第7話二日目夜

 佐々木提督は鹿島を一番マシな鎮守府の部屋に案内した。

 提督の部屋だったそこは執務室だった。

 執務机が置かれ書棚が横に置かれた8畳ほどの部屋。

 そこだけは奇跡的に黒カビとシロアリがいない部屋だった。

 とはいえ、隙間風がひどいのはどうしようもなかったが。

 ごみだらけだった部屋は50年前の栄光の歴史を留めていた。

 佐々木は家から寝袋二つを持参した。

 勿論、鹿島と自分の分だ。

 鎮守府本館以外の建物はいつ崩落するかわからないので論外だった。

 鹿島はかなり居心地悪そうだった。

 無理もない。

 若い女性が若い男と同室で過ごすことになればそうだろう。

 佐々木も正直女性と同室は若干緊張する。

 だが、明日からはこの鎮守府で生活するためにやらなければならないことは多い。

「鹿島さん、すまないが明日この鎮守府で生活するための改修工事費用を頼んでほしい。それとできれば片付く用の応援の人員を回してほしいと言ってきてくれ」

「わかりました。でも人員はおそらく無理だと思います。予算は多めに出すが人員は無理だと言ってました」

(これのどこが予算が多めなのか!)

 佐々木は少し頭に来たが冷静になった。

「予算が多めになるなら業者を使えるからそれもいいかもしれない。ところで鹿島さん、昔の書類の山を明日から整理を頼みたいのだが」

「ああ、それならイメージスキャナーで書類を光学的にコピーしてデータ化します」

「ああ、なるほど、あとは書類を念のため段ボール箱に入れて保管すればいいな」

「そうですね。無理にその場で判断すると間違えて捨てる可能性が高いので」

「そうだな。あとは数日でもいいからそのための人手を借りられたらな」

「わかります。それも交渉だけはしておきます」

「よろしく頼む。それにしても艦隊司令部は私たちを警備員や便利屋扱いなんだろうか?それに人員も最近は部隊整理ばかりだから余裕がないのはわかるがこの状況でも融通ができないようでは軽空母も人員的に無理かもな」

「そうかもしれませんね。それで提督さん、今日の調査はどうでした?」

「相変わらずめぼしい成果はないよ。それにしてもこの鎮守府はどうしてここまで問題だらけなんだ?正直、ここを司令部として再利用しようとした人物は何も考えてないな。そもそもなんで管理されてないのにゴミ山が鎮守府にあるんだ?多少の不良品や廃棄物が置かれているのがあるのは許せるが何十年もゴミ捨て場になっているのを放置はわからん」

「たしかにそうですね。提督さん、明日も頑張りましょう。私は午前に交渉で、午後は書類整理します。提督さんはどうしますか?」

「私は予算を使って業者の廃屋解体に立ち会うよ。何せ本館以外は倉庫も含めて全て解体だからな。正直、港湾も滅茶苦茶だからどうしたものか。予算の増額ももう一回念押し頼むよ」

「わかりました。おやすみなさい、提督さん」

 鹿島がそう言うと眠りにつき佐々木は鹿島が寝たのを確認すると自身も横になった。

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