第8話 初仕事と冒険者ギルド

「あっ、女将さんこの短剣とナイフの代金を……。」

「そんな事、後でいいさね。武器は取り置きしておくから早く追っかけな」


「分かりました」


そして、ガンツールの後を追い掛ける。

直ぐに小山になっている鉄鉱石置き場に着いた。横にはスクラップと書かれた置き場があり鉄屑や失敗作であろう剣やナイフがあった。


「ガンツールさん、スクラップで練習しても良いですか」


「んっ。スクラップで何……そうか!分離で真鉄に出来るのか!加工した鉄や鋼はもうスクラップにしか出来ないと思ってたぜ。それは金を払ってダンジョンに捨てに行くしかないって思ってたスクラップだから、元に戻るなら大歓迎だ。やってくれ」


「はい」


スクラップの山に手を当てて、魔力を流す。

全てのスクラップに自分の魔力が浸潤するとそれ以上は魔力は流せなかったので「分離」

と唱えると黒いパウダーと茶色のパウダーと何色か表現し難い色のパウダーそれと銀に近い鉄色に光る真鉄の粒の山が出来た。


「出来ました。インゴットの型は有りますか。真鉄をインゴットにしたいので。ガンツールさん!聞こえますか?」


ガンツールは、口をパックリと開けたまま固まっていた。

俺が何度も声を掛けると、


「あぁ、あ~。何だ。すげぇなおい。あぁ、何だっけ」


「インゴットの型……。」


「おうっ、そうだったインゴットの型な。

今持ってくるから、こっちの鉄鉱石もやっちゃっておいてくれ」


「わかりました」


ガンツールがインゴットの型を取りに行っているうちに鉄鉱石の山に手を当てて、魔力を流す。どんどん流す。ガンツールが弟子たちを連れて戻って来てインゴットの型に真鉄を詰めている間もまだ流す。なかなか浸潤しんじゅんしないが初仕事で失敗はしたく無いからどんどん流す。スクラップの方は型に入れ終わった様で、こちらを黙って見ている気配がするが構わず魔力を流す。

ようやく、浸潤して魔力が流れなくなったので「分離」と称えると大きな鉄鉱石の山が真鉄の粒の山と、黒の粒の小さい山と、茶色のパウダーの山に分かれた。


「ガンツールさん、こっちも終わりましたから、インゴットの合成をしちゃいますね」


「おっ、おう」


そして、スクラップ置き場の前にある型に入った真鉄に魔力を流して「合成」と唱えてインゴットに変えて型から取り出すと、


「サミュエル、型から出すのはこっちでやるから、おめえさんは合成だけしてくれりゃいい。それにしても魔力は大丈夫かい」


「はい。まだいけます」


「駄目な様だったら、また次回でも良いんだだぞ。魔力切れは下手すると命に係るからな」


「分かりました。でもまだ大丈夫です」


「そうか、それなら何も言わねえ。宜しくな」


そして、型に入った真鉄をどんどんインゴットに変えて行く。

インゴットの数が200個になる頃、魔力が半分以下になって来たと感じたのでここまでにしようとガンツールに声を掛けた。


「ガンツールさん、どうやらここ迄です」


「そうか、ご苦労さん。それでも200個とは、それ以前に10トンあった鉄工石を全て分離させ更にスクラップまで。スクラップだけでも1トン、インゴット出来てたもんな。それにインゴットが200と云うことは4トンあるから。この粒の山でも3トンか!

