第2話 グレイ シーカー①

グレイとして転生した僕の人生は……そんなに良いものじゃなかった。

ラノベとかだと……転生した主人公が夢のような幸せ人生を歩むけど、事実は小説より奇なりとはよく言ったもんだ。

僕の肩書きはシーカー一族っていう、そこそこ有名な貴族の長男。

シーカー一族は代々美術関係の才能に溢れた貴族だ。

様々な作品を世に出し、その才能に世間の注目が多く集まっているらしく、去年亡くなった祖父が最期に描いた絵画は数億もの金が動くほどの名画だとかなんとか……。

まあそんな一族だからこそ……なのかはわからないが、英才教育も美術寄りだった。

眠っている才能を目覚めさせようと毎日毎日肖像画だの写生だのを描かされたり……図画工作なんてレベルをはるかに越えた胸像を作らされたりと、前世の方がマシだったのではと思えてしまうほど僕の思考は朦朧としていた。


--------------------------------------


 そんなこんなでグレイとして生まれて10年の歳月が流れた……。


「ダメだダメだ!! どれもこれも作品と呼ぶのもおこがましい!!」


 僕なりに一生懸命頑張っているつもりではあったけど……僕が描いた絵画や胸像等を見た瞬間、父は癇癪を起して僕の努力を罵倒して破壊した。


「貴様にはシーカー一族としての誇りがないのか!? それでも我が子か!!」


「申し訳ありません……」


 このやり取りを一体何度繰り返しただろう……最初こそ父の怒りにおびえて震えあがっていたけど……聞き飽きた今となってはただただ退屈だとしか思えない父の説教……。


「それに比べてリギュー……お前の絵は素晴らしいぞ!」


「いいえ……まだまだおじい様や父上のようにはいきませんよ!」


「まあ……この子ったら……」


 リギューというのは僕の2つ下の弟だ。

彼は平凡な僕と違って絵画の才能があったようで……8歳という幼さですでにあまたの芸術家から一目置かれてる。

そんな弟を両親は借りてきた子猫のように可愛がっている。

僕には怒った顔か軽蔑の眼差ししか向けないくせに、リギューには温かな微笑みばかり向ける両親……普通なら親の愛に飢えて癇癪を起したり弟に嫉妬したりするかもしれないけれど……僕の場合はこれといって何ら思うことはなかった。

これも前世の影響かな?

まあ、僕を見限ったのならそれでもいい……そう思っていたけど、僕にも我慢できないことがあった。


--------------------------------------


「グレイ!! こんな下品な落書きを描いてはいけませんと何度言ったらわかるの!?」


 自室にノックもせずに入ってきた母が机の上に置いてある勉強用の用紙を取り上げた。

その用紙には、僕が前世で好きだった魔法少女の絵が描かれている。

休憩がてらに自分の記憶を頼りに描いてみたんだけれど……我ながら良い出来だと思う。

でも父と母は僕の絵をただの下品な落書きとしか見てくれない。

変身後の姿だけど、肌の露出もなければ妖艶なポージングもしていない。

至って健全なこの絵の何が下品なのか……僕には理解できなかった。

「ごっごめんなさい……」


「いくら才能がない落ちこぼれとはいえ、あなたは由緒正しきシーカー一族なんですよ!?

その長男がこんな俗にまみれた汚い落書きに夢中になるんて……恥を知りなさい!!」


「……」


 そういうと、母は用紙をびりびりに破ってゴミ箱に捨ててしまった。


「こんなものを描く暇があれば勉学に勤しみなさい!!」


 母はそう吐き捨てると、そそくさと部屋を去った。

僕はゴミ箱の中の惨状を目にした瞬間、沸々と怒りが込み上げてきた。

僕のことはいくら悪く言おうが構わない……でも僕が心から愛する二次元の世界をバカにするのは我慢ならない。

できるものなら殴ってやりたいが……年齢的にも現実的にも達成感より後悔の方が強いから、それは断念するしかなかった。


--------------------------------------


 グレイとして生きて……いつの間にか17年の時が流れた。

我ながらこんな地獄でよくくじけなかったなと思う。

それなりに身長が伸びて、ルックスも前世と比べるとイケメンと呼んでも差し支えない……か?

