第4話 ジリリリリリリ

私は本当に500日で死んでしまうのだろうか?


ステージ4の癌と聞いているに、どちらかと言うと自覚症状がない‥‥気がするんだが。


そして本当にその妖精大森林パラダイスとやらに行けば、病気は完治するのだろうか?


これは夢であり、夢ではない?なんてわけのわからないこの感じ、何とかならないのだろうか‥‥


「彗人君さぁ、一人で難しそうな顔してるけれど、早くこの現実を受け止めてねー、そうじゃないと、前に進まないし、500日で妖精大森林に辿りつかないよ?」


「わかったわかった!行くよ、進むよ、歩くよ。」


現実を受け止めろってのが難しくないか?いきなり夢で旅して夢で死ぬまでに妖精大森林に行けなんて、誰でも戸惑うでしょうに。


「まぁ、今日はね、彗人君と会うだけでも一歩前に進んだって事で、良しとしよっか。スタートも遅かったから、そろそろ終わりかもだし。」


「スタートが遅い?そろそろ終わり?そりゃー悪うございましたねぇ!」


何か馬鹿にされた気分だ、それに遅いだなんて、あんまり言われた事はないぞ、まぁ、人間意外の者に言われた事は初めてではあるんだが‥‥


「ん〜ん、何とかなるよ、でもさ、ボク達絶対に助かろうね、500日もあるんだから、時間は‥‥は‥‥は‥‥は‥‥」


ん?ケイトが急におかしくなったか?


話しかけていたまんまで口を開け、瞬きもせずに私を見つめている。


「お、おい、ケイトちゃん?どうした?」


次の瞬間だった


「は‥‥は‥‥は‥‥ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!」


!!


一体何だ!?何が起こった!?ケイトがいきなり発狂したぞ!


うるさい、この娘はこんなうるさい娘なのか?それとも嫌がらせ?今までの可愛さが全て演技で本性が現れたか?


うるさい音はまだ止まない、一体どうすれば、まるで、まるで非常ベルや目覚まし時計みたいだ‥‥


ハッ!


目覚まし‥‥時計?






ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!



そう、気づけば目覚まし時計が鳴っていた。


リリリリリリン!


時刻は6時45分、いつもの朝だ。


目覚ましを止め、いつもの朝がやってきた。


あれはやはり夢だったのだろうか?それとも本当に妖精大森林を目指す旅路の異世界だったのだろうか?


と、今はそんな事を考えている場合ではない。今日は色々と忙しい1日になりそうだ。


9時には会社に出社し、プレゼンがある。

残念ながら今日は一日中会議になりそうだ。仕事終わりの退社前に上行結腸癌の報告を‥‥するようにするか。


しかしあの夢、一つ気になる。あのケイトとかいう小さな女の子は私に「もう毎回眠りに入るとこの地に来るからね!?」

そう言った筈。


今夜はそんな夢を見るのだろうか‥‥

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る