第30話 竹千代君の応仁の乱解説1

天文18年(1549年)5月24日 どこかの地下牢


 さて唐突だが、ここは牢屋である。

 何故か、わしらは押し込められた。

 もうね、意味不明。最近わし、必ず何らかの形で捕まってないか?

 池田屋で護衛忍者ごと全員簀巻きにされて今に至る。本年度3度目やね。


……筋肉ごめんな、お前が賢かったよ。


 暇なので、今日の京都の混乱について手下どもに説明しようと思った。


■■■


 細川晴元って武将がいる。


 奴の説明の前に、室町幕府の管領と細川について触れる。

 まず管領とは室町幕府における将軍に次ぐ最高の役職、らしい。


 将軍を補佐し幕政を統轄。 


 暴論であるが、天下統一した足利兄弟の弟。

 その彼か執事である高師直の役割が役職になったようなもんである。

 とても重要な役職だ。

 対応するもの言えば、朝廷の摂関、鎌倉幕府の執権ではなかろうか?

 とは言え、そんな危険極まりない管領なんて厄介な職。

 そんなもんが室町幕府の初期からおかれるわけがなかった。

 

 と言うか、だ。


 いくら妥協と自暴自棄で成り立った室町幕府と言え、調べはした筈だ。

 摂関、院政、鎌倉と、先人たちの失敗を見てから成立してるのなら。


 奥州藤原や平や北条みたいなことは絶対しないもん!


 と、いき込んでたはずだ。

 だが出来ちまった。


 斯波が悪いと言うか、畠山も悪のりしたってか、うーんこの。

 そも尊氏が政治機構を弟にポイした結果ではある。

 そのせいで強い幕府を作れなかった足利が悪いと言うか……うん。

 結果的に出来てしまったのだ。管領。


 人は過去を顧みないというか、歴史のまたかよと言うか。


 最初は大人しくても、幕府を好き勝手出来る職と知ったら、さあ大変。

 誰か一人が踏み出せば、終わりの始まりがコンニチハ。

 案の定と言うか、管領の権利は肥大化して、天下の将軍の権威を棄損した。

 

 さて、その上で細川ハルルンら細川の話をしようと思う。


 先ほど説明した通り、絶大な権力を持った管領は将軍を軽視できるほどになった。

 けどまあ、そんなことすれば色々酷いことになることは明確。

 で、ついに最悪の形で噴出する。

 悪女トミコと前に出した伊勢貞親のせいで起きた、オウニン・ウォーである。


 敵も味方も管領&足利。


 これは足利んが悪い。

 奴らは太平記をバイブルがわりに全国に広げて洗脳したのだ。


『戦争するなら神輿は……菊の御家はまだ終わってないけど面倒だから、足利がいい、太平記にも書いてある』


 としたせいで権威を得たのだが、それが原因で派手にドンパチに巻き込まれた。

 やったね、源氏のお約束内ゲバだよ?

 んで、細川どころか他の管領家も足利も露骨に弱体化した。

 だってのに室町幕府は、まだまだ内ゲバを継続した。


「馬鹿っすね」 


「わしらも笑えないがな」


 三河の一向一揆とか。

 あと秀忠の倅の件とか、どっちにしたっけか?


「それで、細川晴元は何時から三好の絶許の対象になったんですか?」


 それな、まあ面倒な理由と背景がある。

 続けるわ。

 鎌倉時代の北条も、清盛時代の平家もそうだ。

 権力を握り続けるにゃテクがいる。

 名人芸でハメる箇所もあり、ごねるコツやらミソもある。


 管領も、そりゃ同じであった。


 彼らが将軍を挿げ替えられたのも、そこんとこを弁えていたからだ。

 そして政治的に致命傷となる失敗しなかったからだ。

 家臣一同、幕府から蜜をチュウチュウ吸えるよう巧みな舵取りで進んできたんだ。 

 が、応仁の乱で、そのノウハウも巻き添えで吹っ飛んだ。

 今までの常識が通用しない新時代ニュージェネレーション

 その時代の細川当主である政元は、まさかの失敗しなかった。


「え? そうなんです?」


 そう、意外だろ?

 細川政権の最盛期は政元の手で出来た。

 このマっちゃん政治手腕は凄かった。

 そこで応仁の乱の後始末が終わればいいんだが……

 半将軍と称された彼にも欠点があって、まだまだ続いた。


……ちょっとその前に、厠へ行ってくる。


 糞壺でも厠だ。

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