だけど……家の中での僕の立場は幼少期から何も変わっていない……いや、むしろ悪くなる一方だ。

両親は僕を完全に見限り、会話どころか顔を合わせようともしない。

家に仕えている使用人たちが僕を育ててくれたと言っても過言じゃないな。

落ちぶれている僕とは比例して……ギリューはその才能をどんどん昇華させていき、15歳ですでにプロと呼ばれる領域にまで達していた。

両親にシーカー家の希望とまで言われるようになった我が弟……だけど、彼には周囲に隠していることがあるのを僕は知っている。


--------------------------------------


 蒸し暑い夏の夜……その日も1日中勉学に勤しんだ僕は、自室で寝る支度をしていたんだ。


「今夜もやたら暑いな……」


 でもこの暑さで喉がカラカラになり、寝るどころじゃなくなったんだ。

使用人が水差しを置いてくれていたんだけど、部屋で缶詰になっていた僕が全部飲み干してしまった。

仕方なく、僕は厨房で水を補充してもらおうと水差しを持って厨房へと向かった。

使用人たちはもう休んでいるし、自室から厨房まではたいして離れていないから自分で行くことにした。


「お……え……て……」


 道中差し掛かったのはギリューの部屋の前。

そこから聞こえてくるのは女性の声だ。

最初はギリューが使用人のメイドさんに何か無理難題でもふっかけているのかな?と思っていたけど……それにしては声が複数聞こえてくる。

使用人とはいえ、貴族の子の自室に……まして当の本人がいるときに使用人が何人もそこに留まると言うのは少し考えづらい。

僕は少し気になり、マナー違反だとは思うものの……ドアノブの下にある鍵穴から中の様子を確認することにした。

この屋敷の鍵穴はやや大きく、片目しか見えないとはいえ視界はそんなに悪くないので結構はっきり中の様子が伺える。

言っておくが、これは使用人たちが漏らしていたのを聞いただけで……ここから部屋の中を覗くのもこれが初めてだ。

無論、良からぬことは考えていない。

僕は二次元を愛しているからね。


「リギュー様……いかかでしょうか?」


「あぁ……いいぞぉぉぉ……もっと腰をくねらせろ! おいお前! もっとねっとりと舐められないのか!」


「はっはい!」


 中の様子を一言で言えば……酒池肉林。

リギューと複数の女性が生まれたままの姿で絡み合っている。

そのあまりの多さにお預けを喰らっている女性達もいるくらいだ。

みんな待てを命じられた犬みたいな目でリギューに群がる女性達をうらやんでいる。

まるでアダルトタイプのハーレム主人公みたいな奴だ。

実の所、こういうシーンを見たのはこれが初めてって訳じゃない。

リギューはイケメンだし貴族の肩書きと絵の才能まで持ち合わせている完璧な男だ。

女性が寄り付くのは別段おかしなことではないし、こういう状況が作れるのもパーフェクトなイケメン故なのかもしれない。

でも……僕が目を引いたのはリギューではなく彼を取り巻く女性たちの方だ。

まあ男なら裸の女性に目を奪われるのも自然だとは思うけれど……僕が気になるのは彼女達の体じゃなくて顔の方だ。

実はリギューにまとわりついている女性達の何人かは顔見知り。

僕達の身の回りのお世話をよくしてくれるメイドさん……何度か我が家に抜擢されたモデル……僕とリギューの勉強を見ていた家庭教師等々……見知った女性達がリギューにメスの顔して迫っているのは少々戸惑いを覚えてしまう。


「何をしているんだ? さっさと股を開けよ」


「あっあの……やはりできません。 私には夫と子供がいるんです」


 肉欲に溺れる女性陣の中に、既婚者女性が混ざっていたらしく……罪悪感でリギューに体を開くのをためらっている。

すでに一糸まとわぬ姿であるけれど……。


「だからなんだ?」


「かっ家族を裏切るような真似は……できません」


 女性がそう拒んだ瞬間、快楽に溺れてだらしなくタレていたリギューの顔が一気に歪んだ。

リギューは普段猫を被っているが、異常なほど独占欲が強いんだ。

ほしいものはなんでもほしがる……クレクレって言うんだっけ?

