第20話 更に魔石回収。新しい世界儀をつくりましょう

  アキトは新しい世界儀となる3つ目の魔石を取りに行くべく、アーシェから情報を聞いていた。


「エンペラーストームドラゴンは東南東の方向に凡そ6万kmの位置にある砂漠にいますね。マップにマーキングします」


「今度は砂漠かぁ。でもこの魔石さえ確保しちゃえばとりあえず一段落するから頑張って行ってくるね」


「はい。今日は私もちゃんと付いていきますよ?」


「・・うん、ありがとう」


「モンスターの転移が上手く行かなかったんですよね?」


「うん、モンスターに動かれると、どうしてもそっちに気が行って転移の方の意識が疎かになって時間がかかっちゃうんだ」


「ふふふっ。まぁ何とかなりますよ。今日はその特訓もしましょうね」


「ありがとう、あーちゃん」


「砂漠であれば私もお役に立てるかと存じますので、私もお連れ下さい」


「うん、ありがとうアウラ」


「ガイアも!ガイアも一緒に行きたいの!」


「一緒に行ってくれるのガイア?ありがとうね」


「任せてなの!」


「うふふっ、頑張ってきてね貴方♪」


「うん、今日頑張れば、しばらくのんびり出来ると思うんだ。そうしたらエリや皆と色んなところに遊びに行けると思う」


「まぁ。それは楽しみにしていますね」


「にゃはは~良かったにゃん。エリミナーデ様。みんなで綺麗なところに行ってバカンスするにゃん」


「そうですね~のんびりするのは良いことですね~」


「じゃあ、行ってくるね」


「「「いってらっしゃーい」」」





「っと。見る限りの砂の原。まさに砂漠だね」


「そうですね。ここは海からも遠く、山に囲まれて雨が降りにくい場所なので。この世界を創った神様があえて色んな環境を創り、様々な生態系を生み出そうとしたみたいですよ?」


「そうなんだ。神様ってそう言う事も考えなきゃいけないんだね」


「そうですね。とはいえアキト様は主神になるので、そのあたりの事は下っ端の神様に丸投げ出来るんですけどね」


「そうなの?」


「だって何億、何兆じゃきかないくらいの星々の一個一個をちまちまと調整してたらいくら時間があっても足りませんよ?」


「まぁ、確かに」


「さって、エンペラーストームドラゴンはこっちの方向10kmってとこですね。行きましょう」


「は~い」


 アキト達が空中に浮くとアウラが手を周囲に向かって翳す。すると空気が綺麗になったのだろう。見晴らしが急に良くなった。


「もしかしてアウラ?」


「はい。風に巻かれ空中に漂う砂を、比重で重くして地面に落としました」


「そっかぁ、ありがとうアウラ」


「いえ、お役に立てたのなら幸いです」


 アキト達が先へ進むと砂の丘が見えてきた。


「あれですね。寝てるみたいです」


「あれ?あれってどこにいるの?」


「目の前にいるじゃないですか。マップを確認して下さい。あの丘全部そうですよ?砂に埋まって寝てるんです」


「あっ!っていうかドラゴンってこんな大きいのばっかりなの?」


「いえ、たまたま出会ったのが大型種ばっかりだったってだけです。地竜などのトカゲモドキは羽がないから別ですが、通常の羽のあるドラゴンなら100m位の小型種が沢山いますよ?」


「いやぁ、100mは小型って言わないかなぁ・・」


「まぁ、それはともかくせっかく寝てるんです。暴れる前にさくっと終わらせましょう」


「では。ガイア合わせて下さいね」


「はいなの」


 アウラが力を振るうと砂の丘の砂が浮かび、エンペラーストームドラゴンの姿が露わになる。そのまま今度はガイアが力を振るうと浮かんだ砂が圧縮され、まるで三日月のような刃となり、エンペラーストームドラゴンの上に浮かぶ。


 布団代わりだった砂が無くなった事に気がついたエンペラーストームドラゴンが目を覚ます。周囲を伺った後、アキト達を視認するといきなり口を開き力をため始める。口内には光が集まり、光量が次第に大きく強くなる。アキト達を敵と認定しドラゴンブレスで攻撃するつもりなのだろう。


