ?」


「いやいや、だからゲームはしてない。さっきも言ったけど、変な夢を見ただけだ。」


「その変な夢を見るってのが、ゲームのやりすぎだからだって俺は言ってるんだぜー」


やれやれ、健慈に話すんじゃなかった。確かにゲーム依存みたいなリアルな夢。まるで大冒険をスタートさせる様な夢だった。


夢で旅する妖精大森林パラダイスって所だろうが、そんな馬鹿げた夢を見たのもたった1日。今思えば、ほんの少し残念だ‥‥あの続きを夢で見て妖精大森林まで行って大魔王を倒して癌を治してゲームクリア。


って良くゲームをしていた10代や20代の頃が懐かしいぜ。





「おっそ〜い!」


「え?」


「え?じゃないわよ、戻って来るのが遅いって言ったのよ!?」


小さな小人に私は怒られている。何だ?そしてこのシーン、見た様な見なかった様な‥‥


「い〜い?彗人、あたしたちはね、500日しか時間がないのよ?1日も無駄にできないんだから、毎日こっちの妖精国に来てちょうだい!」


妖精国?


‥‥ッハ!


思い出した。一昨日見た夢の場所だ。


昨日は夢を見なかった、何故だ?


待て待て待て、落ち着け私‥‥


つまり、この夢は、夢だけど‥‥


「そうよ、夢だけど夢じゃなかったってところかなー」


「な、何その何処かの姉妹みたいな台詞。」


見渡す限り一昨日見た場所と同じだ、やはり旅はしないといけないのか‥‥


「彗人は昨日この地にやって来なかった。お酒を飲み過ぎたんでしょー?」


「え?」


確かに部長や課長達に連れられて飲み過ぎた事は確かだ。しかし酒を飲むとこの妖精国には来れないのか?‥‥


「旅をするのはね、あっちの世界の体調を、そのまんま維持するのよ、だから飲み過ぎて熟睡してしまうと、この世界には入りにくいのよねー」


「なんだと?じゃあもう酒を飲むなって事か?」


「そゆうこと〜♪そんな生活していると、妖精大森林に到着する前にあたし達死んじゃうよ?」


おいおい、冗談じゃない!決してアル中ではない、仕事を終えた開放感をビールと共に過ごしてきた私にとっては第一のパートナーだなのに‥‥


「ね、ねぇ、ケイトちゃん。ビールの飲む量を減らすってのはだめかなぁ?」


いつの間にか仕草は手を合わせていた。まるで取引先と交渉している若い頃の私だ。そういう仕草での交渉は、既に結果は判るもので‥‥


「ダーメ!さっき言ったでしょー?体調を維持するって。つまり、酔った状態でこっちの世界に来ても、酔った状態なわけよ。」


なにぃ、じゃあ本当に酒を飲めなくなるではないか‥‥

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