僕も子供の頃は、おもちゃとかお菓子とかよくリギューに取り上げられたな。

まあそれだけなら笑って許せる範囲だけれど……リギューのクレクレは年齢を重ねるにつれて歪み始めていった。

物心がついたばかりの頃は僕や使用人たちといった身内に対してクレクレしてたけれど……14歳を過ぎた辺りから、標的が身内以外の人間になり始めた。

世界に1つしかない美術品や宝石といった人が持っていて自分が持っていないものを莫大な財力で手に入れていった。

まあ大抵の人間は金であっさり手放すけれど……中には何らかの事情で譲らない人もいる。

そういう人達に対しては金で雇ったゴロツキ連中達に嫌がらせをさせて物と引き換えに手を引かせるという凶行に出ると聞いたことがある。

大切なものを手放さざる負えなくなって心を病んでしまった人もいるとか。


そしてとうとう……リギューのクレクレはついに生き物にまで至ってしまった。

思春期に入るとリギューは金で美しい女性を手に入れる習慣がついた。

手に入れるとは言っても、お付き合いする訳ではなく……いわゆるワンナイトってやつだ。

それが独り身なら問題ないけれど、中にはパートナーや子供がいる女性もいる。

金に釣られて関係を持つ人もいるけれど……今の女性のように罪悪感に目覚める人もいる。


「そもそもお前が俺の大切なツボを壊したからこうなったんだろうが!

あれは5000万以上の価値がある貴重なものなんだぜ?

