平凡ではない彼女は隣に座る

 これにどう返すべきだろう。

 それを考えていると、


「ちょ、ちょっとソル君!話しちゃったの!?」


 ルナが後ろから割り込んできた。話していない。

 それは駄目だろ。自白してるじゃねえか。

 俺は頭を押さえるしかなかったのだ。


「こ、こんにちは兎沢さん」


 ルナが急に出て来ても上水流さんは冷静だ。

 つまり、これは最初から全てがバレているということになる。

 俺とルナ、両方がDEAである事も、ルナが尾行していたことも。

 

「あ……こんにちは」


 マイペース過ぎる上水流さんに、ルナもペースを乱されているようである。


「じゃなくて!」


 ルナが少し強く言う。

 そうだ、今は上水流さんと話さないといけないのだ。


「場所移そうか」


 え?なんで?

 おかしくない?

 


     ♦



 俺が一言も発しない内に移動が始まり、俺も上水流さんも大人しくルナに着いて行く。

 何故か電車に乗って、俺達の駅へと帰っていく。


「ステラちゃんって可愛いよねぇ」

「えっ!そんなことは……」


 その間、ルナは先程の話には言及せずに、上水流さんに色々話しかけていた。

 

「お友達になろうよ」

「は、はいっ!よろしくお願いします」


 おい、俺が時間かけてやったことを一瞬でやるな。

 


     ♦



 そして来たのは、いつもの場所。

 最寄駅から少し離れた場所にあるガストである。

 

「なんでここに?」


 俺はルナに聞く。


「え?ここがオペレーションルームだよね?」


 なんで急に英語?

 勝手に作戦指令室にされてガストも迷惑だよ。


「座って座って」


 席に案内されたのだが、何故かルナがそう言った。

 いつもは何も言わずに対面に座るのだが、今日は上水流さんもいるからだろうか?

 上水流さんを奥に座らせて、自分が前に座りたいということか?ドリンクバーを取りに行きやすいからかもしれない。

 とりあえず俺は先に席に座った。

 俺の対面に上水流さんとルナが座るのだから関係ないのだ。

 そのまま、上水流さんが対面に座り――ルナが俺の隣に座った。

 アイエエ?ナンデ?ナンデ流れるように俺の隣に座ったの?


「ソル君、それ取って」


 なに?と思ったがタブレットか。

 ドリンクバーでも注文するのだろう。

 俺はルナへとタブレットを渡す。


「ちょっと待ってね」


 タブレットを渡したのはいいが、渡す時に横を見る事になる。

 俺の横にルナがいるのだ。

 つまり近いのだ。

 タブレットを渡した後も、俺はルナがそれを操作しているのを横で見ていた。

 普段からルナの顔が近い事はあるが、これはまた新鮮であり、綺麗な顔に見惚れてしまったからかもしれない。

 

「はい」


 思ったよりも長い操作を終えて、ルナは上水流さんへとタブレットを渡した。

 

「ありがとうございます」


 上水流さんはそれを受け取る。


「ソル君の奢りだから、好きなだけ頼んでね」

「おい」

「冗談、冗談」


 本当だろうな?

 まあ、別にいいけどな。

 さっきマック食べたばっかりだ。山ポとドリンクバーくらいだろう。


「どうぞ」


 上水流さんが懸命に手を伸ばして俺にタブレットを渡してきた。

 大きな胸がテーブルの上に乗っていて目のやり場に困る。


「ありがと」


 俺は目を逸らしながら受け取ると、タブレットを見る。


「は?」


 そして声を出してしまった。

 注文されているのは、山ポにドリンクバー2個。それにマヨコーンピザにミートパスタにオムライスだ。

 多すぎる。

 てか、さっきマック食べたよな?

 

「ん?」


 俺がルナを見ていると、ルナは不思議そうな顔をする。

 まあいいか。

 今日はルナは腹ペコなのかもしれない。

 俺はドリンクバーを頼んで送信を押したのだ。

 そしてタブレットを元の位置に戻す。


「おほん、では面接を始めたいと思います」


 すると、ルナはわざとらしく咳ばらいをするとそう言ったのだ。

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