卒業5

 ガブリエラ達は、庭を歩き出した。夜の庭には、二人の他に誰もいない。涼しい風がガブリエラの頬を撫でた。

「素敵な庭ですね」

 庭の花を見ながら、ガブリエラが言った。

「そうだな……ガブリエラ」

 歩みを止めて、マティアスが真剣な顔でガブリエラを見つめた。

「何でしょう?」

 ガブリエラも、歩みを止めてマティアスの方を振り返る。


「旅立つ前日にこんな事言われても困るかもしれないが……俺の、恋人になってくれないか」

「え……」

「俺はヴァンパイアだし、九歳も年上だし、気持ちを隠しておこうかとも思ったけど……無理だった。どうしようもなく、お前の事が好きなんだ」


 ガブリエラは、両手で口を押えた。

「……これは、夢ですか?」

「夢じゃない」

「……本当に?」

「本当だ」

 ガブリエラは、目に浮かんだ涙を拭うと、マティアスに向かって微笑んだ。

「……私も、好きです。大好きです!」


 次の瞬間、マティアスはガブリエラの身体をぎゅっと抱きしめていた。

「……ありがとう……」

 そして二人は見つめ合うと、唇を重ねた。


 翌日の朝、ガブリエラの家の前にはマティアス、リディオ、ベルナルド、プリシッラ、ロマーナが集まっていた。ガブリエラを見送りに来たのだ。

「皆さん、今までありがとうございました。二か月後、また仲良くして下さい」

 ガブリエラが言うと、「お元気でー」「成長した姿を見るのを楽しみにしているわ」など、様々な言葉が返ってきた。


 ガブリエラは、穏やかな笑顔でマティアスを見つめると、声を掛けた。

「……マティアス様も、お元気で」

「……ああ」

 マティアスも、優しく微笑んだ。


「あれー?お二人共、何だか雰囲気が違う気がしますねー。何かありましたかー?」

 プリシッラが聞いた。どうやら勘が鋭いらしい。

「……実は、私、マティアス様と……恋人同士になりました」

 ガブリエラは、少し顔を赤くしながら答えた。皆驚くと思ったのだが、どうやらそれは間違いだったらしい。


「そうなるだろうとは思っていた」

「むしろ告白が遅い気がしますー」

「あれで愛してなかったらびっくりするわ」

 そして、二人は皆から散々ひやかされた。


 しばらくして、ガブリエラを乗せた馬車は、皆に見送られながらサヴィーニ邸を離れていった。空は、これからの明るい未来を予感させるような青色をしていた。


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