本当なら弁償してもらいたいところを、お前の体だけで許してやろうっていうのに……その態度はなんだ?」


「そっそれは……」


「俺を拒むというのなら、お前の旦那に請求するしかないな」


「やっやめてください! 主人にそんなお金は払えません!」


「だったらさっさと奉仕しろ! それとも旦那とガキを路頭に迷わせるか!? あぁ!?」


「わっわかりました……」


 女性は涙をぐっとこらえてリギューを受け入れた。

リギューは金になびかない女性に対しては今のような脅迫で無理やり行為に及ばせるんだ。

三次元に興味がないとはいえ、さすがに僕も思わず背けてしまった。

助けてあげたい気持ちはなくもないけれど……今、僕が部屋に突撃した所で何も変わらない。

金という絶対的な力で縛られている以上、僕が彼女達を開放する術はないんだ。

両親にチクったらどうだって?……無駄だよ。

チクる以前に両親はリギューのクレクレを容認しているんだ。

リギューの才能に絶大な信頼を寄せている2人にとっては、リギューの機嫌を損ねることの方が怖いんだ。

だから僕やほかの誰かがこのことを告発しようとしても、すぐに両親が握りつぶしてしまう。

子煩悩もここまで来ると感心する。


「……」


 つまり……僕が今できることは黙ってこの場を立ち去ることだけだ。

情けないと思うし薄情だとも思う……でもどうにもならないことはどうにもならないんだ。


--------------------------------------


 それからさらに時間が過ぎ……僕は20歳になった。

両親が望むような結果を出せなかった僕は完全にシーカー家で孤立していた。


「この無能が! 貴様はシーカー家の恥さらしだ!!」


「ほんと恥ずかしい……こんな役に立たない愚息……生んだのが間違いでした!」


「全く……神も酷なことをなさる。 この才能あふれるシーカー一族の血をこんな出来損ないにお与えになるとは……」


 両親とたまに話す機会があってもこれだ。

人格どころか人生そのものを否定されては……僕ももうこの2人のことを家族だとは思えない。


--------------------------------------


「おい無能野郎! その辛気臭いツラを引っ込めろよ。 せっかくの紅茶がまずくなる」


「ごめん……」


 弟のリギューからは虫けらのように見下され、理不尽な因縁をふっかけられる始末。


--------------------------------------


 だから僕は、1人で生きていくために住み込みで働ける場所を1人でこっそりと探していた。

異世界とはいえ、大した学歴も特別なスキルも何もない僕を雇ってくれる場所はなかなか見つからなかった。

シーカー一族の名を使えばいくらか目を向けてくれる人もいるかもしれないけれど、あんな連中の力を頼るのは正直嫌だ。


--------------------------------------


 そんなこんなで僕がたどり着いた職は……ラーメン店だった。

異世界には少々似つかわしくないとは思うかもしれないけれど、僕はそこでバイトとして働くことに決めた。


「ここで働かせてもらえないでしょうか? 大したスキルはないですけれど、一生懸命働きますから!」


「ほう……ひょろい兄ちゃんだと思っていたが、なかなか良い目をしてやがるじゃねぇか……よっしゃ!

いいだろう……だが、俺んところは根性がねぇとやっていけねぇ!

新人だからって容赦はしねぇぞ? それでもいいか?」


「はい! よろしくお願いします!!」


 まあこんな感じで、僕はラーメン店に住み込みのバイトとして働くことになった。

厳しそうな店長だけれど、両親とは違って人情のある目をしていると僕は思う。

店長の人柄もそうだけれど……何より僕が目を引いたのは、店長が”日本人”であること。

強面だけど、店長の顔つきや風貌が完全に日本人だったんだ。

多分……この世界に転移してきたんだと思うけど、元日本人である僕にとってはある意味同胞だ……多分。


--------------------------------------


 仕事先が決まり、いよいよ両親に家を出ることを話そうと家に戻った。


「おい! いい加減にしろよ! ご主人様に向かって!」


 家に帰った途端、庭からリギューの怒鳴り声が聞こえてきた。

気になってこっそり物影に隠れて庭を見てみると……リギューが1匹の犬に威嚇されていた。

その犬は先月くらいにリギューが飼いだした犬だ。

でもその犬はペットショップで購入した犬でもどこかで拾ってきた訳でもない。

そう……その犬は元々別の家族に飼われていた犬だ。

なんでも犬の飼い主がシーカー家が保管している数百万単位の絵画を盗んだらしく、騎士団に突き出さない代わりにリギューが犬を要求したんだ。

でも僕はこれがリギューが仕組んだことだと確信している。

犬の飼い主は17歳くらいの普通の女の子だ。

その両親も普通の農家だ……そんな人たちが警備が厳重な貴族の屋敷から絵を盗めるとは思えない。

事件が発覚したのだって……リギューが怪しい奴らが絵を盗んだと騒いだことがきっかけだ。

しかも発覚からわずか1時間でリギューは犯人を特定したんだ……素人が根拠もなしにそんなことができるものなのか? 名探偵コナンじゃあるまいし……。

万が一それが偶然だとしても……和解の条件が犬というのも変だ。

結構珍しい犬種らしいけれど……動物好きって訳でもないリギューが犬だけで許しを与えるなんて奇妙過ぎる。


--------------------------------------


『くだらん言い訳をするな! こうして盗まれた絵がお前たちの家にあったんだ! お前らが盗んだに決まってる!!』


『ですから……盗みなど働いていませんし、そんな絵は知りません!』


応接室に連行された3人は絵盗んでいないと訴え続けていたけれど……一般人の言葉と貴族の言葉では重みや信頼性が全く違うんだ。


『黙れ! 何を言おうとお前らが選べる選択肢は2つだ! 俺に犬を渡して和解するか……一家そろって刑務所にぶちこまれるか……だが、前科が付けば……確実に村八分にされるだろうな……娘だって将来ロクな目に合わないだろうぜ……』


