第29話 山賊退治1

「やっぱり、山賊ってたくさんいるんだね」


「プロファイルした山賊だけで12ですか。これ以外にも無名の山賊もいますからね。よくあるのが、村自体が山賊化しているケースですね」


「村自体が?」


「珍しくはないですよ。半農反賊って感じですか」


 僕は冒険者ギルドで山賊情報を手に入れつつ、

 周囲の山賊をプロファイルした。

 ヨンナンの冒険者ギルドに

 認知されていない山賊もいくつかいる。

 半径50~100km程度、

 攻略対象は12となった。


 とりあえず一番近くの、

 十キロほど離れたところに拠点のある山賊に、

 ランベルトと乗り込んでみる。



「ここの大将は誰?」


「なんだ、このガキは」


「あー、モブキャラは不要」


 僕は軽く風魔法でその山賊たちを吹き飛ばす。


「もう一度いうけど、大将はどこ?」


 僕は山賊の腹を蹴り上げて目を覚まさせた。


「ううう」


「ううう、じゃわかんないんだけど」


「なんだ、おめえらは。いきなり襲ってきやがって。子分の敵だ!」


 山賊の頭らしき人物その他十名ほどが

 拠点の奥から飛び出してきた。

 実は探索魔法をかけてあるから、

 山賊の位置は全員把握してる。

 この展開は想定済みだ。


 サクッと捕まえる。

 僕は土魔法を起動して穴を掘り、

 全員をその穴に埋めた。首だけ出して。



「クソっ、卑怯者。魔法なんか使いやがって」


「うん、わかったよ。今から全員土から開放するから」


 僕は土魔法で周囲を壁で囲い、

 競技場のような場所を作った。

 そして、山賊30名ほどを全員開放し、


「じゃあいつでもどうぞ」


 山賊たちは10秒保たなかった。

 僕とランベルトであっという間に気絶させられた。


「なんだよ、えらく弱い集団だな」



 頭とおぼしき人物に水をぶっかけて叩き起こした。

 全員、正座させる。


「ちょっと聞くけど、これからどうしたい? ①僕に殺される ②ギルドに連れていき鉱山奴隷になる ③僕の配下になる」


「フザケルな。正解はねーよ」


「あのさ、キミらどうして山賊やってるの?」


「食えないからに決まってるだろ。見てみろよ。オレたちゃ、村のはみ出しものばかりだ」


「食えたら山賊やめる?」


「そんなうまいことあるかよ」


 僕は、マジックバッグから

 焼いた肉とパンを山賊に提供する。

 山賊たちは目を見開いて肉とパンを貪り食う。


「「「「「こんな旨い飯は初めてだ」」」」」


「キミら、頑張ればすぐに毎日でもこの食事ができるようになるよ?」


「本当か?ふかしてんじゃねーぞ」


「君ね、さっきから言葉遣い酷いけど、立場わかってる?僕はすぐにでも君を燃やし尽くせるんだけど」


 僕は中級の火魔法を

 少し離れた空き地にぶっ放した。

 大音響と閃光ととともに、

 空き地に半径数十mの大きな凹みができた。


「ひぃぃぃ」


 かしら始め山賊はひれ伏した。



「毎日、そんな料理にありつけるってのは本当か、でこぜーますか」


「真面目に僕の言うことを聞いていたらね。他の皆もどう?不満があるなら言ってほしいんだけど。今直ぐ、骨まで燃やし尽くしてあげるから」


 僕は、空に向かって核激魔法を放つ。

 爆発の勢いで突風と地響きが凄い。


「「「「「滅相もございません!!!」」」」」 


「君たち、元は農民でしょ。小麦の栽培位できるでしょ。これから君たちのすることは、小麦の栽培」


「どこに小麦を栽培したらいいでやすか」


 僕は100haほどの森林を風魔法で伐採し、

 土魔法で切り株もろとも土地を掘り起こした。

 腐葉土でいい塩梅の土地である。


 切り取った木材は一箇所に積み上げる。

 乾けば、いい焚き木になるだろう。


 30分ほどで1km四方の森が

 耕作地・放牧地へと変貌を遂げた。

 改めて、山賊たちが僕を怖れとともに見上げる。


「とりあえずこれだけの土地を用意したけど、後は頭を中心に小麦栽培を宜しくね」


 僕は栽培用と当座の食料の小麦を渡す。



 続いて、僕はパン製造小屋と

 肉保管室兼熟成地下室を設ける。


「パン製造装置を置いたから、皆にパン製造を覚えてほしい」


「皆、ですか」


「うん、皆。難しくないから。殆どボタン押すだけ。それから、肉の熟成も魔道具を用意してあるから、そんなに難しくないと思うよ」


「肉はどうすれば」


「狩猟をするか、鶏とか羊とかを飼うか、君たちで決めてよ」


「あの、どうしてそこまでオレたちのためにしてくれるんですか」


「ちょっと試してみたくて。君たちが上手くいくようなら、この周囲にいる山賊たちをまとめ上げるつもり。上手く行かないのなら、殲滅するつもり」


「「「「「ひぇぇぇ!!!」」」」」



 あれだけ脅しておけば大丈夫だと思うけど。

 山賊って、食い詰めた農家の三男とかが

 なったりすることが多い。

 或いは戦争に負けた兵士のなれの果てとか。

 飢饉だと、村そのものが山賊化することもある。


 信用はできないけど、まるっきりの悪人でもない。

 だから、力を見せて押さえつけるけど、

 飴も用意する。


 尤も、上手くいかないなら殲滅するってのは本心。

 害人だからね。

 ホント、この世界って命が軽いや。



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