支障あり

双葉紫明

第1話

雪が降ってしまった。

11月、まだタイヤを替える時期ではない。

一歩一歩、重たい。

体が鉛みたいだ。

ゆうべ、飲みすぎた。

蟹をたくさん送っていただいたもんだから、友達と蟹パーティー。

体内には、蟹とビールしか入ってない。

具合が悪い。

目線も上がらない。

一寸先だけ見て、不具者の様にのろのろと。

雪はずんずん降り積もる。

それでもたどり着き、崖に貼り付いてきのこを探し出すと、体が動いてくる。

なんとかかき集め、明日の売り種2.5kg。

良くやった。

いや、やらなきゃいけないんだ。

それから、きみと約束してた娘の自転車を車に積み込んだ。

積もったら、ダメだから。

夕方、常連さんに今年最後の10数種の天然きのこが入った鍋を出す。

友達も、ビールを飲みに来る。

彼らを送り出して、きのこ豚汁を炊く。

雪は降り続く。

自転車を積んだ車中で、窮屈に眠る。

4時。

店のスロープは積もってるけど、道路はどうか?

案外大丈夫だ。

豚汁がこぼれない様に、ゆっくり、ゆっくり。

7時前にはきみたちの家、自転車を下ろした。

風呂、入りたいな。

近くで朝風呂入れるとこを探す。

街は便利だ。

日曜日の朝風呂。

こんなにたくさん来るんだ。

すごいなあ。

休む間はない。

知り合いの店へ。

色々忘れものを現地調達。

ダメだった繁忙期、その最後。

客足が途絶えるこの時期、こういう出張は有り難い。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る