第19話エトノス④
「く、クヨウ――!」
「心配は無用。元よりあの男の狙いは小生である。ここからは小生の勝負とさせてもらう。大八洲の闘争をあなたにもお見せしよう」
後は何も言わぬ、と小生がイワンに向き直ると、一瞬強張ったイワンの顔が、次の瞬間には嘲笑の笑みに歪んだ。
「へっ、ようやくその気になったか。だがどうするんだ? テメェはどういうわけだか魔力がゼロ、魔法が使えないただの剣士だろ?」
やれやれ、まだ「その地点」か。
呆れ果てている小生を遠慮なくイワンは蔑んだ。
「やめとけやめとけ、無理して魔法なんぞ使われて魔力欠乏でくたばられたら楽しみ甲斐もねぇだろ。こっちもナターシャに対して言い訳ができねぇのは困るんだがな……」
瞬間、小生は右手を上げ、掌をイワンに向かって翳した。
途端に、ボン! と音がし、イワンの足元が土塊をめくり上げた。
は――? と、イワンが驚いたように足元を見た。
「これは少々恐れ入った。あれだけ叩きのめされておいて、まだ目が開かぬとは。――小生に魔法が使えないと、この期に及んでまだそう考えておるのか?」
「な、何――!?」
「本当に良い刀とは鞘に納まっているもの。ここぞというときにこそ切れてこそ本当の名刀である。要するに――貴公はただただ意識もせずに垂れ流している魔力の量を自慢しておるだけのこと。糞も小便も漏らし放題なのを誇る馬鹿は小生の国にはおらぬ」
イワンの顔が紅潮した。
「て、テメェ、言わせておけば――! やっぱりあの魔力測定のときには何か特殊な魔導具を使って――!」
「そうだ。それが貴公の思考の限界なのだ。仮にそうだとしたなら、何故小生はそんな無駄な事をする必要があった?」
小生は遠慮なく、その短慮をせせら嗤った。
「やはり貴公は力の根本、魔力の根本を全く理解しておらぬ。だから力の入れ方を誤り、何度でも小生に転がされる……そう言えば、昼間の勝負で貴公は三回ひっくり返ったな? あと二回で小生の完全勝利ということにさせてもらうぞ」
イワンの両眼が零れ落ちんばかりに見開かれた。
「こ、こ、この野郎ォッ……! やっぱりテメェだけは勘弁ならねぇ! ミンチにしてやらァ!」
「おや、手加減して勝てる相手ではないことすら伝わらなんだか。あれだけ転がしてやった甲斐もないとは残念なことよ――」
「ほざけ! 所詮魔法が使えたところで録なエトノスも持ってねぇド三流国家には違いねぇだろうが! 冥土の土産に【支配】のエトノスの強さを教えこんでやらァ!!」
その絶叫とともに、小生の周囲に次々と閃光が発した。
屹立した紫電の数は数えるのも億劫な数――成る程、雷撃の牢獄、ということか。
紫電の向こうに見えるイワンが赤黒い顔で叫んだ。
「この雷撃はさっきそこのメス犬に喰らわせたのとはモノが違うぜ……! 触れただけで全身の血が蒸発する程の高電圧だ! まっ黒焦げになって転がれや、未開国のサル野郎――!」
言い終わらぬうちに、小生は刀の鯉口を切り、雑草を薙ぎ払うかのように紫電を一閃した。
瞬間、まるで靭やかなる鞭を一撃したような、ピシッ――という音が発し、紫電の牢獄が消滅した。
「どうだイエロー! もう降参も参ったも聞かねぇぞ、ギャハハハハ! リューリカの人間を本気で怒らせるからこうなるんだ、ザマァ見やがれ! あと十秒もすりゃテメェは人間の黒焼き――に――はっ?」
イワンの耳障りな声が、それを見て尻すぼみになった。
小生は小首を傾げた。
「終わりか?」
◆
無双乱舞開始です。
「面白かった」
「続きが気になる」
「いや面白いと思うよコレ」
そう思っていただけましたら、
何卒下の方の『★』でご供養ください。
よろしくお願いいたします。
【VS】
もしよければこちらの連載作品もよろしく。ラブコメです。
↓
『魔族に優しいギャル聖女 ~聖女として異世界召喚された白ギャルJK、ちょっと魔王である俺にも優しすぎると思うんです~』
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