悪役デザイナー

「あぁーーーっ、思いつかん!」


 あっ、また母が頭を抱えている……!


「何事ですか、母上!? また発想がまとまらない病ですか?!」


「いやー、今回は悪役が思いつかないのよ〜」


「……え? どういうこと?」


「ワタシ、悪役が出てこない話しか書いたことないから、悪役ってどう作れば良いかわからないのよ〜」


 そうか。たしかに母の作品で悪役は見たことがない。


「娘、何かいい案ない? 今は毒を使うキャラとラスボスの設定で悩んでるの」


「あー、そういうキャラね。私のよく使う設定でよければあるよ」


「おっ、例えばどんな?」


「例えば毒を使うキャラを、常識の通じないサイコパスみたいなキャラにしてみる……とかどうかな」


「サイコパスみたいなキャラ……? どんな設定やセリフがいいのかしら?」


私(オタクモード)

「あー、私ならキャラを熟女にして〜、『んふふ、可愛いネズミちゃんね、いじめ甲斐があるわ』とか『ドブネズミなんて何匹集まっても同じじゃない、どうしてわからないのかしら?』みたいな感じのお高くとまったセリフをナチュラルに言わせて〜、死ぬ時はパニックにするのが良いかな……(めっちゃ早口)」


「え、え??」


私(オタクモード)

「あとはラスボスの場合は使役系の能力が似合うから操り人形とか魔力で使役とか色々あるよね、もし操り人形系なら最初はパペットで最終奥義で死体とか使ってきたら正直興奮する……(マシンガンの如き早口)」


「な、なるほど……?」

⬆︎豹変ぶりについていけてない


 そう。私は悪役の設定を考えるのが大好きなのだ。

 悪役の設定を考える時はこんな風に、オタク特有のマシンガントークを展開する。

 さらに悪役の描写をする時は筆がノリノリになる。


 あぁ、私の『悪役の設定に対する愛』をもっと語らせて欲しい!!


「……で、どう? 良い案あった?」


「よ、よく分かんない……。というか、悪役の設定って大変ね。そんなに深くまで設定するのね」


「あ、ここまでやるのは少数派……かも?」


「うぅ、ワタシはアンタみたいに悪役の設定がポンポン出ないわ……」


「あっ、だったら今後悪役の設定は私に任せてみたら? (本音を言うと任せて欲しい)」


「あっ、それ良いわね。じゃあ今後、悪役はアンタ監修って事で」


 やったぁああああ!


「いやー、助かったわ。ありがとね〜」


 いえいえ助かったのはこっちですよ母上!!!




 こうして、私は悪役デザイナーに任命されたのでした。

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