第16話 幸せとは舞い散る為に


私は...彼に。

彼に正式に謝った...のだが。

その事を凌駕するかの様に彼が助けてくれる。

私は驚きながら彼の姿を見ていた。


そう。


隆一の姿を、だ。

女子トイレでの一件があった後、何を思ったのか隆一はクラスの事について直談判にも出た。

それは...「私を隆一のクラスにしてほしい」という感じで直談判したのだ。

私は驚愕しながらその話を聞いていたのだが。

教師は気圧された様に「お、おう」となってから「説得はしてみるよ」という感じになった。


その事に隆一はホッとした様に胸に手を添える。

それから私を見てから笑みを浮かべた。

私は眉を顰めながら「どうして」と聞いた。

すると隆一は「単にそっちの方が良いかと思ったからだ」と回答した。

ありえない回答だった。


「...でも隆一。私は」

「知っている。だがお前はちゃんと俺に謝った。そして美里にも謝った。これは事実だ。だからこそお前の事が気になる」

「...足元をすくわれるよ。そんなの」

「お前が掬ったりしない人間だと分かってきたからな」

「...」


私は歯を食いしばる。

それから眉を顰めながら俯く。

そして私達は教室に戻る。

結論から言って私は家に帰された。

話し合いがなされる事になった。



「...彼女は...大丈夫か」

「分からんね。...だけどまあ大丈夫だとは思うけど」

「信じられない。イジメをするとか。...確かに過去は過去だけど」

「...」


その噂。

つまり女子トイレの一件は校内に広まっていた。

そしてその矛先は意外にもアイツが居るクラスに向けられている。

俺はその事は驚きだった。

案外、否定的なものが多くあるのかと思ったが。


「なあ」

「何だ?雄一」

「俺は...革命を起こすべきだと思う」

「...いや待て。革命って何だ?」

「彼女のクラス移転がもし駄目だったらさ。その時はクラスメイト全員で攻め込もうぜ。校長室でも良いけど」

「アホかお前は。冗談でも止めとけ。大変な事になる」


「俺はそうは思わん」と雄一は鼻息を荒くしてまるでゴリラみたいにそのままマジな顔をする。

俺はその顔を見ながら春香を見る。

春香は「まあ雄一はやるって決めたらマジになるもんね」と満面の笑み。

俺は苦笑いを浮かべた。


「冗談でもよせって。マジに」

「でも楽しいかもよ?案外」

「お前も何を言ってんだ。美里」

「そうだよな。美里ちゃん」


全くコイツら怖い事を言うね。

思いながら俺は溜息を吐きながら「でも」と言う。

それから俺は複雑な顔をした。

「まあ正直言ってアイツは反省している。だから何かしらの事はしたいって思うけどな」と言いながら、だ。


「...まあ過去は過去だが。そうだな。未来は未来だしな」

「そうそう。...だから出来る事をしたい」

「お前らしいな。隆一」

「...俺はアイツを呪っていたんだ。だけど今は違うって思い始めたよ」

「...そうなんだな」

「ああ」


そして俺は美里を見る。

美里も笑みを浮かべて俺を見ていた。

春香も「そう思える様になっただけ良いのかもね」と笑みを浮かべる。

俺は「ああ」と返事をした。


そして俺は考え込む。

それから俺は窓から外を見た。

そうしているとまた授業の時間になった。

俺は授業を受けながらまたふと外を眺め見てしまった。



「さーくん」

「...うん?どうした。美里」

「...私...彼女の家に行きたい」

「...何...」


帰宅しているとそう言われた。

俺はまさかの言葉に「!!!!?」となる。

そして「住所は分かるんでしょ?」と真剣な顔をする。


「いやまあ分かるけど?!」

「...じゃあ行ってみない?彼女の家」

「...」

「駄目かな」

「駄目じゃ無いけど。変わったなお前も」


それから俺はスマホを取り出す。

そして電話を掛けてみる。

すると数コール後に返事があった。

『何?隆一』と言う感じで、だ。


「...なあ。遠島」

『?』

「お前の家に行っても良いか。これから」

『え?...え?』


遠島も唖然としている。

そして『むしろ何でそうなるの』と聞いてきた。

俺は「お前に会いたい人が居る」と返事をしながら俺はスマホを美里に渡す。

すると美里は早速と言う感じで耳に押し当てる。


「遠島」

『...その声は坂本美里?』

「そう。坂本美里。...会いたい人っていうのは私」

『...!!!!?...何で?』

「私は貴方と今後の事を話しあいたい」

『...あれだけ酷い事をしたのに?私は』

「確かにね。...だけど私は...貴方は私に反省の言葉を告げた。だから私は貴方の事をもっと知りたいって思った」


そんな遠島は考える様な感じで無言になる。

それから数秒後に『分かった』と返事をした。


そして『...つまらない家だけど来るなら来ればいい』と言いながら姉の家の住所を教えてくれた。

俺はスマホを切ってから美里に向く。

美里はニコッとしていた。


「いやしかし。マジに行くのか」

「...私、彼女の事をまた知りたいって思ったから」

「...そうか」


俺は美里を見る。

美里は柔和な顔で俺を見てくる。

俺はその顔を見ながら頬を掻いてから「なら行くか」と返事をした。

駅に向かい始めた。

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