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こここ
はじまり
2010年4月15日19時。東京は更地とかした。あるのは瓦礫と黒焦げの死体と血だらけの女性と黒い服を纏った2人、そして1人の少女。少女は何が起きたのか分からなかった。分かるのは目の前で血だらけになり倒れているのが自身の母親であることと黒い服を纏った1人が母親に拳銃を向けていることだけだった。下校中、友達と別れた所までは覚えているがそこからが思い出せない。状況を理解しようと必死に抜けている間の記憶を思い出そうとするが、この少女にはここが東京である確証すらない。無理だと悟るやいなや目の前の母親に害を与えようとする黒服を睨んだ。それしかできることはなかった。少女は瞬きを忘れ母の命を乞うような目ではなく単純な殺意を込めた目で黒服を睨んだ。が目の前に居るものが自分とは違うナニかだと知り恐怖した。黒服はフードを被っていて顔が見えなかったがそれだけではなかった。フードの中は真っ黒であり、首から上が全く無いようにも見えた。
ドンッドンッドンッ
唐突に黒服は引き金を引いた。低く鈍い音と高くか細い声と血と肉の音が聞こえた。唐突なことでも少女は母親が死んだことを理解した。少女は瞬きでもしたのだろう。さっきまでいた場所から離れた黒服はもう1人の10mほどの場所に待機していた黒服の方へと歩いていた……
2020年4月15日5時30分
彼女、『伏見 凛』はスマホのアラームで目を覚ました。見た夢はあの日の夢である。異常にかいた汗を拭きながらスマホでネット記事を確認するとどこでも『東京大規模爆発事故からちょうど10年』だの『たった数年でどうやって東京は元の姿に戻ったのか』だのといった記事でいっぱいだった。……東京はあの瓦礫の山からたった数年で元の姿を取り戻し、さらに郊外だった場所にビルを建てるなどで東京と呼べる場所はかなり広くなった。気味が悪いほどに。何より世間ではアレは不発弾が起爆し、それがパイプ内のガスに引火したことにより東京が焦土と化したということになっている。もちろん最初は国の発表に違和感や疑問を持つものも多かったが様々な国からの援助や数十を超える数の他国からの投資による復興作業などの国の姿勢を見て、まるで洗脳でもされたかのように発表を信じた。
「あの黒服は一体……シャワーでも浴びて汗を流そうか」
ため息をついてそう独り言をした彼女の目には涙はなく虚だけだった。
この時の彼女は自分に秘められた力と、これから自分が辿ることになる『始まりの物語』という運命をまだ知らない。
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