Sランク冒険者に憧れてるけど、死ぬのが怖いので、自己回復魔法を極めて不死身になる事にしました

ゆーき@書籍発売中

第一章

第一話 僕がSランク冒険者を目指す理由

 灼熱の炎が天高く舞い上がる村で。

 逃げ遅れた僕は見た。


「グルアアアアァ!!!!!!」


 大地を揺らす程の咆哮を上げる、見上げる程巨大な漆黒のドラゴンを。

 北にある”龍の大山脈”から、気紛れに飛んできたのであろうそいつは、震えて動けなくなっている僕をその金の眼光で睨みつけるや否や、口を半開きにさせた。


「ひぃぃ……」


 自分の未来を想起した僕は、逃げる事すら出来ずに、より一層震え出す。

 そして間もなく、その口から灼熱の炎が産声を上げ、僕を灰に変えんとばかりに放たれようとした――次の瞬間。


「はああああ!!!!!!」


 力強い大音声が響いてきたかと思えば、ひゅん!と、背後から何かが飛来してきた。


 直後――


「グガアァ!? グアアアアアァ!!!!!!!」


 灼熱の炎では無く、苦悶の咆哮を上げ始めるドラゴン。

 よく見ると、ドラゴンの口に大きな槍が突き刺さっているのが見えた。

 すると、ザっと僕の背後から現れる、1人の巌のように大きなおじさん。


「遅れて悪かったな。今、片付ける」


 そんな、自然と任せられるような言葉と同時に、おじさんは背中の大剣を手に取った。

 そして、光を刀身に纏わせたかと思えば地を勢いよく蹴り、あのドラゴンに斬りかかる。


「はっ! はっ! はあああっ!!!!!」


「グルァ! グルアア!!! グルアア、アアァ……!」


「なっ……」


 凄まじい戦いを前に、僕は逃げる事すら忘れて、その戦いに魅入ってしまった。

 やがて戦い終わり、ドラゴンは全身から血を噴き出させながら、地面にズドンと横たわる。


「ふぅ……。おいおい、坊主。逃げなきゃ駄目じゃ無いか」


 ドラゴンを倒したおじさんは、へたり込んだままじっとしている僕の方を向くと、そう言ってきた。

 だけど、僕は衝動のままにこんな事を口にする。


「おじさん、凄い! 凄い! ねぇ、おじさんって何なの?」


 興奮し、目を輝かせながら言う僕を前に、おじさんはどこか照れくさそうな、困ったような、そんな笑みを浮かべながら口を開いた。


「そうだな。おじさんの名前はロバート。Sランクの冒険者だ」


「ロバート……Sランク冒険者!」


 この日から、僕はSランク冒険者に憧れるようになった。

 そしていつの日か、ロバートさんのようなSランク冒険者になりたいと。


 だけど――

 ―――――

 ――――

 ――


「……夢、か」


 この夢を見るのも何度目だろうか。

 そんな事を思いながら、僕はベッドから起き上がると、窓から差し込む朝日を見やった。


「よし。今日もやるぞ!」


 そう意気込むと、僕はベッドに立てかけてある木剣を手に取り、家の外へ飛び出した。そして、家の裏手に回ると、木剣を構えて日課の素振りを始める。


「はっ! はっ! はっ!」


 6歳の時に見た、を脳裏に浮かべながら、僕は必死に木剣を振り続ける。

 それを続けていると、家の陰からすっと何人もの人影が姿を現した。

 8歳ぐらいの――僕と同じぐらいの年齢の子供4人。

 彼らはにやにやと僕の事を嘲笑いながら近づくと、皆それぞれ口を開く。


「スライム如きにビビッて怪我するお前が、な~に馬鹿みたいにやってんだか」


「もう、やめろよ。無駄だろ?」


「どうせ無駄だよ」


「ほれ、悔しかったら魔物殺してみろよ?」


 次々と突き刺さっていく罵倒の言葉。

 それに、僕はただ涙を堪えて耐え続ける事しか出来なかった。

 だって、事実だから。

 模擬戦では上手く戦えるのに、いざ本番となった途端、身体が竦んで動けなくなるんだ。

 そして、傷つけられた瞬間、僕は恐怖のあまり逃げ出してしまった……


「どうしたら、いいんだろう……」


 一頻り罵倒した4人が去った後、気が付けば僕はそんな言葉を零していた。


「僕は……魔物が怖い。死にたく、無い……」


 魔物と戦えば、スライムだとしても、死んじゃうかもしれない。

 傷を沢山つけれられれば……僕は死んじゃうんだ。

 そう思うと、怖くて、怖くて……

 お父さんとお母さんは、「怖いと思う方が普通」と言って励ましてくれるし、実際そうなんだろうけど……


「でも、ロバートさんみたいなSランク冒険者に、僕はなりたい……!」


 魔物への恐怖を十二分に感じながらも、僕がこうやって鍛錬を続けているのは、一重に”Sランク冒険者になりたい”という強い思いが、僕を突き動かしてくれるからなんだ。

 だけどそれでも、魔物と戦おうとすると、足が竦んじゃう……


「怖いって思わなければ……違う。どんなに傷ついても、直ぐに治せれば……――あ」


 ここでふと、僕は思いついた。

 突然だった。


「そうだ! 回復魔法を使えるようにして、傷ついたら直ぐに治せばいいんだ!」


 それがいい!

 そうすれば、死なない!

 僕が冒険者になるのに、これ以上の方法は無い!

 思いついた僕の行動は早かった。


「よし! 早速魔法の勉強をするぞ!」


 Sランク冒険者になる為に、頑張ろう!

 僕はそう意気込むと、木剣を片手に、家へ帰るのであった。


 こうして、僕――リヒトのSランク冒険者に至る道は、本当の意味で始まった。


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