スキル世界一位を手に入れた俺は異世界で無双する

保戸火喰

第1話 転生

「ついにこの世界とお別れか」


今日はオンラインゲーム「ワールドオリジンファンタジー」のサービス終了日。俺は難波一(なんばはじめ)、このゲームをやり込んでいた者だ。


「ワールド1(ワン)の称号は大変だったけど楽しかったな」


様々なやりこみ要素があるこのゲーム、中でもワールド1の称号の取得は最難関と言われている。全クラスのレベルを最大まで上げると現れるボスを倒すと取得できる。簡単そうに思えるが、全クラスレベル最大がとにかく大変。10年、1日20時間以上レベルを上げ続けてようやく終わるくらいの難易度。これを毎日こなし、称号を得た。ハマりすぎてゲームのために不労所得を得ようとリアル金稼ぎを頑張った。今ではゲーム三昧の毎日を送っている。称号取得のボス戦はちょっとしたお祭りになっていたな。結局その称号を取得したのは俺だけだった。


「最後のプレイといこう」


仲のいいゲーム仲間とは昨日お別れを済ませ、今日は一人でこの世界を歩き回っている。何人かから声をかけられた。この世界ではちょっとした有名人だ。こうしてさまよっているうちに世界の終わりが近づいてきた。運営から終了を告げるメッセージが表示される。ありがとうと感謝の言葉を口にし、ゲームを閉じた。PC電源を切りベッドに潜り込む。やりきった達成感と、明日からどうしようといううっすらとした絶望感を抱きつつ眠りにつく。


「そろそろ朝か、なんだか寝心地が悪い」


チクチクとした感触、背中に痛みを感じて目が覚める。ベッドから転がり落ちたかな、妙に明るい、まるで外にいるようだ。身体を起こし寝ぼけまなこで辺りを見渡すと、今いる場所は道だったことがわかった。砂利で作られた道、そりゃ痛いよな。いやいや、そんなことよりもここはどこだ。俺はベッドで寝ていたはずだが。道を走る馬車が見えた。今の時代は車社会のはず。寝ている間にドッキリでも仕掛けられたか。馬車が通り過ぎていく。馬を操る人の服装、馬車のデザインには見覚えがあった。そうだワールドオリジンファンタジーの馬車に服だ、ん? よく見ると俺の服もいつの間にかオリファン(以下略)の世界の服になっている。もしかしてオリファンの世界に飛ばされてしまったのだろうか。となると魔獣が襲ってくるかもしれない。早いところ街に避難したほうがいい。先程の人に声をかけ、近くの街を聞くと、今向かってるから乗っていけと、馬車に乗せてもらえた。人はいないが荷が大量に積んである。荷物を運ぶ馬車のようだ。


「見ない顔だな。村から出てきて冒険者に?」

「はい、そんなところです」


適当に話を合わせる。オリファンの始めを思い出すな。村から出てきた少年が冒険者となり、世界を渡り歩き冒険するゲームだった。ゲームにそっくりな始まり方。


「ひどい顔だな少年。街に入るのだからきれいにしておけ」


手鏡を貸してくれた。道端で寝ていたからホコリまみれだ。ところで少年って誰? 俺はいい歳のおっさんだけど。手鏡を使い俺の顔を見るとお肌がつやつや、あきらかに若返っている。ただ送られただけじゃなく若返りも付与されたのかな。ほぼ転生のようなものか。


「街についたよ」

「ありがとうございました」


礼を言って馬車から降りる。街の作り、名前は見覚え聞き覚えがないが建物の造形はオリファンのそれだ。似た世界かゲームの時代と違うのかも。ゲームそのままならとりあえず冒険者になろう。お金を稼いで生活できるようになる。その足で冒険者ギルドへ向かう。


「ここは冒険者ギルド受付です。冒険者志望の方ですか?」

「はい」


受付の女性の服装がオリファンだな。奥に通され説明を受ける。


「クラスは複数ある。最初は色々試して最終的には1つに決めて極めた方がいい」


アドバイスをもらう。生涯もらえる経験値を分散させるよりも一つに集中するほうが強いようだ。クラスの種類を聞く。全部オリファンにあるクラスだ。オリファンの世界に飛ばされたと見て間違いなさそうだ。しかし一つだけか。ゲームでも一つのクラスを使い込むのが基本だった。様々なクラスを使っていたのは俺くらい。そうだな、最強クラスと名高い魔法使いにしよう。攻撃力が高く様々な敵に対応できて遠距離戦が可能。弱点は近距離戦に弱くHPが少ないところ。基本的にPTを組めば問題ない。


「魔法使いを希望します」

「わかった」


担当者が袋から紫色の小さな水晶を取り出す。剣士なら白とクラスによって水晶の色が違う。水晶を飲み込み念じると、頭の中にゲームのステータス画面のようなものが表示された。スキルと表示された欄に、使える魔法が表示される。今はスキルを持っていないから何もなし。魔法や剣術等はまとめてスキルとして扱われる。ダメージを受けるとHPが減り、スキルを使うとMP(マナポイント)が減る。ステータス画面に魔法使いと表示されている、魔法使いになったようだ。おや、これは。


「稀にレアスキルを持っている場合がある。レアスキルに合わせてクラスを選ぶことをお勧めする」


どうやら俺はレアスキルを持っているようだった。オリファンにはレアスキルなんてなかったな。そしてそのスキルは。


『世界一位』


ナニコレ? 説明には世界一位の性能のスキルを使うことができると書いてある。手持ちの魔法が強くなるってことかな? 後で試してみよう。

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