27.黒焔斬刀の真相

 「そんな事出来る訳ない!」

 瞳は和人の言葉に応じる事が出来なかった。それもその筈。瞳にとって黒龍は命の恩人だからだ。しかし、和人は真剣な表情をしている。

 「何故僕が瞳お姉ちゃんと会話出来るか分かる?」

 「・・・それは、分からない。」

 「達郎さん。あの人が僕を瞳お姉ちゃんに逢わせてくれたんだ。」

 「えっ、あの人が?」

 「うん。瞳お姉ちゃんに僕の過去を教える為に。そしてその時に黒龍の過去と黒焔斬刀の真相を知ってしまったんだ。ちょっと額に手を当てるね。」

 和人は戸惑う瞳の額に手を当てる。その瞬間瞳は黒龍の過去を知った。

 「う、嘘・・・。餅を喉に詰まらせたって言ってたじゃない・・・。」

 「黒龍なりに気を遣ったんだろうね・・・。本当の過去を知った時は悲しくなったよ。そして黒焔斬刀、あれの力も呪いによるものだったんだ。」

 和人はなにもない空間に手を翳し、歴代の黒い武器を見せてきた。

 「この武器達は黒龍が来る以前にいた人達が持っていたもの。生前強い憎悪や殺意を持ってこの世界へと来て、極限状態に陥ると授かる物なんだ。そしてある程度使いこなせるようになると、人間とは思えない強大な力を取得出来る代わりに自身の精神を武具が吸う。黒龍の刀もその一つ。」

 そこには黒く歪んだ斧、鎌、西洋風の剣、弓、槍、クロスボウが映しだされており、その中に黒龍の刀も混ざっていた。

 「ちょっと待って。呪いっていうのなら、今黒龍はどうしているの・・・?」

 「・・・自我を殆ど失った人間兵器になっているよ。さっき黒龍は自身の過去を明かして、自身を化け物だと達郎さんに言った。その言葉が呪いを発動させる引き金になってしまったんだ。そしてその呪いを止めるには持ち主・・・黒龍を消滅させるしかない。」

 「そ、そんな・・・。それしか道はないの・・・?」

 和人は悔しそうの顔を浮かべながら頷いた。それを見た瞳は頭を抱え、しゃがみ込む。

 「黒龍は、黒龍は・・・私の恩人。私の援護は勿論、こんな私の事を信頼していたというのに、恩を仇で返さないといけないの・・・。そんな事ってないじゃない。」

 瞳は絶望に追い込まれる。しかし起きてそこへと向かわないとこの世界は終わらない。

 「本当は僕も二人の援護をしたかった。だけどあの時消えてしまった。でも唯一瞳お姉ちゃんの力になれる方法があるんだ。」

 「えっどういう事・・・?」

 絶望していた瞳はその言葉で顔を上げる。

 「それは僕の魂を瞳お姉ちゃんの体に入れる事。そうする事で僕自身の持つ能力を引き出す事が出来るんだ。」

 その方法は達郎もとい人間だからこそ出来る芸当。彼の能力はその人の過去未来を知る事だけでなく、他人にその人の能力を入れる事が出来る。しかしその方法はある欠点があった。それは一度他の人の体に入ると獄天隠滅書で唱えない限り二度と元に戻す事が出来ないという事。その事を和人は瞳に言わなかった。

 「僕は瞳お姉ちゃんの意思に尊重する。こんなきつい事を考えさせてごめん。」

 和人はこれから黒龍を殺す瞳の事を考えて、申し訳なさを感じつつ話す。すると決心した顔立ちで瞳が和人の顔を見た。

 「分かった。此処まで来たからには立ち止まらない。絶対に和人と黒龍を救ってみせるから!!」

 それをみた和人は悲しそうな顔をしつつも微笑み、最後の言葉を掛けた。

 「約束だよ!必ず幽界への扉を開けて!!」

 「ええ!!」

 和人と瞳は拳を合わせる。そしてその空間は消滅した。

・・・

 「はっ・・・!」

瞳は目を覚ます。すぐ隣には達郎がいた。

 「これで・・・良かったんだよね。」

 力が増幅している感覚を掴み、涙を流す瞳。それを見た達郎は優しく微笑んでいた。

 「瞳さん。本当にごめんなさい。こんな大事に巻き込んでしまって。」

 「いいえ。和人に逢わせてくれてありがとう、達郎さん。しかし貴方の犯した罪は消えません。それに加えて貴方を此処で倒さないと扉を開ける事が出来ないです。最後に言いたい事はありますか?」

 「いいえ。私を地獄へ導いてくれる事を心から祈っています。」

 「分かりました。」

 達郎の覚悟を決めた言葉を聞いた瞳は、静かに達郎もとい阿修羅の手先の一人、人間の首を撥ね、落ちた正三角形の石を手に取る。

 「私がこの世界を終わらせる。待っててね、黒龍!!」

 瞳は弓矢を持ち、今まで以上のスピードで走り抜け黒龍の後を追っていった。


 

 

 

 

 

 

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