変態達の歴史〜ヘンタイんの過去②アザスとラブコメ

 ツルペタロリ帝は言った。


『我はヘン一族、中でもダイン、そちを高く買っている』


『ありがたき幸せ』


 やった、脇汗ターイム!ちなみに俺の名前を『ダ』と濁らせる人が最近多い。


『貴殿は本当に和平を望む者か?』


 何だ、その話か。解散だ、解散。

 てっきりこのツルペタのくせに脇の開いた軍服を着てるから、脇汗をクンカクンカさせてくれるかと思ったが…これから『ならば脇を舐めい』とはならないな。


『えぇ…帝と同じ考えであります、嘘偽り無く…』


 ツルペタは暫く考え苦虫を噛み潰した様な顔で言った。


『ならば…ここだけの話…そちの暗殺術で幹部…特に主戦派の中でも七将…奴らを暗殺…可能か?『無理です』


『え?』


 俺は正直に即答した、無理だからだ。

 姉と比べて俺は暗殺スキルに長けている。

 先述の『後の先』、そしてこちらから先手で2手うてる『先の先』、条件が揃うと必ず首を刎ねられる『首羽』…これだけでただの人なら、時間さえあれば殺せる。ただの人ならなぁ…


 七将はなぁ…まぁ王国の勇者共もだけどモンスターなんです。あの人?人じゃないな、怪物共はオーバーキルしないと死ななかったり生き返ったりする。

 つまり首をはねた程度では死なない。

 帝国特有の魔物食文化、そこから化けた者達。最早、魔物を越えた変な生き物。


『殺しきれないのでバレます。そもそも殺しきるのに同じ七将クラス、もしくは王国の勇者職やら希少クラスでないと殺しきれません』


 ちなみに何故知っているかというと、姉がそうだからだ。

 姉という事を除いたとしても殺せる気がしない。


『ただし…方法はあります…それは…』


 そして俺は、またもやアザスを売った。

 先程、会議で話していた方法を実行する…事にする。

 しかし、クリアしなければならない事がある。


 一つ、王国一の影の集団を潰す、アザスの裏切りを隠す為に。


 一つ、こちらの化物を戦場で一つでも多く潰す為に、王国の伝説の魔女を引っ張り出す。

  

 一つ、大規模戦闘形態、決戦の形で全てカタを一回で付ける。

 両陣営の主戦派はその場で死なねばならない。


『その為にアザスから聞いている王国内での和平派と帝国の和平派が繋がる必要があります』


 王国は詳しく知らないが帝国は知能と忠誠がやたら低い一騎当千の将軍がいるワラワラいる、これで内輪で揉めれば日本の戦国時代と同じになる。

 いや、それより酷い事に…


『互いの主戦派を戦場で皆殺しにします』


『え?そんな事…できるのか?アザス…アザスか…四聖と言われ…王国のスピカ教で女神に最も祝福されし乙女…スピカ騎士団、団長アザス…信頼出来るのか…?』


『出来ます』『お?そ、そうか…』


 アザスはやるだろう…いや、やらないとアザスも死ぬからな。やるんじゃない、やらざる得ない、頼むぜ。



 こうして御目付けを連れてアザスに話を付けに行った。


 ちなみに今回の王国訪問の際に王国の暗部…アサシンギルドを潰さなければならない。

 王国内の主戦派と繫がっているからだ。

 影で計画を動かすのに影が複数あっては話にならないからな。


『やぁ!タイン、今日は何の話だ?カップリングの話なら大歓迎だ』


 ウェーブのかかった金髪、御目付けが付くという事で鎧を着ている。

 アザスは俺への警戒心はゼロだ。何も性格という訳では無い。

 俺のスキルを教えたからだ。


 敵意を持った相手への自動発動スキル『後の先』からの『首羽』を。

 つまり敵意無く偶発的に攻撃すれば俺を殺せる。

 例えば、《アイテム》を使うとか。


 アザスも教えてくれた。スピカ教の秘密。

 女神の祝福『スピカ』

 どんな死に方をしても処女性を失う事で一度まで全回復をして蘇る。

 そして攻撃に対して一定以上の威力がなければ自動で結界が弾く。

 つまりして殺す、もしくは殺す気でやると死ぬ。


 互いの信頼の証が殺す方法とは、残念な関係だが…


『同じ転生者で話がわかるからな、そういう者は大事にしないと』


 とはアザスの弁。


 ちなみにアザスは当時、いや、この時まではカイゼル髭を付けて無い。

 しかしこの日を境に付けるようになる、意味がわからないが。



 俺はアザスに王国帝国の境界線、スピカ教の神殿て落ち合う。

 帝国にも多少スピカ教信者がおりその為の神殿だ。帝国は基本スピカ教は信仰していない、信じるのは己と力のみという馬鹿さだからだ。


 そして…今回の計画を一通り伝えた。


 ツルペタ帝経由の王国の和平派とも話を付けるとの事。

 俺達は決戦を行い主戦派を皆殺しにする事。

 その為に王国のアサシンギルドを潰し和平派動きやすくする事。

 隠遁している魔女やら剣聖を引っ張り出す事。


 すると予想外の答えが返ってきた…まるで少女漫画に出てくる様なキツめの令嬢、俺が1ミクロンも興味無い大きな胸を尻が震える。


『ちょっと待って、そんなにいっぱい分からないな、何でそんなにいっぱいあるんだ…ちょっと分からないな、そんなに沢山の事出来ると思うか?カップリングの話じゃないのか?』


 何でコイツ狼狽してんだ…


『あぁ、最高のカップリングだ。広大な戦場、多分何十万という兵士がぶつかる中、四聖・乙女騎士団団長…麗しの乙女・聖騎士アザスと帝国の必殺七将の内の五将相手に組んず解れつの殺し合いだ。安心しろ、そっちの勇者次第でカップリング相手が減るぞ』


 ズシャ…


 アザスが膝を落とした…一筋の涙を流した…


『私は四聖の中でも最弱…それに…』


 それに?


『私は《する》より《見る》ほうが好きっていったじゃないかぁぁぁ!?』

 

 王國帝国両方のお目付け役が影で見ている中で、アザスは慟哭した。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る