第27話

修学旅行が終わった最初の日曜日、今日は長谷部さんから「お土産があるの」とのことで呼び出しをくらっている。もちろん修学旅行には俺も一緒に行ったのだが長谷部さんはまだ俺がユナであることに気づいていない。俺は約束の時間に待ち合わせ場所に向かうと珍しく長谷部さんと神崎さんが先についていた。神崎さん曰く長谷部さんは遅刻する事が多く時間通りに来ることは稀、早く来ることはないと聞いていた。確かに今までは基本俺が五分前に着き、二人は十五分ほど遅れてきたいた。しかし今日はすでに二人とも来ている。俺は二人に話しかける前にスマホで時間を確認する。時刻は午前十一時二十五分。やはり遅刻したわけではない。俺はスマホをポケットにしまうと二人のもとへ向かう。


「おはよ〜、二人とも今日は早かったねー」


俺が声をかけながら二人のもとへ近づくと二人とも俺のことに気づいたらしく長谷部さんはこちらに手を振り、神崎さんは目線のみこちらに向ける。


「ユナおはよ〜、一ヶ月くりぶらいかな?最近会えなくて寂しかったよぉ〜」


「あはは、そうだねー」


長谷部さんは俺の両手をがっしり掴む。本当は毎日学校で会っていたし、修学旅行でも一緒に行動していたんだけどな。俺は乾いた笑いを浮かべながら笑いかける。こんなに嬉しそうにしてるのに本当はクラスメイトの男子ですなんて言える気がしないよ。そんな俺たちを見て神崎さんはやや呆れた声で長谷部さんを俺から離す。


「そろそろお昼なんだし先にご飯でも食べに行こ」


「そうだね、近くのレストランでいいよね?」


「あたしは別にそこでいいよ」


「わたしもどこでも大丈夫です」


俺たちは行き先を決めると三人並んでレストランへと向かった。





まだお昼前ということもあり店内はやや空いている。お店に入るなりすぐに席に案内される。それぞれがメニューを選びウェイトレスに注文を済ませる。ウェイトレスは注文を取り合えるとそのままキッチンへと戻っていく。その後ろ姿を眺めていた長谷部さんが完全にいなくなることを確認してから何か良いことでもあったのか前のめりになりながら嬉しそうに話し始めた。


「ねぇねえ聞いてよ!実はね冬雪に彼氏が出来そうなの!」


「へ、へーそうなんだー」


「それでね相手はね同じクラスの子何だけどね」


長谷部さんは嬉しそうに話を続けるも全然頭に入ってこない。なぜなら長谷部さんの隣に座る神崎さんがものすごい目で俺を見ているからだ。俺別に悪くないのに何でこんなに睨まれなきゃいけないんだよ。神崎さんの目は瞳孔が見えるほど大きく見開かれており顔は表情がなくなったかのように無だ。長谷部さんはなぜそれに気づいていないのか、神崎さんがすごい顔になってるというのにそれに気づかない長谷部さんは嬉しそうに話を続ける。


「それでね、その相手がね青木くんって言うんだけどね」


「は?」


俺は若干素の声が混じってしまった。仕方ないだろいきなり自分の名前が出たのだから驚くのも無理はない。神崎さんの表情はさらに怖く豹変してきている。やめてくれ、これ以上はもう喋らないでくれ、俺のそんな願いは長谷部さんには届かず話は続く。


「冬雪と青葉くんなら絶対相性いいと思うんだよね。それに他の男子ならダメだけど青葉くんなら冬雪を渡してもいいって思えちゃうの」


「…」


やめてくれ、もう本当に口を閉じてくれ。これ以上はやばいって、ほら神崎さんの顔だんだん笑顔になってきてるもん無表情を通り越して笑顔になってるもんやばいってこれ以上は本当にやばいって。正直長谷部さんの内容は全然頭に入ってこないし理解できない。なんで俺なら良いとかってなるんだよ、それに神崎さんも好きでもない俺なんかと付き合いたいとかって思ってないだろ。そんなことを考えていた俺は長谷部さんの次の一言で完全に脳がフリーズしてしまった。


「ここだけの話、冬雪ってその青葉くんのことが好きなんだよ」





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