「アキト様に弓引くとはこの無礼者め!己の分を弁えろ!」


 アウラがそのまま三日月の刃を落とすと、ザンッとの音と共にエンペラーストームドラゴンの首が落ちた。アウラはそのままアイテムボックスにエンペラーストームドラゴンを回収した。


「お疲れ様です。これで3つの魔石が揃いましたね」


「うん、ありがとうアウラ。ガイア。あーちゃん」


「さて、帰りましょうか」


「うん」




「おかえりなさ~い」


「お疲れ様です~」


「お帰りにゃあ」


「ただいま。エリ、ディーヴァ、フレア」


「さてアキト様。世界儀の作成は私の方でやっておきますが、台座に関してはちょっとご協力頂きたいのですよ」


「そうだね。どんな形がいいんだろう?芯を通してくるくる回るタイプ?でもそれじゃ芯を通した所の地図が見えなくなっちゃうよね?置くタイプでは持ち上げられないから困るよね?」


「世界儀は普通に浮かせばいいので、見た目の良い台座を創って頂ければそれでいいですよ?」


「えぇ?浮かすの?」


「あの国では車も浮かんでいますが?」


「あっ!まぁ、そうなんだけどさ・・」


「あの国はまだ重力を操作する技術も未完成ですし、その動力のエネルギー源となる魔石も確保出来ないので車程度しか浮かせられませんが、アキト様なら大丈夫。新しい世界儀に浮けと命じて力を振るえば良いだけなので」


「え~、そんな簡単な話なの?」


「神様ってそういうもんですよ?」


「まぁ、そうなんだろうけどさぁ」


「じゃあ、約束通り転移の特訓しますか?」


「あ、うん、よろしくね」


「では、外に行きましょうか」


「は~い」

 





 外に出たアキトとアーシェは山脈から海岸に出ると、砂浜の上に何個か大小様々な貝殻や石を並べ10m位離れる。それを後ろからエリと従属神達が眺めている。


「言われた通り目印を置いたよ」


「はい。じゃあ説明しますね。私は常にイメージが大切と言ってきましたよね?」


「うん」


「そしてアキト様はそのイメージを固め、発動するのにちょっと時間が掛かるために苦労していますよね?」


「うん」


「でも、それは考え方次第なのですよ。例えばアキト様。瞬間的に相手に届く攻撃って何をイメージします?」


「えぇ?・・えっと雷とか、ん~拳銃?」


「そうですね。まぁ雷でも良いんですが、分かりやすく拳銃にしときますか」


「うん?」


「アキト様、手をこう・・うん。こうして拳銃のようにして、指先から転移の魔法が拳銃の弾のように飛び出していくイメージです。いいですか?これでまず的に向けて練習して下さい」


「おぉ・・うん、やってみるね」


 アキトは指先を貝殻に向けると数秒かけて転移を発動する。すると指の先にあった貝殻はどこかに消えてしまった。


「当たった!」


「今度はそれを連続でやるイメージですよ?拳銃をバンバン撃つような、そんな感じでやってみて下さい。大事なのは当たったら飛んでいくというイメージです。どうぞ」


「分かった!」


 アキトはアーシェのいう通りのイメージを持って、連続で転移の魔法を放つ。外れることも多かったが、以前より圧倒的に早い間隔で連続で使用することが出来、石や貝殻を転移させることに成功した。


「おおぉ・・割と早く連続で出来た気がする」


「えぇ。0.5秒くらいで連射出来ていましたね。いい感じです」


「あーちゃんのお陰だよ!」


「ですが、まだです」


「え?」


「これでは圧倒的に手数が足りません。例えば前後上下左右から襲われた場合、今のペースで足りると思いますか?」


「う~ん、厳しいかな?」


「ですよね?なので、指から出る転移の弾の大きさを5mくらいにしてみましょうか」


「5m!?そんなに大きく?」


「えぇ。ただし、今度はその弾は貝殻だけに転移が効くとイメージして下さい」


「成る程、効果が決められた範囲攻撃か」


「その通りです。どうぞ」


 アキトがアーシェに言われた通りのイメージで転移の弾を放つと、ごそっと的にしていた貝殻が消えた。


「出来ましたね。アキト様流石です」


「何か分かってきたっぽい」


「それは良かった。いいですか?アキト様が御力を振るう場合必要なイメージは(何を)(どうするか)だけです。そこに(早く)とか(多く)とか(あてる)とか条件を増やしてしまうとその分アキト様が考える事が増えてしまいます。ならば、その増えた条件を拳銃等で代用するよう意識すれば楽になります」


