第9話 魔王100日勇者1日

 ミリア、私の花嫁修行、いわゆる料理修行もひと段落して私達ははじまりの町の酒場に行く事に。雨頭の師匠が言うには送別会だそうだ。私とキティは明日はじまりの町を旅立つ事に決めたのだから。


 酒場、ウサギのしっぽ。そこにはカエルモンスター雨頭冬夜、ゴスロリ魔女ティーナ、炎の魔法使いミリア私。天才少女剣士キティで丸テーブルに着く。料理と酒とジュースが運ばれて宴会が始まる。


 遠くのテーブルに黒いローブの二人組がこちらを観察してる。私達はその時は気づかなかった。


 師匠雨頭はテーブルの食事を皿に盛ってくれる。そう言うとこは優しいんだよね、この師匠。鍋奉行だと言うのだそうだ。異世界では。


 雨頭冬夜、


「さあ、食え。明日から魔王退治の旅なんだからな。」


 キティ、


「ハイ。」


 私、


「はーい。」


 私とキティが食べ始める。雨頭とティーナはお父さんとお母さんの様に微笑んで見てる。


 師匠は私に笑いながら話しかける。


「ああ、そうだ、ミリア。この間勇者ファスターに会ったぞ!!」


 食べ物を吹き出しそうになる私。


「え?! エエッ!!」


 聞き捨てならない。あの勇者ファスター!! 私をざまぁしてパーティから追放した男!! 名前を聞くのも嫌!! 師匠は私の気持ちを知らずに話を続ける。師匠はいつもデリカシーが無い。


「あいつ、この間、酒場で会ってな!! 酒飲んでるうちに仲良くなったよ。時々修行も付けてる。いやあ、人って変われるんだなあ。勇者の肩書きも伊達じゃねえなあ。」


 はあーーーーーーーーーーッッ!!!!!!(怒)


 師匠!!!! 私は驚いた。勇者ファスターは弟弟子って事ッ??!! 鳥肌が立ってきた。私は赤くなり怒りとトラウマで倒れそうだよ。


 それなのに!! 師匠は!!


「まあ、上手くやれよ!! 人間関係なんてそんなものだ。」


 雨頭はカエルの手で私の肩をポンと叩いてきた。本当なら殴ってやりたい。師匠は殴ろうとしても殴れないくらいの強者だから、それ知ってるから殴らない。ぶっ殺してやりたい。それを見て察したティーナさんは師匠を抱え始めた。


「まあ、冬夜さん。それセクハラですよ。」


 そうじゃ無い!! そうじゃ無いんですよ。ティーナちゃん!!それでも師匠は自論を辞めない老害。


「良いんだよ、ミリアも大人になれ。お前の許容範囲を広がる良い機会だ。昨日の敵は今日の友。味方は多い方が良い。」


 遠くの黒いローブ二人組が観察してる。何か話し始めているが私はそれどころでは無い。泣きそう。泣いてやる。


「ふえーーーん。だってだって、あの勇者私を追放したんだよ?? 私が嫌いなの知ってるでしょ??」


 女子として最大限の訴えをした。師匠はそれでも私に強要してくる。


「それがどうした? 死ななきゃいつどんな奴と一緒に飯食うか分からないのが人生だ。」


 私の殺意が限界を超える。よし、魔王倒したら次は師匠殺そう。とりあえず師匠老害だからかわい子ぶっとこ。


「ふえーーーん。師匠のいじわるーー(泣)。」


 一応かわい子ぶってみたら酒場の遠くで爆発音がなった!! え?! 酒場の皆んなが私を見る。 いや、私じゃ無いし。


「ガハハハハハッ!! ミリアの女!! 見つけた!! おではゴーレム山田!! 黄の魔王ゴーレムダ山田のレプリカ!! ミリアーー!! ここで死んでもらう!!」


 自分で名乗ってちゃ世話ないわあ。隣の黒ローブのギャルは頭を抱えて怒っている。


「ちょっと山田!! 今見つけたからって早まり過ぎ!! 私達が危ないでしょ!!」


 ゴーレム山田とサキュバス・テトジャスティーは黒ローブを脱ぐ。モンスターだったのね。


「ゴーレムダ山田様、聞こえますかあ?? 進軍お願いしまーす。」


 あ、シルフね、精霊魔法のメッセージ飛ばす奴。酒場でも使えるのかな??


 師匠雨頭冬夜はハッとして青ざめる!!


「なんだってッ??!! しまったッ!!」


 冬夜はそのまま酒場を飛び出る。そして酒場の前で全力でカエル跳び!! 20メートル上空に飛びはじまりの町の地平線を睨む!! 蠢くモンスターの大群、アレはゴーレムとオークの軍団か?? はじまりの町の丘の上から地滑りのように軍勢が近づいてくる。何万ぐらいか? 凄い数だったようだ。


「や、やべえな、コレはッ!!」


 さっきまで冗談を言っていた師匠は酒が抜けた。絶体絶命のようです。始まりの町。



                  つづく

 

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