 この時も偶然物影から様子を見ていたが……はっきり言って反吐が出そうだった。

和解なんて言ってるけれど……僕にはリギューが脅迫しているようにしか見えない。

リギューが何か仕組んだことは間違いない!……でもそれを証明する証拠は何1つない。


『わかりました……犬を渡します』


 女の子の両親は娘の将来を気遣って犬を渡して和解することを選んだ。


『いやっ! 絶対に渡さない!!』


 女の子は犬を渡すまいと必死に抵抗したが……どこからともなく現れた黒服によって犬と引き離された。


『いやぁぁぁ! お願い返してぇぇぇ!!』


 泣き叫ぶ娘を涙ながらに両親が引きずる姿は今も目に焼き付いている。

両親もすんなり和解を受け入れたところを見ると……リギューの自作自演だということに薄々気づいているんだろうな。

身勝手なリギューのクレクレで3人の人間が深い心の傷を負った……あいつらと同じ血が流れていると思うとぞっとする!

……なんて正義面する僕も見ていることしかできなかったから、あまり人のことは言えないかもしれない。


--------------------------------------


ワンッ!!


 リギューを威嚇し、さらには大声で吠える犬。

ずっとあの家族に可愛がられていたんだ……家族から引き離したリギューになつくわけがない。

そもそも世話だって使用人に押し付けているくせに……何がご主人様だ。


「ふざけるなよこの駄犬! お前ら犬は人間様にただ従っていればいいんだよ!」


ワグッ!


「いてっ!!」


 触ろうとするリギューの手を犬が思い切り噛みついた。

正直ざまあみろと思った……が。


「こっこの犬ぅぅぅ!!」


 激高したリギューが応接室に飾ってあった猟銃を手にし、銃口を犬に向ける。


「やめろっ!!」


 考えるより先に僕は体が動いていた。

リギュー目掛けて一直線に走り出すも……。


バーン!!


「!!!」


 僕の手がリギューに届く直前、猟銃から弾丸が飛び出し……犬の体を貫いた。

犬はその場で倒れ、体から流れ出る血が円形の血だまりを作っていく。

倒れた犬に駆け寄るも……犬はすでに息絶えていた。


「ちっ! 駄犬が庭を汚しやがって……おい無能! その汚い犬を片付けておけ!」


「……」


 僕はこの時……言葉に言い表せない何かが腹の底から沸々と湧いてくるのと感じた。

前世で愛する二次元の世界をぶち壊した両親に対して抱いた気持ちに近い。

別に動物愛護って訳でもないけれど……この仕打ちはあんまりだと思う。

罪もない女の子から家族を奪い……反抗するからと言う理由だけで命まで奪った……しかもリギュー本人には罪の意識は微塵もない。

ただの偽善かもしれないけれど……僕はこの気持ちに逆らうことができなかった。


「!!!」


 ボカッ!!


「あぐっ!!」


 僕は生まれて初めて……人を殴った。

それも血のつながった弟をだ……。

それがたまりにたまった怒りの爆発なのか……犬の敵討ちのつもりだったのか……よくわからない。

でもこれが……僕とシーカー家の決定的な亀裂となったのは事実だ。

それからすぐにリギューのチクりによって激怒した両親に僕は呼び出しを喰らった。

2人からこれまで以上の罵声を浴びせられたが、これからもう関係なくなるんだから僕は何も思わない。


「リギューに誠心誠意謝罪しろ!!」


「お断りします」


 父から謝罪を要求されたが、僕は頑なに断った。

あんな奴に頭を下げるくらいなら、もう1度死んだ方がマシだ!


「もういい! お前をシーカー一族から追放する!! 今すぐここから出ていけ!!貴様はもう……我が子ではない!!」


 使用人に僕を押し付けて育児放棄しているくせによく言う。


「無能な上に、こんな暴力まで働くなんて……恐ろしい子!!」


 あんなバカ息子を放置している母親の方が恐ろしいよ。


「グレイ……貴様は我が一族の恥だ! 早々にこの家を立ち去れ! そして二度とその顔を私に見せるな!」


「ここはあなたのような救いようのない無能がいて良い所ではないのです」


「わかりました……」


 こうして僕はシーカー家を去ることになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る