「はぁぁ、成る程。要は使い方なんだろうけど、そこまで頭が回らないや」


「良いんですよ、アキト様。少しずつ成長していけば。ちなみに今の方法で火や風等の攻撃魔法を撃つとか、手でわざわざ狙わなくとも見えない拳銃がアキト様の周りに浮いているとか。沢山拳銃があるとか、そういうイメージで色々試してみましょうね」


「うん、分かった。ありがとうあーちゃん!」


 アキトは海上20m程の高さに浮かぶと、風魔法を機関銃のように連射したり、火魔法をショットガンの様にぶっ放した。そのうち動きながら魔法を撃つ事を練習し始める。それが慣れてくると、今度は自身の転移魔法を練習し始め、とうとう残像が残るほどの速さで転移魔法を続けて放つということまでやり遂げた。


 そんな様子を見てエリは微笑む。


「夫の成長を間近で見られるなんて、あぁ、なんでこんなにも嬉しいんでしょう。見て、あの真剣な表情。上手く行ったときの嬉しそうな笑顔。全てが愛おしいわ」


「エリミナーデ様良かったにゃあ。アキト様も随分自信をつけてきて、魂のしぼみもまた減ってきているし良いことづくめにゃん」


「ねぇねぇアーシェ。人間側はどの位で完成させてくるの?」


「下準備が整った所で国が正式に返答してきます。それが4日後ですね。冒険者ギルドは隣のビルを買い取って工事をするので約3ヶ月。王宮は一部、床をぶち抜いて工事するので1ヶ月半から2ヶ月。商人ギルドは本部に繋がっている倉庫を改造するみたいなのでこれも2ヶ月といった所です。なのでアキト様は早くて3ヶ月後には新体制での測量士としての仕事を再開します」


「3ヶ月ですか。その間はどうするつもりなのですか?アーシェ」


「勿論、アキト様の成長と人間・・というよりアーカイヴには隠しておきたい場所の選定とその保護をアキト様にやってもらうつもりです」


「人間には隠しておきたい場所ですか~?」


「えぇ、神に繋がる秘密や希少種族の隠蔽などですかね。今後もアーカイヴの使い手は現れるみたいですし、王国の重鎮がどれだけ優れてても、その下で隠れて悪いことを考える奴は幾らでもいますからね。そして現在、未知の部分にも転生者が居て同じ様に建国しようとしています。いずれアキト様のお陰で国交が始まるでしょう。そうなるとやはり情報は拡散されますから」


「成る程ね~アキト様もやることが沢山ありますね~」


「まぁ、ギルド会員証を置いて出かければ良いだけなので、そこまで緊急性はないです。ただ、神がこの世界を創り上げる時に使用したシステムがあって、いざって時のために使えるようにしたまま放置されています。人ではなかなか辿り着けない場所にはあるんですが、飛行能力や転移能力を使えるものがこれだけいると、折角のアキト様の仕事の邪魔をしかねませんので。そこだけは優先するべきでしょうね」


「にゃるほどにゃあ。アキト様も大変だにゃあ」


「まぁ、でもアキト様は今のところ上手く神の力を扱う方法を学び、人としての経験を積むことを上手い具合に熟せてますからね。課題はまだまだありますが、魂の修復も順調ですし、割と早く主神として覚醒するのではないでしょうか?」


「それは嬉しいですね~。となると、早めに御手を付けて頂けると良いんですが~」


「そうだにゃあ。もっとアピールしたほうが良いのかにゃあ?」


「そうね。そういう事なら2日に1度は夫としとねを伴にすることを許すわ。順番は任せる。だけど夫が嫌がることをしたら分かってるわよね?」


「ありがとうございます!」


「うれしいにゃあ。エリミナーデ様ありがとうにゃあ。アーシェもよくやったにゃあ」


「やったの!嬉しいの!ありがとうなのエリミナーデ様」


「ありがたい限りですね。感謝致しますエリミナーデ様」


「うふふ~ありがとうございます~エリミナーデ様。よかったですわ~」


 こうしてアキト本人が知らない内にハーレム計画が大きく一歩前進してしまうのだった。




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