第1話 自己紹介

 変人。不思議ちゃん。石。

 小中高の同級生たちが、私につけたあだ名ならいろいろとある。まあまあつぶらな瞳と長い黒髪、それから美術の授業で褒められる程度の水彩の腕のおかげで、一過性の病のようにモテた時期もなくはない。恋人だっていたこともある。ただ、これまでに私のことを理解した人はいないし、私が理解したと思える相手もいない。


 私には密かな特技があった。特殊能力、と言ってもいいと思う。中学二年の夏の朝に、突如として「私」という感覚がバラバラになり、私のすべてが宇宙になり、宇宙のすべてが私になった時期があった。


 ひどくつらく、苦しく、体を引き裂かれるような痛みを伴うが――、その体験を他人に伝えることは容易ではない。ひとつだけ言えるのは、その副産物として、他人のを視認する眼が開いた。私にはそんなふうにしか説明できない。

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