これの方が鋼にするには使いやすい。

仕事はこれで終了で良いぞ」


「インゴットにしなくて良いのですか」


「あぁ。親方連中と協議するが、このままで良いと言うと思う。それじゃ、店で精算するか」


「分かりました」


こうして、初仕事を終わらせて店に戻る。


「精算だが、先ずはスクラップな、俺は別料金で1kg銀貨1枚で引取る。1000kgあるから。銀貨1000枚は無いから金貨9枚と銀貨100枚で頼む。

それで、鉄鉱石の方は6000kgあるから金貨30枚なんだが、そんな金は店に無い。

そこでだ、俺が紹介状を書くから商業的ギルドに行ってギルドカードを作って欲しい。

ギルドカードが有れば取引手形が切れる。

ギルドカードは預金機能があるから、金を渡さなくても手形でやり取りできる。

だから紹介状と取引手形を持って商業ギルドに行ってくれ」


「僕もここまでの金額になると思っていませんでしたから、それで結構です」


「後、その言葉遣い冒険者ギルドでは止めときな。下手に出てると思われて舐められるぞ。そうなれば、危害加えて来る輩に狙われるぞ」


「解った。気を付ける」


「おう、それじゃこれを持っていけ。あっ、

お~い、メグネット!サミュエルが帰るぞ!鞘出来てるか!」


「出来てるよ。今持っていくから待っておくれ」


「ドン、ドン」と階段を降りる音がする、

女将が降りてきて短剣とナイフの鞘を持って来ていた。それに短剣とナイフ2本に収めて渡してきた。渡す時に女将さんは、


「これは、仕事をしてくれたご褒美だ。

良い職業を授かっておめでとう」


と言ってくれた。俺は感涙して、


「あっ、ありがとうございますぅ」


時に声が震えたが何とかお礼が言えた。

ガンツールが、


「また、お願いする事があるかもしれねぃ。

その時は、宜しくな」


「こちらこそ、宜しくお願い致します」


「だから、敬語は使うなって言ってるだろ。」


「解った。それじゃぁな。また来る」


「おう、待っとるぞ。剣手入れ忘れるなよ。

刃こぼれしたら持って来いよ!」


「その時はお願い!」


こうして、 初仕事で大金を稼いだ俺は、冒険者ギルドに急ぎ足で向かった。

冒険者ギルドは大きな3階建ての建物だったので直ぐに見付けて中に入ると、定番の間取りだった。入口付近にはテーブルあり酒場になっていて、奥に受付カウンター左側に買い取りカウンターがあり、左隅に階段があって階段と買取りカウンターの間に奥に行く通路があった。

右側は簡易仕切りで個人ブースが5箇所設置されていた。 正面の受付カウンターに向かう、そして、


「冒険者登録をしたいんだが」


「登録ですね。文字は書けますか?」


「書けます」


「それでは、この用紙に記入をお願いします」


出された羊皮紙には氏名、年齢、職業、魔法技術、スキルを記入する欄があった。


「魔法やスキルは任意ですから、記入なしでも問題ありませんがギルドに情報をお教え頂ければ、魔法やスキルによっては指名依頼や報酬の良い依頼を優先にお願い出来ます。

勿論、ギルド員には冒険者の情報を漏らさない様に魔法契約を行っておりますので、情報が漏れる事はありません」


という事で、記入は名前と年齢、職業ここまでは必須なので記入して魔法は空欄で、スキルは職業でバレてしまう、鑑定、調合、粉砕、分離、合成、成形を記入した。


「これで、お願いします」


「はい、お預りします。 まあ、何と。冒険者ギルドの登録宜しいのですか?」


「この職業なら、薬師ギルドに入られたほうが良いと思うのですが」


「兼務は出来ないのですか?」


「いえ、そうでは無いのですが、生産職の方はあまり登録をしてい頂け無いもので……。それではカードを発行致します。

この珠に手を置いて下さい」


カウンターに置いてある珠に手を置く。

珠の後ろにカードが嵌め込める凹みがあり、そこにカードらしきモノを嵌め込む。


「魔力を流して下さい」


言われた通りに珠に魔力を流すと、


「はい、結構です。手を珠から離して下さい。こちらが冒険者ギルドカードに成ります。カードは表には等級と名前、年齢が表記されます。これは隠せません。

裏面は何も見えていないと思いますが持ち主が魔力を流すと生命力と魔力それと申告された魔法やスキルが現れる仕組みになっています。

続いて冒険者ギルドはG級からS級までの階級があり、G級は職業の授与を受けていない子供達の階級になります。

依頼報酬は、達成時納品証明サインが無いと支払われません。依頼者には依頼受付時に魔力の登録を行っている為、サインを偽造することは出来ません。

そして報酬支払時に税金分は先にさしひかれておりますので、商店の買取りより若干低くなっていますが、直接の商取引にはいくつもの手続きがあり、提出書類を出し忘れると捕まりますのでご注意下さい。

そしてその納税額で昇給が決まります。

ギルドカードの再発行は小金貨1枚となっていますので無くさない様にお気を付け下さい。

以上ですがなにかご質問は?」


「冒険者ギルドの加入年齢制限は?」


「基本ありませんが、1年依頼を受けないと失効に成ります」


「分かりました。ありがとう」


そして何事も無く、と言ってもまだ冒険者のかえってくる時間では無いから絡まれる心配も無かった。

冒険者ギルドを出て今度は、商業ギルドに向かった。





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