第19話 二回目のゲームへ
二回目のゲームの会場は三階にあるらしい。階段で移動することになるわけだが、罠があってもおかしくない。さり気なく理不尽ゲームを突きつけることだってあり得る。
「彼奴にそういう視覚系の小細工は通用しねえから。透視と千里眼あるからな」
「あれ。富脇君」
ふと思って、私は確認をする。
「ひょっとして声出してたかな」
「ああ」
加茂さんと富脇君の声が重なった。間違いなく風間さんの耳にも届いている。恥ずかしい。
「その線は否定出来ひん。場所の特定化を急がんとあかんなぁ。解析頼むわ」
風間さんのダルそうな声を聞きながら、スマホで時刻を確認する。デスゲーム開始して三十分経過。今のところ大きい動きはない。
「天霧にリアクションはなし。というかさっきの女の子と話してやがる」
富脇君が羨ましそうに、かつ嫉妬を含む形で言った。死ぬ可能性があるところで女子と絡むとはけしからんと言ったところか。
「大好きな人って言ってたけど、どういう人なのかな」
女子高生が大胆に質問をした。ここで個人情報を漏らしたら、今後のデスゲームでターゲットにされてしまう。流石に下手な答え方をやらないと願いたいが。いや。全て偽の情報なので関係なかった。
「強くて綺麗な人」
天霧君の答えが想像以上に抽象的なものだった。誰にでも当てはまるでしょと突っ込みたいが堪える。天霧君は更に情報を出す。
「あと……自然の中にいるって感じの匂いがする」
天霧君はどこまで演じているのだろうか。うっとりしているところはガチな気がする。
「抱き心地が良いんだぁ。よく不意打ちで抱き着くけど、ちゃんと受け止めてくれるし」
この感じだと、包容力がある人なのだろう。モデルは一体誰なのだろうか。ちらりと見ると、富脇君の口が変なことになっていた。笑う要素はなかったはずだ。
「放っておけ」
加茂さんが冷たく言った。問題ないからだろう。私も放置することにする。
「リアルで充実してる奴じゃん。いいなぁ」
他の参加者も入って来た。キャップを被る黒髪の若い男。まだ早いが、袖なしのものを着ている。両腕に入れ墨がある。
「そういうのなら、彼女を守るために歯向かったってことだよな。ひゅー」
男は天霧君を揶揄っている。いや。茶化すという表現が正確かもしれない。
「彼女。あっはっは」
その発言で限界が来てしまったのか、富脇君が笑い始めた。
「いっだ」
加茂さんのチョップですぐ止まったが。
「面白おかしくするために来てるわけやないからなぁ」
風間さんから注意が来た。
「すみませんでした」
これは流石の富脇君も謝った。
「で。ゲームはどうや」
「今のところ大きい変化はないみたいです。チャットの方は物騒な言葉ばかりが並んでいますね」
切り替えを早くして、状況を簡潔に述べる。画面では移動するところが映し出されており、階段を上っていることが分かる。
「そうなると第二のゲームからが本番やろうからな。以前は割と淡々とした殺しのショーやったらしいが、今回は全く異なっているというのが俺らの予想や。ああ。報告かいな」
天霧君の可愛い誤魔化しを聞きながら、風間さんの声も聞いていく。パンクしそうだが、頑張りたい。
「候補に入っておった空き家か。動く大きい袋に不審人物。ビンゴや。工事の動きがあって不審だという通報があったから使われるやろなと思っとったら。よし。近くまで行って待機しいや。バリケードとかは逆に目立つ。今回は無しや」
動く大きい袋には間違いなく人がいる。いずれかのゲームで出させて殺すつもりなのだろう。参加者を絶望の色に染め、盛り上がらせるという目的もあるだろう。最低だ。根が腐っている。視聴者がそう願っているから、導入したようなものだろう。
「次のゲームはトランプを使うみたいだね」
次のゲームの会場に到着した。丸いテーブルにトランプが置かれている。薄暗い中でやるようなので、賭け事の漫画を連想してしまう。ゲームマスターの音声を聞く。
「五枚から始める。ペアになっている一組を捨てた後に開始とする。山札の上から一枚を手札に加え、右隣りの参加者の手札から貰う。ペア一組がある場合、公開をして、山札の下に戻し、シャッフルをして、一枚引く。それを時間が来るまで何度も繰り返す。そして最後にジョーカーを持った者が敗者となる」
一般的なババ抜きではない。というかババ抜きですらないかもしれない。ジョーカーが残ったら負けだが、このルール上だとそう簡単にゲームから抜けることが出来ない。誰がジョーカーを持っているかが分からない状態でずっとやる。心理的な負荷が大きい。天霧君は透視があるので、だいぶ有利だが、死なせないという枷がある中なので、どう影響するのか。
「風間さんの報告にあった奴はここで使われるってわけじゃなさそうですね。純粋な心理戦になると思います。これはいくら何でも天霧君だろうと分が悪い。いや。ただ勝つだけなら余裕でしょうけど」
考えたことをとりあえず言っておいた。安全なところから見守るしかないこの現状に歯ぎしりをしたい。現場にいたところで何も変わらないという現実もある。今回は本当に私が出来ることなんて無い。そう実感せざるを得ない。
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