圧巻の描写力が紡ぐファンタジー

 偽名を貫くアリオーシュとその師匠クロムウェルとが師弟の仲として修行の旅に出る物語。
彼女はかつて民に反逆されたカヴォルスト王国第三王女。家を隠すために偽名を貫き、7つの弟を生贄に捧げ生き長られた過去。陽暴症という陽光を浴びると苦痛を生じ、陽光を嫌う特性を併せ持つのだが、過去と何か関係があるのだろうか?
 その師匠であるクロムウェル。口が達者で少々歪んだ王女に手を焼きながら師匠としての立場で丸く収めつつ、彼女との心の距離が近づいていく展開も見逃せません。
 とにかくバトルシーンが秀逸で、圧巻の語彙力と描写力とがこれを支え、硬質な文体と臨場感あふれる精緻としての筆力が今を、世界を、そして読んでいる私たち迎えます。
 いくつもの謎を引っ提げ、想像が膨らむその先を見届けたくなる、ミステリアスで壮大なファンタジー小説です。

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