1.名前
「ねぇねぇ、千恵ちゃんは自分の名前って好き?」
唐突に本当に唐突に、わたしは千恵ちゃんに尋ねてみる。
「あたしは両親がすっごく考えて付けてくれた名前だから好きかなぁ。千恵ってね、神さまにたくさんの幸福を与えられますようにって意味で付けてくれたんだって」
「そうなんだ。わたしは自分の名前が嫌い。だって、お婆ちゃんの名前みたいなんだもん」
わたしは『はあ』と大きなため息をつく。
「そんなこと言ったら、せっかく考えてくれた両親が悲しむじゃん」
「でも、本当のことだもん」
「じゃあさ、インターネットで名前の由来を調べてみよう」
〝いつまでも幸せに。円満な家庭を築き、末長い繁栄を願って。周りを助け、癒す存在になることを願って〟
「――だってさ」
思いのほか良いことが書かれていて、わたしの気分は良くなる。
「ありがとう。千恵ちゃんのおかげで自分の名前を少し好きになったかも」
「名前って色んな意味が込められていて面白いよね」
〝あたしたちの赤ちゃんは何て名前にしようか?〟
ニマニマ笑いの千恵ちゃんだったが、わたしは聞こえなかったことにした。
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