第11話 何をとは言わないのですが二つほど


 とりあえずこれでクヴィスト家の面子、シュバルツさんの禊、俺のスローライフ計画、それら全てに良い方向で丸く収まったのではなかろうか。


 流石マリえもんである。


 一家に一台マリえもん。


 ちなみにマリエルに関してお父様には『奴隷商で購入した』という事にしているので、お父様がいくらマリエルの容姿を気に入ったとしても主人ではないお父様がマリエルに対して何かする事はないだろう。


 できるとすればマリエルに似た娼婦又は奴隷を買うか愛人を作るくらいだろう……お母様がそれを許してくれればの話なのだが。


 そんなこんなで今日は大収穫の一日であったと言えよう。


 そのきっかけを作ってくれたオリヴィアとプレヴォには感謝の気持ちとして屋台で売られている挙げ菓子を一個(値段にして小銅貨五枚)を、気が向いたら奢ってやっても良いかもなと思いながら、俺は眠りにつくのであった。





「ではこれからダンジョンに潜ってもらいます。その前にまず皆さんは二人以上のペアを作ってください。難易度Fとはいえ万が一のことを想定して、決して一人では潜らないように」


 翌日、学園の授業として近場のダンジョンへと探索するようで、二人以上でペアを組むようにと指示して来るではないか。


 そして当然のように、俺一人だけ腫れ物を触るかの如く避けられて、誰一人として誘ってくる者はいない。


「引くくらい嫌われているではないですか、マイマスター」

「言うな。その言葉は俺に効く」

 今日授業としてダンジョンを潜るというのは、事前に配られていた時間割表で知っていたので、こうなる事を想定して予めマリエルをストレージから出して連れて来ていた。


 ちなみに連れて来たことを教師に伝えると、恐らく教師も俺が一人溢れてしまう事を想定したのだろう。


 二つ返事で了承してくれた。


 というか、これで今日一番の悩みの種が無くなったと明らかに安堵していたのだが、その気持ちは分かるので何も言わないでおいた。言ったところでどうなるものでもないしな。


「フン、高等部にもなって家の使用人を連れてくるなど恥ずかしくないのか? 子供でもあるまいに」


 そんな俺に対してプレヴォが複数人の仲間を伴ってやって来ると、見下すようにそう言ってくるではないか。


 そのプレヴォの隣には当然オリヴィアの姿がある。

 

「何ですか? この失礼な猿は? マイマスター。お望みとあらば潰しましょうか? 何をとは言わないのですが二つほど」

「別に良いだろう。言わせておけ。どうせ口で罵る位しか能がないのだろう」


というか、オリヴィアの家は資金繰りによる錬金術で一生吸い上げる寄生元でもある為これ以上何かするという事はないのだが、プレヴォの家に関してはまた別問題である。


それを当の本人達が、自分がしでかした事の重大さに気付いていないのだからあながち罵るしか能がないというのは間違ってはいないだろう。

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